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「伝える力」の学びを通して、面白い福祉人を育てる 〜南山城学園・研修プログラムの振り返り〜

自分たちの魅力ってなんだろう?
強みになる部分とは?

自分たちの個性が何なのかを理解し、自分たちの言葉で伝える。城陽市にある南山城学園では、「社会福祉という業界においても、広報は要である」という思いのもと、伝える力を強化し、採用や情報発信に力を入れています。

私たちは2014年から、南山城学園内の若手を中心とした「GAKUEN魅力発信チーム(GKN)」に関わり、広報や求人に関わる発信力を学ぶプログラムを担当させていただいています。今年で8年目となる今、これまでの歩みを広報課の岩田さん、田中さんとともに振り返り、プログラムによるGKNメンバーの変化や、実施に対する思いをお聞きしました。


プロフィール

(南山城学園)
城陽市を中心に、障がい者、高齢者、生活困窮者向けの支援、子育て支援などに関する30以上の福祉施設を設置し、生活支援・就労支援に取り組んでいる。

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岩田貞昭さん(左):法人本部事務局企画広報課/課長
田中楓さん(右):法人本部事務局企画広報課/新卒採用・研修・広報担当

(まちとしごと総合研究所)

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東 信史(左):福祉職の魅力を伝え、南山城学園で働く仲間や応援してくれる人を増やそうと、2014年に発足した「GKN」にアドバイザーとして参加。研修プログラムを企画・運営するファシリテーターをつとめる。

三木 俊和(右):大学・高校等教育機関での地域連携、ローカルキャリア、シチズンシップ教育などを実践。2017年、福祉以外の学生へ、南山城学園の魅力や、地域と関わる福祉像・仕事観を伝える「地域と仕事イノベーションフォーラム」の開催、運営を担当し3大学で実施。


研修をはじめるきっかけ

2014年から南山城学園で始まった「福祉人材確保のための研修プログラム」。南山城学園における採用・広報というテーマに対してさまざまな角度からプログラムを企画し、実施させていただいています。7年目となった2020年も、「魅力を伝えるストーリーづくりを学ぶ」というテーマに沿って、写真撮影やライティングを学ぶ研修プログラムを開催しました。

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東:どういったことがきっかけで、まちごとに研修を依頼してくださったんですか?

田中:最初のきっかけは、「若手をもっと外に出したい」という思いからです。それではじめに、入職6年未満の若手を中心に、「GKN」をつくったんです。南山城学園の理念や活動を、外の人に適切に伝える役割を担うチームですね。採用もその一環になります。

岩田:最初はコンサルタントとか研修を専門にしている方に頼んだんだけど、なんか違うなぁって。それで、ファシリテーションとか魅力発信とかそういった視点でプログラムを組んでくれる人に任せようということで、まちごとに依頼したんだよね。福祉と違う分野の人のほうが刺激になると思うし。ただ…最初は「大丈夫なんか」ってちょっと心配だった(笑)

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東:実ははじめてファシリテーションの研修をやらせてもらったのが、南山城学園なんですよね。前任の野池に、前職がリクルートだったので「広報の研修できるだろ?」って言われて。「本当は広告畑なのになぁ」と少し不安を抱えながら。1年目は本当に手探りでやらせていただいていました!

岩田:まぁ、つまり東くんを育てたのは南山城学園ってことだよね(笑)

東:ありがとうございます(笑)。そもそもなぜ、広報に力を入れようとおもわれたんですか?福祉業界でここまで広報に力を入れているところは少ない気がしますが…。

岩田:50周年を迎えた時に、広報に力をいれていかなきゃいけないねという話になったんだよ。社会福祉法人は、人のつながりが大事だからね。組織が一体化していないと、物事はうまく進んでいかない。広報活動自分たちの仕事に誇りをもてるように、学園全体のことを職員が自分ごととして捉えられるように。学園の内側に向けた発信でもあったわけなんだよ。

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岩田:外に向けての発信という意味では、僕たちの理念や思いを可視化し、伝えていくことに意味があると思っていて。例えば「大学で話す」など、福祉の分野以外での活動って誤解されることも多いんだけど、「福祉業界全体の未来のためにその活動を行っている」ときちんと伝えることで、誤解や偏見を招かないようにするためでもあるんだよね。

田中:そういった意味でも広報活動ってすごく大切なんですが、社会福祉の業界ではまだまだ優先順位が低いのが現状ですね。


自分たちの強み、弱みを見つける

東:プログラムの最初は、採用のツールとなるパンフレットを見直すことから始まりましたね。就活生や外部の方にとって、南山城学園の魅力が伝わるパンフレットはどういうものなのかをGKNの皆さんと一緒に考え、既存のパンフレットをどのように再編集するかを考えました。講師である僕も、とても楽しかったです。

田中:たしか、自分たちの強み、弱みを見つけるところからはじまりましたよね。

東:そうですね。最初のころは「南山城の強みって何だと思う?」と、GKNのメンバーに聞くと、給与面とか施設の規模とか、外見的な特色ばかりが意見としてでていました。でも研修の回数が重なるにつれて、職員同士の関係性や利用者さんとの接し方など、みんなしか知らない内側の「強み」が見えてきました。

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田中:2017年の「法人の魅力を伝えるムービー」の研修もとても良かったです。

東:自分たちの日常を動画で撮影をして、チームごとにムービーをつくる講習をしましたね。撮影から、アプリを使っての動画編集まで、自分たちで行ってもらいました。スタッフの1日のスケジュールやスタッフインタビュー、利用者様との日々の関わりなど、チームごとに取り上げる内容が違って、面白かったですね!

岩田:法人全体で30以上の事業所があって、750人以上のスタッフが働いているので、お互いに存在を知らない者同士もいる。こういうことをきっかけに結びついて、協力しあって物事を進めた経験は、人事異動したときの一つの財産になっているよね。

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東:僕らもプログラムを組むうえでは、なるべく職員同士が対話する時間を多くとるように意識しています。仕事の性質上、仕事の合間に話す時間があまりとれないと思うので、こういう時に自分の気持ちや意見を話してほしいなって。今では初期に参加してくださった方がリーダーシップをとって、参加メンバーをまとめてくれるなど、とてもやりやすい雰囲気をつくってくれていて。ありがたいですね。


現場で活きる、伝える力

東:伝え方やプレゼンテーションを学ぶ研修も行いましたが、研修後に変化はありましたか?

田中:それまでは「これをお願いします」とこちらから言って、動いてもらうことがほとんどだったんですが、職員からも提案してくれることが増えました。この間、学生向けにオンラインインターシップを開催したんですが、「資料をつくってみたんですが、アドバイスをください」って主体的に動いてくれて。求人に関しても、自分ごとのように捉えてくれる職員が増えたということが大きいんじゃないかな。

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岩田:現場でも、学んだことを活かしてるな、と思う場面はあるよ。6年前と比べると、発表に関するスキルはものすごく上がっているし。

田中:社内で研究発表会する際のクオリティが、本当に上がりましたね!パワーポイントや動画を使った資料のつくりかた、筋道を立てて説明することなど、これまでの講習でのスキルが生きていると思います。

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東:それはうれしいですね。ただ、学んで終わりだとあまり意味がないのですが、南山城学園はアウトプットする場を設けてくださっているので、学んだことが活きるんだろうなと思いました。

岩田:うちでは、外に出てしゃべることもあるから、そういう場でも活きているんだと思うよ。

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東:外に出ていく場とは、どのような場を設けているんですか?

岩田:就職フェアや大学の講義で、自分たちの仕事について、社会福祉ということについて話す場を設けているよ。研修以前からそういった場はあったけど、「なんで忙しい仕事の合間をぬって、話をしなきゃいけないの?」という声が多かった。でもつづけるうちに、「もっと伝えたい」って気持ちになってきたんだろうね。そこに研修で得た学びができて、活かされている。自分が頑張った結果、入職してくれる子がいたら、やりがいにつながるしね。

福祉の視点からみたまちづくり

三木:3年前には、岩田さんと田中さんに僕が受け持つ大学のプログラムにお越しいただき、いわゆる「福祉のイメージ」にとらわれない働き化や魅力、地域課題に取り組むをことを大学生に伝えるフォーラムを開催させていただきましたね。

岩田:そうだね。福祉を専攻する学生ではなく、他学部の学生にも福祉の話をしたいからって、場を設けてもらったね。

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三木:「地域福祉とは?」ということをお話していただいたら、6人ぐらい入職希望者がでたんですよね。しかもその中から、採用していただいて。そもそもまちづくりに関わりたいと思っている子が多かったから、マッチしそうだと思ってはいましたが、そんなにたくさん希望するとは…。

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岩田:お年寄りや障害者に関わることだけが社会福祉だと捉えている人も多いから、もっとわかりやすい話をしようと思って、高齢者の車の暴走事故などを例にだして話をしたね。罪をおかすことはいけない。でも、「なぜ犯罪が起こるんだろう?」という背景を知らないとまちづくりはできないよねって。

三木:学生側の興味に合わせて、「福祉の視点からみたまちづくり」について話をしてくださったので、まちづくりに関わりたいと考えている彼らの気持ちにもささったんだと思います。けれど、どうして他学部にも声をかけようと思われたんですか?

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岩田:そもそも僕たちは、福祉の分野で人が採れないから他学部で話をしようと思ったわけじゃないんだよ。福祉を学んできた人ばっかり採ると、どうしても視野が狭くなってしまう。たとえば福祉だけで学んでいると、「施設での集団生活は当たり前」だと思ってしまう。けれど他の分野で学んだ人は「そもそも、集団生活せなあかんのですか?」というところから始まる。だからこそ、色んな人が来てくれたほうがいいんだよ。資格は後からとれるものだし。

三木:それはすごいことですよね。南山城が育成プログラムを持っているから、他の畑からきてもスペシャリストにできる土壌があるということですよね。

面白い福祉人を増やすために

東:今年で関わらせていただいて6年になりますが、今後、期待していただけることや要望などがあれば、教えていただけますか。

田中:この6年で、自分たちのことを、自分たちで伝える術も身についた結果、人材の層が変わってきたんじゃないかなと思っています。私たち南山城学園の考え方も「現状に留まらない」という考え方なので、さらにブラッシュアップしていきたいですね。特に現場でもオンラインでも、何ができるかというかということを組み立てていきたいので、そういった部分を一緒にできたらいいなと思っています。

岩田:田中が産休に入ることもあって、もっと人材の育成にも力をいれていきたいなと思うところもあるんだ。今、GKNと一緒にプロジェクトをつくっているんだけど、提出物のクオリティがすごくいいんだよね。一緒にどんなことができるのか期待もできる。ただ、GKNは毎年同じメンバーではないから、次の年へどうつなげていくかが課題かなとも思っているよ。

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東:僕は普段、いろんな方がお互いの業界を超えて、お互いのやってることを組み合わせることで、新しい物事の解決策が生まれるような取り組みをさせてもらっています。そういった強みを生かして、今年はもっと南山城学園の方たちに、他業種の方と出会っていただく機会をつくって、新しい取り組みやつながりが起こるようお手伝いがしたいと思いました。

三木:2年前に採用につながる事例が起こった時に、やはり「出会い方」が重要だなと思いました。僕の関わる学生の中には、「ちょっと変わった思考をもつ子」がいるんですが、そういう子達に南山城学園のような、面白い企業と出会わせてあげられるかということを目標にしたいと、お話を聞いていて改めて思いました。

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岩田:いい意味での、変態探しやね。そういう変わった思考を持った人たちがつながったら、なにか面白いことができるしね。最近は、うちの広報の様子を見て、福祉の仕事がこうやって表現されるところに入りたいと入社を希望する子もでてきた。そういう子がGKNに入って、研修を受けて、より面白い福祉人になってくれたらいいよね。

東:岩田さん、田中さん、ありがとうございました!


2016年からはじまった、広報や求人に関わる発信力を学ぶプログラム。私達が実施したプログラムを通して変化した参加者の皆さんの意識や、現場での様子をお聞きすることができて、とてもうれしい時間となりました。来期からは、もっともっと面白い福祉人が増えるように。そのための「伝える」力をさらに進化できるようなプログラムを企画していきたいと思います。

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