#021 アイツは突然やってくる①
拝啓 ひらめいてしまった方へ
こないだ書き終えた記事「#017 ~ #020」用の手書きメモ。
そこに[来年スマホ]と書いてありました。
機種変更のための覚え書きなのか、小説のネタ用に書き留めたのか、
そもそも何を思って書いたのか、まったく記憶にありません。
パソコンに残してある「創作のためのメモ(テキストファイル)」を、
わたしはたまに見返します。
…… で、昨晩、見返しました。
たくさん書き残してあるメモのひとつが、
ろうあの父。娘との会話は、LINE。あしながおじさん。
ほかのテキストファイルには、こんなメモ。
17歳のノルマ
そして[来年スマホ]と似たメモも発見しました。
未来スマホ
…… で、わたし、ひらめいてしまったのです。
「#019 授業を受けよう②」の文末付近に書いた、
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※でかいアイツとは、強烈に「書きたい」想いのことです。
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この、まあまあ「でかいコイツ」が突然やってきたのです。
まさしく、
エヴァの使徒が現れたのです。
逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、
逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだぁッ。…… やります。ボクは乗ります。
わたしは昨晩、
碇シンジ くんになってしまい、
本日、プロット[パパとのLINE(仮)]を残すことにしました。
(エヴァをご存知ない方、申し訳ありません)
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■コンセプト(メッセージ)
「見守ってくれるひとは、いつもそばにいます」
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~ タイトル:パパとのLINE(仮) ~
「ママ! これ見て!」
澪は、玄関先で、
仕事から帰宅したばかりの母・恵美子に、
LINEのトークルーム画面を見せた。
恵美子はしっかり見ないまま、
「ちょっと、あとにして」 廊下を進んで自室に向かった。
澪は玄関から移動して、
リビングのソファに腰を掛け、トークルーム画面を見ていた。
💬 澪、元気か?
部屋着に着替えてリビングに入ってきた恵美子。
「ママ、これ見て」
澪はそう言って、
恵美子の顔の前にスマホをかざした。
「パパからさっき、LINEきた」
恵美子と澪は、
現在、2人家族には広すぎる3LDKのマンションで2人暮らしをしている。
恵美子はワーキングママ。
澪は中学2年生。
「パパからLINE? なに言ってるの?」
「だって、ママ。これ見て」
恵美子は、LINEのトークルームを覗き込んだ。
💬 澪、元気か?
「でしょ? これ、パパだよね?」
「迷惑メッセージじゃん。ぜったい返信なんかしちゃダメよ」
「だって送信者、パパだよ。[たかお]になってる」
恵美子はリビングの隅にある仏壇を指差して、
「ねぇ、澪。…… パパは去年、亡くなってるんだよ」
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冒頭はこんな感じで始まって、
■第1章:澪 ■第2章:崇夫 ■第3章:恵美子
全3章の物語。
いずれしっかり考えるつもりですが、
ひとまず、おおまかなストーリーはこんな感じです。
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■第1章:澪
突然送られてきた父・崇夫からのLINEメッセージ。
澪は(母・恵美子には内緒で)メッセージの交換を始めた。
学校での出来事や進学のこと、将来のこと、
恵美子とのちょっとした諍いについてなど、
澪が相談やグチを送信すると、
翌日、既読になって、さらに次の日の夕方、崇夫からの返信が来た。
同意の返信だったり、応援してくれる内容だったり、
慰めてくれるときも、叱ってくれるときもあった。
崇夫からのメッセージは夕方に届き、
その内容を確認して、澪はメッセージを送信する。
そのやりとりを行うのは、
学校から帰ってきたあと、仕事から恵美子が帰宅する前。
内緒のLINE交換なので、恵美子の前では、決してしなかった。
崇夫からの返信は、決まって2日後。
澪は当初、このことを不思議に思っていたが、
すぐに気にならなくなった。
返信を待っている2日間は、
何度もトークルームを眺めては、
仏壇の前に座って、崇夫の遺影と会話していた。
返答はないが、澪にとって、幸せな時間になった。
もちろん恵美子の在宅中は、一切しなかった。
返信は必ず2日後。
このことは気にしなくなった澪だったが、
1年前の父・崇夫の様子を思い出し、そちらの方を気にした。
闘病中(入院中)の崇夫は、
病室を出て、1階にあるロビーソファで、ときおりLINEをしていた。
当時の澪は、学校から帰宅すると、
ほぼ毎日、恵美子の運転する車で約1時間かけて、
崇夫が入院している病院に通っていた。
1階のロビーソファでLINEを打っていた崇夫に、
「パパ、誰とLINEしてるの?」と訊ねたことがあった。
「会社のひとからLINEが来たので、返してるんだよ」
そのときの澪は「そっか」と納得していた。
しかし、既読がつくタイミング、返信の来るタイミングが、
当時の崇夫がLINEをしていた時間と重なっていることに気づき、
(わたし、まさか、あのときのパパとLINEしてる?)
崇夫は入院してから約半年で亡くなっている。
(もしそうだったら、もうあと残り1ヶ月?)
澪と崇夫のLINE交換は、そろそろ5ヶ月になる。
気になった澪は、崇夫に訊ねた。
💬 パパは1年前のパパなの?
翌日に既読がついて、その次の日、返信が来た。
💬 バレちゃったね。そう、いま、病院のロビー。
澪は即レスした。
💬 パパとこうしてLINEできるの あと1ヶ月なの?
翌日に既読がついて、その次の日、返信が来た。
💬 そっか、あと1ヶ月で、パパ死んじゃうのか。
じゃあ、それまでの間、いっぱい会話しないとね。
澪、教えてくれて、ありがとうね💗
澪はその返信を見て、自分の迂闊さに後悔した。
号泣し、泣きながら、震える手でメッセージを打った。
💬 ごめんなさい わたし余計なこと いっちゃったみたい
わたし イヤだ もっともっと パパとLINEしたいよ
澪は、その日、仕事から帰宅した恵美子にしがみつき、
泣きながら、内緒にしていたLINEのことを話した。
恵美子は気づいていた。
澪は、恵美子の前で、崇夫にメッセージを送信することはなかったが、
誰かとのやりとりをスクロールしながら眺めていることがよくあった。
「あなた、それしてるとき、いつも楽しそうだった」
「そろそろ、ちゃんと止めさせないといけない。ママはそう思ってた」
「ねぇ、澪。それ、ママに見せてくれる?」
澪は恵美子にスマホを渡した。
恵美子は、澪と崇夫のトークルームを、スクロールしながらすべて見た。
「…… パパ」とつぶやき、
「…… 崇夫、本当にいままでありがとうね」
恵美子は、涙をボトボト落としながら、
泣き続けている澪を抱き寄せ、しばらく2人で泣いた。
澪のメッセージに、翌日既読はついたが、
メッセージが返ってきたのは、それから1週間後だった。
💬 澪、これが最後のLINEになると思う。
澪、看護師になる夢、かなえなさい。
澪ならなれるし、
パパは天国と澪のそばを行き来するから、安心しなさい。
澪、夢に向かって、頑張れ!
パパはこれからもずっと応援している。
そしてこれからもずっと、愛してるよ💗
この返信メッセージを最後に、
崇夫からのLINEは途絶えた。
澪は、思い出した。
崇夫は、入院から約5ヶ月が経った頃、
容態が急に悪くなって、病室から出られる状態ではなくなっていた。
崇夫とのLINEのメッセージ交換は終わってしまったが、
澪は、ことあるごとにトークルームを眺めては、
そこに残された数々の崇夫からのメッセージに励まされた。
澪はその後、高校(5年制の看護科)へと進学し、
最短の20歳で、看護師国家試験を受験した。
そして合格発表日。
リビングのソファに、澪と恵美子は並んで座り、
ノートPCから厚生労働省のサイトにアクセスした。
澪は、看護師国家試験に見事合格した。
「澪、おめでとう」と恵美子。
「うん」 澪は涙ぐんだ。
「ありがとう、ママ」
「さぁ、パパに報告しようか」と恵美子。
澪は笑顔でうなずき、
ノートPCを持って、仏壇の前に移動した。
画面を見せながら、
「…… パパ。…… ご報告です」
「わたし、澪は、見事に合格いたしました」
そのとき、
リビングのソファの上に置いてあった澪のスマホが鳴った。
チン ♪ コン ♪(LINEの通知音)
恵美子は、
ソファの上の澪のスマホを手に取り、
仏壇の方へと移動した。
澪に「見てごらん」と言って、
スマホを手渡した。
澪と崇夫のトークルームに、
メッセージが届いていた。
💬 澪、合格おめでとう💗
澪は驚いた。
「えっ? どうして? ママ、どういうこと?」
恵美子はニッコリ笑って、スマホを2つ取り出した。
「こっちがわたしの」
「こっちがパパのスマホ」
「まさか、ママ、ずっとわたしをダマしてたの?」
恵美子は首を横に振った。
「ダマしてなんかない」
「さっきのLINEは、わたしがこのパパのスマホから送ったの」
「その[合格おめでとう]は、パパから頼まれていたやつ」
澪は困惑した。
「ママ。ごめん。ぜんぜん意味が分かんない」
「6年前のLINEは、間違いなく、パパなの」
「わたしが大好きな、崇夫本人なんだよ」
~ 第1章:澪 / おしまい ~
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このつづき、
■第2章:崇夫 は、
次回「#022 アイツは突然やってくる②」で書きます。
ちなみに今回の記事で、お伝えしておきたいことは、この5つです。
■普段からメモを残しておく
■たまにそのメモを見返す
■アイツは突然やってくる
■ひらめいてしまったら、一気呵成に書く
■できれば、即「プロット」化する
…… で、本日わたしは、午後の予定をすべて変更し、
このプロット作成に集中したのであります。
ではでは、次回「#022 アイツは突然やってくる②」をお楽しみに。
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~ 5月中に読後の感想を記事にします ~
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