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本人訴訟のデメリットは必要な弁論ができないリスクがあること

今回は本人訴訟のデメリットについてお話しします。

提訴の手続きがわからない、争点がわからない、どのような証拠を用意すればよいかわからない、法的な主張ができない、法律や判例を知らない、裁判官や被告代理人弁護士の言っている意味がわからない、主張や反論が感情的で争点に関係ないものになるかもしれない、事実関係や法的な主張を訴状や書面でうまく表現できない。まず、こういったテクニカルな問題が起こってくるでしょう。そうすると、必要な弁論ができないために、本来持っている権利にもかかわらず、その保護が適切にされない可能性もあるわけです。これが、もっとも危惧される本人訴訟のデメリットです。

少し極端な例ですが、原告として「(会社は原告に対して)未払い残業代を支払え」と訴訟を起こしているにもかかわらず、感情的に「被告の会社の代表取締役はケチで金払いが悪い」と主張して、それを裏付ける逸話を紹介しても、裁判官は「被告には未払い残業代を支払う義務がある」との判断には至らないでしょう。裁判所が原告の意をくんで、弁論や立証をしていないことまで親切に判断してくれるようなことは絶対にありません。つまり、本来なら勝訴できるはずなのに、敗訴してしまうリスクがあるということです。

さらに、もし弁護士を代理人に選任していれば弁護士が行うことになる作業を原告たる労働者本人がみずから行う必要があります。訴状などの書面を作成・提出したり郵送したりする、裁判所を訪れて提訴手続きを行う、法廷に出廷して原告席に座る、法廷での口頭弁論で陳述するなどです。こういった稼働と費用がすべて本人にかかってくる点も無視できないでしょう。

前コラム【本人訴訟で未払い残業代を請求する(3)】で書いた費用面での本人訴訟のメリット。そして、このコラムで挙げた本人訴訟のデメリット。当たり前のことですが、メリットとデメリット(リスク)のどちらにどのように重きを置いて、どのように判断するかが重要です。

次回は、デメリットをふまえた上で、本人訴訟に関する私の見解を述べたいと思います。お楽しみに!

街中利公

本コラムは、『実録 落ちこぼれビジネスマンのしろうと労働裁判 労働審判編: 訴訟は自分でできる』(街中利公 著、Kindle版、2018年10月)にそって執筆するものです。

免責事項: コラムの内容は、私の実体験や実体験からの知識や個人的見解を読者の皆さまが本人訴訟を提起する際に役立つように提供させていただくものです。内容には誤りがないように注意を払っていますが、法律の専門家ではない私の実体験にもとづく限り、誤った情報は一切含まれていない、私の知識はすべて正しい、私の見解はすべて適切である、とまでは言い切ることができません。ゆえに、本コラムで知り得た情報を使用した方がいかなる損害を被ったとしても、私には一切の責任はなく、その責任は使用者にあるものとさせていただきます。ご了承願います。

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