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最低のライフハック!個室ビデオBOXは街中の【「つらい」シェルター】だ!!

 いきなり女性の読者を全く想定していなくて申し訳ないことしきりなのだが、気づきを得てしまったのだから仕方がない。そして、それなりに緊急時対応の方法として有効だと感じたのでご紹介させていただきたいと思う。

街中で「つらい」が襲ってきたら

 いわゆる「うつ」の症状を抱えての困りごとは人それぞれに違うと思うが、私の場合は、街中を歩いていて〈いきなり「つらい」がやってくること〉である。具体的にいえば、明確なストレスや不安の原因があるわけではないのに急に動悸が激しくなったり(それは、時に立っていられないくらいの激しさでやってくる)、胃腸のあたりに重苦しい違和感を発生したりする。もちろん自分で制御できることでないからいつやってくるかもわからないし、その症状に苦しんでいる間に、気にしなくても良い事や不安がフラッシュバックしてちょっとしたパニックに陥りそうになったりもする。恐らく、自律神経にダメージを負っているからなのだろう。そのため、不意の「つらい」の到来に怯えながら過ごさねばならない状態となり、さらに症状が悪化する負のスパイラルに陥ってしまうのである。

 もちろん、「うつ」の療養の仕方としてわざわざ人ごみの中に出向かないことが大事だというのはもちろんわかっている。だがしかし、自分の場合かかっているクリニックが大都会のターミナル駅の目の前という立地条件のため、どうしても通院の時(今のところは2週間に1回)には人の多い街中に出向かねばならない。

 では、街中を歩いている中に「つらい」がやって来た場合どうすればいいか。その場にうずくまるのはまわりの迷惑にもなるし、ましてや倒れ込んだりしようものならば救急車沙汰すらあり得る。当の本人は救急車など呼ばれたところでどうにかなるわけではない、救急車で搬送されるような命にかかわるようなものではないと解ってはいるものの、周りから見ればそのようには見えないわけで、そういったこともまた、「うつ」の状態にあっては症状を悪化させかねないストレスとなってしまうのである。

 ならば、どこかに逃げ込もうか?真っ先に思いつくのは駅や店舗の公衆トイレの個室だが、これまた他人の迷惑になる。あなたにも、猛烈な便意に襲われたときになかなか個室が空かない、いったい中で何をやっているんだ!?と焦ったことの一度や二度はあると思う。そういったとき、どうしても気が立って必要以上にドアを激しくノックしたりしてしまうこともあるだろう。もしこれが逆に激しくノックされる立場になったらどうだろう。しかも「つらい」がやってきてどうにもならないタイミングで、だ。きっと地獄に違いない。もっとつらくなる。だからこれもダメ。

 なんにしても、都会には〈逃げ場所〉があまりにも少ないように感じられる。ショーウィンドウや極彩色の広告に彩られた町並みは、『風立ちぬ』の作者として有名な文豪・堀辰雄の著作から言葉を借りれば『水族館』のようだ。そして、水族館のような飾り建てられた場所は得てして〈隠れる場所〉が見つかりにくいものである。ちなみに、堀辰雄の『水族館』は例によって「青空文庫」で全編購読可能であるので、もしよろしければ、ぜひ。

 https://www.aozora.gr.jp/cards/001030/files/47861_48371.html

 さて、「つらい」に襲われている時に、前述の『水族館』の結末に登場する狂女のようにひとたび〈好奇のマグネシウム〉にさらされようものならば、あっという間に暗い奈落の底に真っ逆さまだ。だから、周りからの情報が遮断でき、落ち着きを取り戻す時間を確保できるシェルターが欲しい。でも、そんなものこんな街中のどこにあるというのだろうか。

 …そうだ、個室ビデオBOXに行こう。

1時間1000円で確保できる「都会のシェルター」

 というわけで。個室ビデオBOXである。繁華街の中や国道のロードサイドでよく見かける「花太郎」であるとか「金太郎」であるとか「宝島24」であるとかいう名前のチェーン店でおなじみのアレだ。どういう業態なのかを知らない方もおられるのでざっと説明をしておくと、客は入店後に棚に並んでいる雑誌やDVDを手に取り(ご想像の通り、それらの9割以上はポルノだ)、会計を済ませたのちに割り当てられた個室に入って…というものである。

 なぜこれがシェルターになり得るのかというと、まず第一に各店舗の個室はマンガ喫茶・ネットカフェのようにパーテーションで仕切られているわけではなく、しっかりとした壁と扉によって区分けされた「個室」であるということである。しかも、その中で「楽しむ」コンテンツの特性上、ほとんどの店舗においてその個室は防音処理が施されており、外部からの雑音の一切を遮断することが可能だ。なので、街中の情報量にやられた状態からの回復を促すには適している。もっとも、入店直後にぶつかる雑誌・DVDの棚まわりはさらに情報過多の状態なので、ここでやられないようには気を付けねばならない。まあ、あくまでシェルターとしての利用なので、手元にあるものを適当にひとつふたつ引っ掴んで会計してしまえばいいのだが(店舗入り口付近ならば普通の雑誌も置いてある)、念のため用心したい。

 また、これらの個室にはいくつかのタイプがあって、中には座敷状になっているタイプのものもあり、こういったタイプの個室の中であれば、五体投げ出して寝転がること、加えて、仮眠を取ることも可能だ。また、外部の視線からは完全に遮断されているから、もしも息苦しいのであれば衣服を緩めても構わないし、何なら脱いでしまってもOKである。これは、絶対に街中ではできないことだ(というか、やったら当然警察のご厄介になることとなる)。加えて、店内で飲食物のサービス提供を行っているマンガ喫茶やネットカフェと違い、飲食物の持ち込みについてもうるさく言われることはないので、たとえば人前で食事をする人が苦手というタイプの「つらい」を抱えた方にもお勧めできる。場所代含めてちょっと高くつくが、「便所飯」よりどう考えても衛生的だ。

 このように、個室ビデオBOXは「18歳以上」「男性限定(?)」という条件こそ付いてしまうものの、【街中のつらいシェルター】としては実に有用な施設であるということである。ジェンダー論の類はとりあえず別のところでやっていただきたい。たいへん品のよろしくないライフハックで重ね重ね恐縮することしきりではあるが、「つらい」のやり過ごし方の引き出しは、多く持っていても困ることはないと思うので、もしも都会の真ん中で「つらい」に襲われたときは、本稿のこともちょっと思い出していただきたい。

都会のシェルターはここで探しましょう。

【金太郎・花太郎】http://kin-v.jp/shop/

【宝島24】https://takarajima24.com/

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