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「あの街」

何もいいことがなかった
37年前
1年だけ働いた
この街
出張で近くに来た ついで
足をのばした
36年半ぶりに
歩いた

かつての職場は
移転して 駐車場に
1年暮らした独身寮
マンションに

イヤで イヤで
たまらなかった仕事
ソロバン勘定
象徴的な意味でなく
本当に
ソロバンの玉を弾く
それが仕事
3度計算し
3度数字が違う
その繰り返し―

めげる めげる めげる
仕事はもちろん
他に
何もいいことがなかった
何かいいこと
それを自分で作り出す
何かいいこと
ありそうな方へ

行ってみようともせず
逃げたい 逃げたい
その一心

それを募らせ
結果
ぴったり1年働いて
会社を辞めた
逃げだした

ソロバンは
3度に2度は
合うようになったかしらん

一念発起
その後に転職
志望した業界へ
願いをかなえた…
だがしかし
成功したか―
それはしらん
明らかに それはない

だがしかし 
定年まで働き
今も継続して働く

だから
このしごと
不適格でもなかったろう

何もいいことがなかった
そこまでは言わぬ
少しはいいこともあった
「その後」の人生
すなわち 今
何かいいことに
気持ちは向ける
気持ちをむける

それさえしておけば
きっと
まだ 生き続けられる
きっとね

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