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本人訴訟は不利なのか?-最も大切なのは事実を立証すること

本人訴訟は不利なのか。読者の皆さまはどのように思われますか?

原告たる労働者が本人訴訟を起こす一方で被告たる会社に代理人弁護士が付けば、「原告たる労働者本人 VS. 被告代理人弁護士」という構図になってしまいます。労働者には弁護士は付かないのですから、訴訟の経験法律の知識についての原告・被告間の差は圧倒的かつ一目瞭然でしょう。前コラム【本人訴訟で未払い残業代を請求する(4)】で書いた通り、労働者には「必要な弁論ができないために、本来持っている権利にもかかわらず、その保護が適切にされない可能性」があり、「本来なら勝訴できるはずなのに、敗訴してしまうリスク」を負ってしまうわけです。

しかし、私は、争点がとても複雑だったり医療過誤・建築瑕疵・知的財産などのように高度に専門的でない限り、経験や知識がなくても法的な主張を作ること自体さほど難しくないと思うのです。労働者が未払い残業代を請求する場合、「払ってもらっていない残業代を払え」という主張です。主張はとてもシンプルです。

この主張にあたり重要なのは、事実関係とそれを裏付ける証拠。原告が「払ってもらっていない残業代を払え」と主張するなら、残業をしたという事実、残業代が支払われていないという事実を立証しなければなりません。請求する残業代の額も明確にする必要があります。そのうえで、労働基準法にしたがって「払ってもらっていない残業代を払え」と主張するのです。

そして、事実を裏付けるために、雇用契約書、就業規則、賃金規程、タイムカード、給与支給明細書、着金が記録された銀行通帳などの証拠(書証)を用意する必要があります。

あとは、裁判所が、証拠に基づいて残業をしたという事実と残業代が支払われていないという事実を認定し、労働基準法に基づいて、被告たる会社には原告たる労働者に対して未払い残業代いくらの支払義務があることを判示することになります。

つまり、原告たる労働者にとっては、事実を立証することこそが重要。事実の立証そのものには、訴訟の経験や法律の知識はさほど必要ありません。その意味で、未払い残業代の請求にあたっての事実の立証の仕方は改めて説明しますが、冒頭の「本人訴訟は不利なのか」への回答は、本人訴訟は必ずしも不利というわけではないとなるのです。

ここまでのコラムでは本人訴訟について述べてきました。次回から、未払い残業代に関する問題を解決する手段のひとつ、労働審判について説明したいと思います。どうぞお楽しみに!第6回へ続く。

街中利公

本コラムは、『実録 落ちこぼれビジネスマンのしろうと労働裁判 労働審判編: 訴訟は自分でできる』(街中利公 著、Kindle版、2018年10月)にそって執筆するものです。

免責事項: noteの内容は、私の実体験や実体験からの知識や個人的見解を読者の皆さまが本人訴訟を提起する際に役立つように提供させていただくものです。内容には誤りがないように注意を払っていますが、法律の専門家ではない私の実体験にもとづく限り、誤った情報は一切含まれていない、私の知識はすべて正しい、私の見解はすべて適切である、とまでは言い切ることができません。ゆえに、本noteで知り得た情報を使用した方がいかなる損害を被ったとしても、私には一切の責任はなく、その責任は使用者にあるものとさせていただきます。ご了承願います。

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