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乳がん患者になってわかったこと

1 はじめに
乳がん患者になってわかったことがあります。「多様性」って言葉をよく聞いていたけど、わたしたち乳がん患者は「多様な人々」の一部分だなあってこと。「ダイバーシティとは、これまでも社会に存在していたのに、多くの人と異なる特徴を持っているために、社会からの十分な理解を得られなくって辛い思いをしてきた人たち」という定義にぴったりだなあって思います。

2 けっこういるいるよ、乳がん患者
・・・以下引用・・・
乳がんは、⽇本⼈⼥性がかかる割合(罹患率)ががんの中で最も⾼く、年々増加しています。毎年9万⼈以上が新たに乳がんにかかるといわれており、⽣涯で乳がんにかかる割合は9⼈にひとりとなります。 
     参考:国立がん研究センター「がん情報サービス」
    (HOME>最新がん統計
      https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html)

わたしががん患者になって1カ月。それまで、職場や家庭で奮闘する50代のただのおばさんでした。時間があるとジムに通い、ヨガ・ボクササイズ・筋トレなどで体を鍛えていました。それが、急転直下がん患者になってしまったのです。しかし自覚症状は一切なく、体は元気いっぱいでした。手術の予定が決まり療養休暇をとるために乳がんという恐ろしい病名を職場に伝えると、出るわ出るわ・・「実はわたしもガン患者。治療中です」って人が手を握ってくれたり、「私の母が乳がんで、母はすっかり気落ちして、家族みんなで慰めています。思い出すと泣いてしまう」と目を真っ赤にする人とか、「私の母も乳がんです。医者はAさんがよい、腕が良いのでうちの母はむくみが出なかった。手術の後は放射線ですね。どこの病院に行きますか? とことん調べましたから何でも聞いて!」という具合に、驚くほどの仲間がいたのです。これは、元気な私には絶対明かさなかった秘密。
どんなに乳がん患者が多いのか、小さな職場でもこんなに!!と驚きました。(20名ほどの職場、そのうち15名が女性)

3 仕事とお金 
生きていくためにはお金が必要。「3カ月は療養休暇がとれるよ、それ以後は給与面で不利になるよ」との上司の言葉に、主治医に診断書を書き換えてもらうという出来事がありました。療養休暇の前は、休日を返上して仕事上のイベントと引継ぎの準備、私物の整理で大わらわでした。
同僚は定期的な検査診察を受けながら仕事を続けています。しかし、帰宅が遅い日など職場や車の中で寝ているらしく、体調が本当に心配です。わたしの職場は、全国的に人不足な超ブラック業界なので、がん患者といえども、過酷な仕事量を持っています。わたしの代わりも大変な努力と「ちょっとした不正?」で人を確保していただきました。安心して治療を続けられるような状況を期待します。

4 手術後の痛み
 手術後にも外出はします。電車に乗ったとき、見た目が普通なのでなんとなく優先席も使いづらいです。車でも優先パーキングに停めるのも気が引けます。でも、傷のある胸は歩くと揺れて接着面がはがれる気がします。立ったままではきついし、歩くのもきつい。これは他の疾患を抱えた方も同じ気持ちだと思います。見た目はわからないけど、わざわざ言いたくはないけれど、「優先席に座らせて」「ちょっと優先パーキングに駐車させて」とそ強く強く思います。そう思ったのだから、堂々とそうすればいいのですが、できないのが真面目すぎるわたしです。そして、真面目過ぎるのは、わたしだけではないと思います。その時の痛みや疲労感で図々しく生きていいのだと、今は思いますが、がんばってしまうのは国民性でしょうか。
5 かなしみ
痛みは確かに時間とともに薄らいでいきますが、「傷が痛む。腫れが痛む。動くたびにひきつって痛む」「無くなった乳首がチクチク痛む」や「左右バランスの悪さから、体が痛む」などいろいろな痛みがあるようです。そして、再発の心配、病理検査で「断端陽性」という言葉を手渡される可能性など苦しみは続いていきます。そこまでは他の疾病も同じでしょう。乳がんの場合は、それに加えて女性として大事な乳房を失ったことによる大きな悲しみがあります。鏡を見るたびに、そこにあったものが無くなっているという悲しみ。女性らしさや美しさの象徴とされる乳房です。その悲しみは深く、いつも気になり気持ちが晴れない、ため息ばかりという人もいます。入浴前後に鏡を見ない人もいます。また、温泉やプールでの視線、胸の開いたドレスでの違和感など、他人の視線を意識して行動を自分で制限してしまう。この苦しみから、つい外出を嫌い引きこもり、家族に愚痴をこぼす、または誰にも何も言えないで抱え込んでしまうなど心の問題が大きくなっていくようです。睡眠薬やうつ病の薬を用いる人も多いようで、実際わたしのかかりつけ内科医は「それらの薬が必要なら言ってね」と声をかけてくれました。(今のところ、わたしは不要ですが)もちろん、再発だとかきは、大いに泣きまた立ち上がる必要がある。


6 ルッキズム
胸のふくらみが片方または両方ないことに関して、人の視線が気になるかどうかって問題もあります。これも上記の優先席の問題と同じく、「自分の考え方次第」の部分が大きいと思いますが。再建手術という方法が選択肢があるということは、ふくらみを取り戻したい人にはうれしいのかもしれません。しかし、がんを取り除く手術は生きるため必要とわかっても、見た目のための乳房再建手術のため、再び体を傷つけ痛みに耐えることはできない人もいてもおかしくありません。だって痛いのですもの。
わたしは、乳がんサバイバーには胸に傷があったり、ふくらみがない人もいることを多くの人が理解してくださったらいいなと思います。そうすれば、見た目を気にすることなく日常生活を送る人も増えてくるのではないかなと思います。

「これ以上体を痛めたくないよね。乳房が無くてもいいじゃない。それでも、十分あなたは輝いているよ」という多くの目があればいいなと思います。「これが今のわたしの体よ」という自信と誇りをもって前を向く態度があればいいな。こんなにたくさん乳がん患者やサバイバーがいるのに、自信と誇りは見当たりません。
 
あなたやあなたの家族・まれには男性だってかかるかもしれない病気なのに、乳がんになったら、布団をかぶって枕を濡らして過ごすなんて残念なことだと思いませんか?そんな必要なんかないと思います。見た目のことで気にしない時代がくるといいなと思います。
 
7 乳がん患者の恋愛・結婚
恋愛は無理とあきらめてしまう人もいるようです。恋愛するってどれだけ勇気がいるでしょう。でも、乳がん患者は若い人にも増えています。「死を覚悟した」「死にたいと思った」という言葉は、乳がん患者からは珍しくありません。恋愛や結婚の前例が増え、患者が勇気をもてるようになってほしいものです。

8 早期発見早期診断早期治療が日本のどこでも笑顔でできますように
早期発見早期診断早期治療をしていただいたわたしは同僚にうらやましがられました。また、50代の人気開業医である内科主治医に診断レポートを見せると、「こんなに小さいのに見つかったの?ラッキーだったねえ。手術はこれからなのに、こんなに多くの情報がわかっているの?」と驚かれました。「マンモトームっていうものがありまして」と説明してさしあげました。首都圏のバリバリの医師でも詳しくはご存じないようです。

したがって、早期発見早期診断早期治療に「意義あり」の方もいるようです。「2019年版乳がん診療ガイドライン」に沿ってどこの地域・医療機関でも治療が行われていると想像します。しかし、2018年に手術を行った患者さんが、前時代のガイドラインに従った治療であった場合、傷の仕上がりが全く違ってしまったかもしれません。乳がんは1センチ大きくなるのに10年かかるのが真実なら、発見が遅ければよりよい進んだ治療を標準治療としてうけることができたはずという悔しさがあると思います。また、都市部で満足のいく先進高度医療を近所で受けることができていますが、離島の方や地方の方は、これらの先進医療機器のある病院まで行けるのだろうかという心配もあります。わたしがお世話になった若くても頼りになる医師は、どの地方にもいらっしゃるのでしょうか。地域格差をなくし、だれもが等しく受診できる体制を整えてほしいと思います。
早期発見早期治療でみんな笑顔になれるといいなと思います。医療は国民の財産ですよね。わたしの知らないうちに多くの医療関係者が乳がん治療の発展に努力してくださっていたこと、ありがたいです。

9 ファッション

乳がん患者のためのファッションショーがあるといいなと思います。乳がん患者やサバイバーが一歩前に進むための「めがね・補聴器・白杖」と同様の大事なものです。
・片方を失った人が補正することで笑顔になれるもの
・無くなったものが無くなったままその美しさを引き出すもの
・幸せになれる水着 ドレス 
・ウエディングドレスや部屋着
 ところで、ユニクロさんの前開きブラ・前開き肌着は安価で便利です。ただ、あまり知られていないのか大型店にも置いてありませんでした。オンラインまたは店舗取り置きでないと購入できません。もっと知らせると利用したい人は多いと思います。入院や通院・普段の生活に欠かせない便利商品です。
 
10 がん保険・医療保険 
わたしは、これまで契約したものの、「保険金を無駄に払っている」と思っていました。解約したいが手続きが面倒だという理由で掛け金を払い続けていました。しかし、病気が分かって気が重かった時に、「保険金支払われます」と担当者が言ってくれたことが、当時のたったひとつの朗報でした。「しぶしぶ払っていたけど、こうなったらちょっぴり助かる」と知人に話しています。

11 最後に
明日で手術1カ月になります。まだ傷は痛みます。歩くと辛いです。お風呂あがりは腫れます。病理結果はまだわかりません。次回の診察で、断端陽性(だったんようせい)であれば再手術を勧められるかもしれません。はっきり言って、手術はもう一生受けたくありません。陰性であれば、次の放射線治療に進みます。次のステージに行きたい!心の叫びです。

 

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