#023 アイツは突然やってくる③
拝啓 ひらめいてしまった方へ
前回「#022 アイツは突然やってくる②」のつづきです。
※プロット[パパとのLINE(仮)/ 第3章:恵美子]です。
ちなみに、長いです。めっちゃ長いです。ごめんなさい。
時間に余裕のあるとき、お読みください。…… ホントごめんなさい。
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■コンセプト(メッセージ)
「見守ってくれるひとは、いつもそばにいます」
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~ タイトル:パパとのLINE(仮) ~
■第3章:恵美子
仕事帰り、路肩に停車させた車の中で、
恵美子はたくさん泣いた。
しかし、いまは真剣な顔でスマホを見ていた。
落とした視線は、1年前の崇夫から届いたLINE。
💬 恵美子、元気か?
つか、愛してるよ💗
恵美子は、1年前のことを思い出しながら、考えていた。
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あのときのテスト配信に、澪は返信した。
たしか質問攻めの返信だった。
家に着いたら、崇夫のスマホを確認しよう。
澪には届いていないかも? いや、届いてる。
すでにLINEのやりとりが始まってるかもしれない。
たしか、あのトークルームBで、
澪は[ママには内緒のLINE]って書いてた。
いまのリアル澪と崇夫のLINEに関わっちゃいけない。
関わると、過去が変わって、良くないことが起きるかもしれない。
せっかくのLINEのやりとりが、もうできなくなるかもしれない。
わたしに届いた崇夫からのLINE、
こっちは、じっくり考えてから返信すればいい。
まずは澪への対応が最優先。
とにかく、家に帰ったら、
いのいちばんに崇夫のスマホを確認しよう。
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恵美子は、スマホをバッグの中に入れ、
ハンドミラーを取り出し、顔を映した。
つぎにバッグからウェットティッシュを取り出して、
化粧崩れの箇所をやさしく叩いた。
「まぁ、なんとか、ごまかせる」
そして、
ハンドミラーとウェットティッシュをバッグに仕舞った。
「よし!」と気合いを入れて、
パーキングブレーキを戻し、ハザードランプを切って、
混み始めた県道を自宅へと向かった。
玄関前の恵美子。
深呼吸を1回して、鍵穴にキーを差し込んだ。
「ただいま」
玄関ドアを開けるや否や、
澪が駆け寄ってきた。
LINEのトークルーム画面を見せながら、
「ママ! これ見て!」
(かなり興奮しているみたいだ)
(おかえりも言い忘れてる)
(あのテスト配信、やっぱり澪にも届いてる)
恵美子は確信し、
(いまはまず、崇夫のスマホを確認しないと)
不機嫌なママを装い、
「ちょっと、あとにしてほしい」 そう言いながら靴を脱いだ。
(ごめん、澪。マジで、ごめん。演技だからね)
足早に廊下を進んで、
以前までは夫婦の寝室だった自室に入った。
サイドボードの抽斗から、
崇夫のスマホを取り出し、アダプタにつなげ、コンセントに差し、
スマホを起動させた。※画面ロックは(入院中に)無効設定済み
早速、LINEのアイコンをタップ、
つづけて澪とのトークルームBをタップし、
先頭(いちばん最初)のメッセージまで一気にスクロールした。
💬 澪、元気か?
💬 どなたですか? パパですか?
間違いですか? いやがらせですか?
どうしてわたしに 送ってきたんですか?
パパはいま天国にいますよ やめてください
💬 正真正銘、澪のパパだよ。
アニメ「バイオレットエバーガーデン」、
澪・ママ・パパ、3人で見て、みんなで泣いた。
どうかな? パパって信じてくれる?
💬 パパだ 本物だ なんだかよく分かんないけど
元気ですか? 天国で元気してますか?
澪は元気に生きてますよ~
やったー! 天国のパパとLINEできる~
あとね ヴァ ヴァだから
ヴァイオレット・エヴァーガーデン 間違わないでね
1年前の崇夫とリアル澪の[この微笑ましいやりとり]に、
恵美子は、つい笑ってしまった。
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ダメ、ダメ。笑ってる場合じゃない。
やりとりすべての確認は、就寝前にするとして、
たぶん澪は、このあとわたしが部屋を出たら、
さっきのつづき、崇夫からのLINEについて報告してくる。
💬 どなたですか? パパですか?
間違いですか? いやがらせですか?
どうしてわたしに 送ってきたんですか?
パパはいま天国にいますよ やめてください
この猜疑心と怒りの混じった返信をさせるために、
わたしはなんて言えばいい? どんな対応すればいい?
………… なるほど。
そういうことか。
ニセモノの崇夫からLINEが来たら、
わたしはどう言うか、どう対応するか。…… それを実践すればいい。
あとは澪が勝手に動き出す。
止めてもきっと返信する。きっとわたしに内緒で返信する。
あとは澪に委ねよう。
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アダプタをコンセントから抜いて、
崇夫のスマホをもう一度、
サイドボードの抽斗のなかに仕舞った。
そして、急いで部屋着に着替えた。
リビングに向かうと、
「ママ、これ見て」と澪。
恵美子の顔にスマホを近づけ、
「パパからさっき、LINEきた」と言った。
「パパからLINE? なに言ってるの?」
「だって、ママ。これ見て」
恵美子は、LINEのトークルームを見た。
💬 澪、元気か?
「でしょ? これ、パパだよね?」
「迷惑メッセージじゃん。ぜったい返信なんかしちゃダメよ」
「だって送信者、パパだよ。[たかお]になってる」
恵美子は、
リビングの隅にある仏壇を指差して、
「ねぇ、澪。…… パパは去年、亡くなってるんだよ」
澪は、
真新しい仏壇に飾ってある、
崇夫の遺影をちらっと見て、
下唇を噛み、
憤然とした顔で、自室へと向かった。
恵美子の顔も見ずに、
「晩ご飯、いらない」 そう言って、自室に入っていった。
そのすぐあと、
澪の部屋から、なにかモノを投げつける音が聞こえた。
恵美子は、思った。
(澪は怒ってる)
(おそらくその怒りのまま、LINEの返信をするに違いない)
(ごめんね、澪)
(あとは、あなた次第。…… 頼むよ、澪)
その夜、恵美子は、
就寝前に崇夫のスマホを確認した。
崇夫と恵美子のトークルームは1つだけだった。
澪にはあるトークルームBはなかった。
恵美子は、思った。
(崇夫が消したんだ)
恵美子は、1年前を振り返った。
崇夫が恵美子に、
澪とのトークルームBを見せるとき、
必ずトークルームBを開いた状態だった。
トーク一覧を見せたのは、最初だけ。
澪から最初の返信LINEが来たときだけだった。
それ以降、崇夫は恵美子に、
トーク一覧を見せなかった。
恵美子は、思った。
(崇夫は、わたしに隠してたんだ)
実は、1年前、崇夫は早い段階から気づいていた。
アプリ「ミライン(未来のひととLINEであそぼう)」が、
ごっこ遊びじゃなく、未来の澪とLINEができていることに、
そして未来の恵美子ともLINEができていることに。
このことに気づいたきっかけは、
未来の恵美子が最初に返信したLINEにあった。
澪とのトークルームBを見直しながら、
微笑ましい崇夫と澪のやりとりに、
恵美子はとても幸せな気分になっていた。
トークルームBの、
恵美子が崇夫の代わりに打った
最後のメッセージに辿り着いたそのとき、
チコン ♪ チコン ♪ チコン ♪ チコン ♪ チコン ♪
立てつづけに、LINEが入った。
💬 ねぇ パパ?
最後なの? もうLINEくれないの?
ずっとわたしも愛してる💗
だから ねぇ パパ LINEして!
💬 ねぇ パパ LINEしてよ
💬 ねぇ パパ お願い
💬 パパ お願いします
💬 お願いします 澪
いまさら届いた澪のせつない叫びに、
恵美子は、きょう、2度目の号泣をした。
しばらく泣いて、
再度、澪とのトークルームBをすべて見直した。
そして、今度は自分のスマホを取り出して、
1年前の崇夫に、最初のLINEの返信をした。
💬 わたしも愛してる💗
でね、崇夫。
このトークルームBは、こっちの未来とつながってるよ。
澪のも、わたしのも、ちゃんとつながってるからね。
ウソじゃないから。
その証拠に、ヴァ、ヴァ、だから。
澪から、そう返信あるから、覚悟してね💗
それと、このLINEは、
そっちの恵美子にはぜったい内緒にしておいて。
ややこしくなるから。
じゃ、また、LINE待ってる😘
1年前の崇夫は、このLINEの返信と、
数日後に届いた澪からの返信で、
未来とつながったトークルームBを確信した。
翌朝も、澪は機嫌が悪かった。
しかし、数日後の夕方、
恵美子が帰宅し、
「ただいまぁ」と言うと、
「ママ、おかえりー」と上機嫌で恵美子を迎えた。
恵美子は靴を脱ぎながら、
(崇夫とつながったな)と確信した。
恵美子と澪は、たまに喧嘩した。
しかし、決まって澪の方から、
「ごめんなさい。わたし、言い過ぎた」と仲直りのきっかけをつくった。
恵美子は思い当たる、
崇夫と澪とのトークルームBを見返して、
そのつど1年前の崇夫に感謝のLINEを入れた。
現在と1年前とのLINEやりとりが3ヶ月ほど続いたある日。
夕食後のリビング。
ソファで2人いっしょにテレビを観ていると、
澪が唐突に言った。
「ねぇ、ママ。わたし、看護師をめざすことにした」
恵美子は、心の中で(きたー!)と思った。
恵美子は努めて冷静に、
「どうして?」と訊ねると、
澪が恵美子に顔を向け、
「担当してくれてた阿部さん」
「うん。まりあさんね」
「そう。ダジャレネームの[あべまりあ]さん」
「失礼だから、やめなさい」
「いつも優しくて、手際も良くって、カッコよかったでしょ」
「うん。わたしとパパ、よく叱られた」
「そうなの? まりあさんに?」
「うん。うるさいって。ほかの患者さんの迷惑だって」
「やっぱり、カッコいいなぁ」
「で、看護師の夢は、もう決定?」
「そう。だから、もうパパにも ……」
ハッとした表情になった澪は、
慌てて仏壇を指差して、
「…… パパにも伝えた。こないだ」
(笑える。澪、ドギマギしてるじゃん)
「それで、パパはOKだって?」
「写真のパパが、OKの顔してるじゃん」
(バレてんだぞ、澪。崇夫のOKも知ってんだぞ)
恵美子がニヤニヤすると、
澪が、
「なに、その顔!」と苛立った。
「ううん、別に?」
「で、ママはOK?」
「OKに決まってるじゃん。澪を応援する」
「ありがとう、ママ」
恵美子が澪を指差し、笑顔で言った。
「全力応援するから、ぜったい裏切んなよ」
「ママこそ、途中で応援やめるの、ぜったい禁止だからね」
澪がそう言い返すと、
恵美子は敬礼のフリをした。
「はい! ギルベルト少佐!」
「なに、それ。そんなシーンないし」
澪は席を立ち、仏壇の前に行った。
恵美子はリモコンを手に取り、テレビの電源をオフにした。
仏壇の前に正座した澪。
崇夫の遺影に向かって、
「いま、ママからOKいただきました」
そう報告し、こんどは正座したまま角度を変えて、
恵美子の方を向いた。
そして頭を深く下げた。
「応援してください。これからもよろしくお願いします」
恵美子は小さく優しく言った。
「はい。がんばってください」
さらに2ヶ月ほど過ぎたとき、
「ただいまぁ」
仕事から帰宅した恵美子。
待ち構えるように澪が玄関ホールに立っていた。
「おかえり、ママ」
「澪、どうしたの? その顔」
目を真っ赤にして、瞼も腫れている。
「わたし、余計なことを。どうしよう、ママ」
恵美子は、咄嗟に気づいた。
(アレだ。1年前の崇夫から、あの返信が来たんだ)
💬 そっか、あと1ヶ月で、パパ死んじゃうのか。
じゃあ、それまでの間、いっぱい会話しないとね。
澪、教えてくれて、ありがとうね💗
恵美子は、
「あとでちゃんと話を聴くから」
靴を脱ぎ、
「お願い。ひとまず着替えさせて」
廊下を歩きながら、
「リビングで待ってて」
そう澪に伝えた。
着替え終えた恵美子がリビングに行くと、
澪は仏壇の前で正座していた。
恵美子は腰を屈めて近づき、同じように正座した。
すると、澪は恵美子にしがみつき、
泣きながら、内緒にしていたLINEのことを告白した。
一部始終を話した澪。
恵美子はすべて知っていたが、
あえて澪にこう言った。
「話してくれて、ありがとうね、澪」
「ママはね。あなたの様子がおかしいと、ずっと思ってた」
「誰かとのLINEをスクロールしながら見ていることがよくあった」
「たぶん、あのニセモノのパパに違いないと思ってた」
澪は黙ったまま、首を横に振った。
「あなた、それしてるとき、いつも楽しそうだった」
「そろそろ、ちゃんと止めさせないといけない。ママはそう思ってた」
「ねぇ、澪。それ、ママに見せてくれる?」
澪は恵美子にスマホを渡した。
いったん収まっていた涙だったが、
また澪はボロボロと泣き始めた。
恵美子は、
澪と崇夫のトークルームを開き、
💬 澪、元気か?
1年前の崇夫から届いたこのメッセージまで遡った。
崇夫側からは見慣れたトークルームだったが、
澪側から見ると、景色がぜんぜん違って見えた。
スクロールしながら、
澪の気持ちが、はっきり伝わってきた。
怒ってるとき、嬉しいとき、つらいとき、悲しいとき、
まるで澪と自分が重なる感覚になった。
崇夫の愛情も、直接伝わってくる。
すべて見た。
💬 ごめんなさい わたし余計なこと いっちゃったみたい
わたし イヤだ もっともっと パパとLINEしたいよ
ここまで、すべて見た。
澪の前では、
このLINEの崇夫を、
ニセモノのパパとして扱わなくてはいけないのに、
ついクチが滑ってしまった。
つい本音が漏れてしまった。
「…… パパ」とつぶやき、
「…… 崇夫、本当にいままでありがとうね」
恵美子は、涙をボトボト落としながら、
泣き続けている澪を抱き寄せ、しばらく2人で泣いた。
そして、この1週間後、
1年前の崇夫からラストメッセージが届く。
1年前の恵美子が、
崇夫からのメモをそのまま打ったLINEが届く。
💬 澪、これが最後のLINEになると思う。
澪、看護師になる夢、かなえなさい。
澪ならなれるし、
パパは天国と澪のそばを行き来するから、安心しなさい。
澪、夢に向かって、頑張れ!
パパはこれからもずっと応援している。
そしてこれからもずっと、愛してるよ💗
しかし、
このラストメッセージが届いているはずなのに、
澪から恵美子への報告は一切なかった。
恵美子はもちろん知っている。
💬 ねぇ パパ?
最後なの? もうLINEくれないの?
ずっとわたしも愛してる💗
だから ねぇ パパ LINEして!
💬 ねぇ パパ LINEしてよ
💬 ねぇ パパ お願い
💬 パパ お願いします
💬 お願いします 澪
この澪のせつない叫びを知っている。
しかし、恵美子は、
「返信きたの?」と訊ねたりはしなかった。
澪からの報告があるまで待つことにした。
結局、澪は、崇夫とのLINEについて、
それ以降、何も言わなくなった。
辛く苦しいはずなのに、そんな様子を微塵も見せず、
これまでと変わらず、元気で陽気で、
たまに泣く澪のままで居続けた。
むしろ、澪は逞しくなった。
中学3年生になった澪は、
7月の三者面談の際、担任の先生に、
とある高校のパンフレットを見せながら、
「わたしはこの5年一貫の私立の看護高校に行きます」
「この看護高校で、最短5年で正看護師をめざします」
「公立高校から大学だと7年間。公立高校から専門学校だと6年間」
「この高校なら最短5年でめざせます。学費もお得です」
「高校から大学の場合、合計約700万。高校から専門は合計約400万」
「この高校なら約300万。県の助成金利用でさらに安くなります」
一気に捲し立てた澪に、
担任の先生も、恵美子も、圧倒された。
その後、澪は、
その5年一貫の看護高校に進学した。
話は少し遡って、
恵美子は、澪と抱き合って泣いたその日の夜、
崇夫にLINEを送っていた。
💬 澪へのLINEは、
そっちの恵美子に頼んだら、送ってくれる。
上手に頼んであげてね。
いまのわたしは、どんな頼まれ方をしたのか知ってるけど、
1年前のそっちに変な影響及ぼすと、
なにか良くないことが起こるかも、なので、
しっかり考えて、そっちの恵美子に頼んであげて。
ヒントだけなら大丈夫かな?
メモを渡す。さらにもう1つメモを渡す。これがヒント。
それから、このメッセージを読んだら、
このトークルームBは、完全に消してください。
じゃないと、のちのち、
そっちの恵美子が発見しちゃったら、大変だから。
でね。
これが、わたしからの最後のLINEだから、言わせて。
崇夫。
澪のこと、いままで本当にありがとう。
わたしとのこのLINEも、付き合ってくれて本当にありがとう。
このLINEは、1年後のこっちで、ずっと大事にするね。
ダメだ、わたし。
涙が止まらないや。ぜんぜん止まらないや。
ねぇ、もっと、LINEしたい。
もっと、つづけたい。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
えーい、もう!
愛してる💗 チュ!😘 だ!
崇夫のバカ!
そして、
令和◯年3月◯日、
看護師国家試験の合格発表日を迎えた。
合格者は、午後2時に厚生労働省のサイト内のページに、
受験地および受験番号が掲載される。
リビングのソファに、
恵美子と澪は並んで座り、
午後2時を待って、ノートPCからサイトにアクセスした。
澪の受験番号はあった。
看護師国家試験に見事合格した澪に、
恵美子は言った。
「澪、おめでとう」
「うん」
澪は涙ぐみながら、
「ありがとう、ママ」と応えた。
「さぁ、パパに報告しようか」と恵美子。
澪は笑顔でうなずき、
ノートPCを持って、仏壇の前に移動した。
画面を見せながら、
「…… パパ。…… ご報告です」
「わたし、澪は、見事に合格いたしました」
そのとき、
リビングのソファの上に置いてあった澪のスマホが鳴った。
チン ♪ コン ♪(LINEの通知音)
恵美子は、
ソファの上の澪のスマホを手に取り、
仏壇の方へと移動した。
澪に「見てごらん」と言って、
スマホを手渡した。
澪と崇夫のトークルームに、
6年ぶりのメッセージが届いていた。
💬 澪、合格おめでとう💗
澪は驚いた。
「えっ? どうして? ママ、どういうこと?」
恵美子はニッコリ笑って、スマホを2つ取り出した。
「こっちがわたしの」
「こっちがパパのスマホ」
「まさか、ママ、ずっとわたしをダマしてたの?」
恵美子は首を横に振った。
「ダマしてなんかない」
「さっきのLINEは、わたしがこのパパのスマホから送ったの」
「その[合格おめでとう]は、パパから頼まれていたやつ」
澪は困惑した。
「ママ。ごめん。ぜんぜん意味が分かんない」
「6年前のLINEは、間違いなく、パパなの」
「わたしが大好きな、崇夫本人なんだよ」
「ねぇ、ママ、説明して」
「ちょっと待って。わたしもパパに報告させて」
恵美子は、澪の隣に正座した。
そして飾ってある遺影に向かって、
「約束のLINE、いま、ちゃんと送りました」
「タイミングは、これで良かった? まぁまぁじゃない?」
「ねぇ、崇夫」
「いままでありがとう」
「澪のこと、いままで本当にありがとう」
「これからも、澪のこと、見守ってあげてください」
そう言い終えると、
手を合わせて、目を閉じ、礼拝した。
そのあと恵美子は、
長い時間をかけて、澪に一部始終を話した。
「パパも、ママも、いじわるすぎない?」
「ダマしてはないけど、ずっと黙ってたわけじゃん!」
「パパはしょうがないけど」
「ママは違うじゃん!」
「教えてくれても、良かったんじゃない?」
「だって、わたし、すごく辛かったんだよ」
澪は下唇を噛んだ。
「パパからのLINEが来なくなって」
澪は泣き始めた。
「そのあと何度もLINEしたけど、パパからはもう来なくて」
「誰にも言えなくてさ」
「ママにも言えなくてさ」
「ひとりで堪えて、ひとりで泣いて」
澪が声を上げて泣き出した。
「うあぁーん! ママのバカ!」
そう言い放って、自分の部屋に飛び込んでいった。
30分ほど経って、
目を真っ赤にした澪が部屋から出てきた。
キッチンで夕食の準備をし始めていた恵美子に、
「ママ」と声をかけた。
「さっきは言い過ぎました。ごめんなさい」
恵美子も謝った。
「ずっと言えなくて、ごめんね、澪」
「崇夫との約束だったから」
「うん」
「澪に崇夫からのプレゼントがある」
「えっ?」
「ちょっと待ってて」
恵美子が自室に行って、すぐに戻ってきた。
「はい、これ」
澪に2枚のメモを渡した。
それは、
澪に送るLINEメッセージのために、
崇夫が手書きした2枚のメモだった。
澪は受け取るや否や、
「字、汚!」と言った。
「でも、すごく嬉しい」と笑顔になった澪。
「ねぇ、ママ。わたしね、この1文、好きなの」
「どの1文?」と恵美子。
澪が恵美子に、
手書きのメモを見せながら、指でなぞった。
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パパは天国と澪のそばを行き来するから、安心しなさい。
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「わたしね。この1文に、すごく勇気づけられてた」
「なんだか、ずっと見守ってくれてる気がしてて」
「ほんとにわたしのそばに来てるか、分かんないけどね」
そのとき、
チコココ コココン ♪ チコココ コココン ♪ チコココ コココン ♪
澪のスマホに、LINEの着信が来た。
「えっ!」
恵美子は澪の顔を見て、
「まさか、崇夫?」
澪はすぐに否定した。
「違う、違う。まりあさん、まりあさん」
「はい、澪です」
「わざわざ、すみません。お電話いただいて」
「はい、LINEした通りです」
「はい、ちゃんと合格しました」
「はい、ありがとうございます」
「いえいえ」
「じゃあ、こんど、飲みに連れていってください」
「はい。ではでは、失礼します」
澪がLINE電話を終えると、
恵美子が言った。
「びっくりしたじゃん」
「いまのタイミングは、どう考えたって崇夫でしょ」
澪が「ママっ」と軽く叱った。
そのとき、
ガタタタン!
仏壇に飾ってあった崇夫の遺影が床に落ちた。
「えっ?」と澪。
「あのアピールが崇夫かもね?」と恵美子。
澪は、仏壇のところに行き、
崇夫の遺影を、仏壇に置き直した。
そして遺影を眺めて、感謝の言葉を述べた。
「パパ。いつもそばにいてくれて、ありがとうございます」
~ 第3章:恵美子 / おしまい ~
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以上、やたらと長いプロットでした。
第3章なんて、しっかり書けば、ちょっとした短編。
ここに、自分のメモにあった「17歳のノルマ」から着想を得た、
澪&看護師(阿部まりあ)のエピソードを追加する予定です。
猛スピードで書き切ったので、おそらく誤字脱字もあります。
いずれ、ゆっくり手直ししながら、訂正するつもりです。
このプロットを元にして、
ご自身で「小説を書きたい!」という方には、
1,000万円で販売します。(ウソです)
でも、パクらないでくださいね。(著作権あるので)
てか、どっかのテレビ局さんで、連続ドラマ化してくれないかなぁ~。
なんてことも、考えちゃったりなんかして。
その場合は、澪と幼なじみの男子を登場させて、
恋愛要素を加えないと、いまどきのテレビ局さんは、ね。
ま、そんなことはさておき、
今回の記事でお伝えしたいことは、
前回「#022 アイツは突然やってくる②」とまったく同じです。
ストーリーをひらめいてしまったら、
覚え書きでもいい。プロットでもいい。
プロットは短くてもいい。長くなってもいい。
とにかく逃げずに書き切る。
ということです。
[告知]
とても売れているようなので、
この本を買いました。
~ 5月中に読後の感想を記事にします ~
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