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#023 アイツは突然やってくる③

拝啓 ひらめいてしまった方へ


前回「#022 アイツは突然やってくる②」のつづきです。
※プロット[パパとのLINE(仮)/ 第3章:恵美子えみこ]です。
 ちなみに、長いです。めっちゃ長いです。ごめんなさい。
 時間に余裕のあるとき、お読みください。…… ホントごめんなさい。


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■コンセプト(メッセージ)
「見守ってくれるひとは、いつもそばにいます」
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~ タイトル:パパとのLINE(仮) ~

■第3章:恵美子えみこ
仕事帰り、路肩ろかたに停車させた車の中で、
恵美子えみこはたくさん泣いた。
しかし、いまは真剣な顔でスマホを見ていた。
落とした視線は、1年前の崇夫たかおから届いたLINE。

 💬 恵美子、元気か?

  つか、愛してるよ💗

恵美子えみこは、1年前のことを思い出しながら、考えていた。
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あのときのテスト配信に、みおは返信した。
たしか質問攻めの返信だった。
家に着いたら、崇夫たかおのスマホを確認しよう。
みおには届いていないかも?  いや、届いてる。
すでにLINEのやりとりが始まってるかもしれない。
たしか、あのトークルームBで、
みおは[ママには内緒のLINE]って書いてた。
いまのリアルみお崇夫たかおのLINEに関わっちゃいけない。
関わると、過去が変わって、良くないことが起きるかもしれない。
せっかくのLINEのやりとりが、もうできなくなるかもしれない。
わたしに届いた崇夫たかおからのLINE、
こっちは、じっくり考えてから返信すればいい。
まずはみおへの対応が最優先。
とにかく、家に帰ったら、
いのいちばんに崇夫たかおのスマホを確認しよう。
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恵美子えみこは、スマホをバッグの中に入れ、
ハンドミラーを取り出し、顔をうつした。
つぎにバッグからウェットティッシュを取り出して、
化粧崩れの箇所をやさしくたたいた。
「まぁ、なんとか、ごまかせる」
そして、
ハンドミラーとウェットティッシュをバッグに仕舞しまった。
「よし!」と気合いを入れて、
パーキングブレーキを戻し、ハザードランプを切って、
混み始めた県道を自宅へと向かった。

玄関前の恵美子えみこ
深呼吸を1回して、鍵穴にキーを差し込んだ。

「ただいま」
玄関ドアを開けるやいなや、
みおけ寄ってきた。
LINEのトークルーム画面を見せながら、
「ママ! これ見て!」

(かなり興奮しているみたいだ)
(おかえりも言い忘れてる)
(あのテスト配信、やっぱりみおにも届いてる)
恵美子えみこは確信し、
(いまはまず、崇夫たかおのスマホを確認しないと)
不機嫌ふきげんなママをよそおい、
「ちょっと、あとにしてほしい」 そう言いながら靴を脱いだ。
(ごめん、みお。マジで、ごめん。演技だからね)
足早あしばやに廊下を進んで、
以前までは夫婦の寝室だった自室に入った。

サイドボードの抽斗ひきだしから、
崇夫たかおのスマホを取り出し、アダプタにつなげ、コンセントに差し、
スマホを起動させた。※画面ロックは(入院中に)無効設定済み

早速、LINEのアイコンをタップ、
つづけてみおとのトークルームBをタップし、
先頭(いちばん最初)のメッセージまで一気にスクロールした。

 💬 澪、元気か?

         💬 どなたですか?  パパですか?
          間違いですか?  いやがらせですか?
          どうしてわたしに 送ってきたんですか?
          パパはいま天国にいますよ やめてください

 💬 正真正銘、澪のパパだよ。
  アニメ「バイオレットエバーガーデン」、
  澪・ママ・パパ、3人で見て、みんなで泣いた。
  どうかな? パパって信じてくれる?

         💬 パパだ 本物だ なんだかよく分かんないけど
          元気ですか?  天国で元気してますか?
          澪は元気に生きてますよ~ 
          やったー! 天国のパパとLINEできる~
          あとね ヴァ ヴァだから
          ヴァイオレット・エヴァーガーデン 間違わないでね

1年前の崇夫たかおとリアルみおの[この微笑ましいやりとり]に、
恵美子えみこは、つい笑ってしまった。
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ダメ、ダメ。笑ってる場合じゃない。
やりとりすべての確認は、就寝前にするとして、
たぶんみおは、このあとわたしが部屋を出たら、
さっきのつづき、崇夫たかおからのLINEについて報告してくる。

 💬 どなたですか?  パパですか?
  間違いですか?  いやがらせですか?
  どうしてわたしに 送ってきたんですか?
  パパはいま天国にいますよ やめてください

この猜疑心さいぎしんと怒りの混じった返信をさせるために、
わたしはなんて言えばいい?  どんな対応すればいい?
………… なるほど。
そういうことか。
ニセモノの崇夫たかおからLINEが来たら、
わたしはどう言うか、どう対応するか。…… それを実践すればいい。
あとはみおが勝手に動き出す。
止めてもきっと返信する。きっとわたしに内緒で返信する。
あとはみおゆだねよう。
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アダプタをコンセントから抜いて、
崇夫たかおのスマホをもう一度、
サイドボードの抽斗ひきだしのなかに仕舞しまった。
そして、急いで部屋着に着替えた。

リビングに向かうと、
「ママ、これ見て」とみお
恵美子えみこの顔にスマホを近づけ、
「パパからさっき、LINEきた」と言った。
「パパからLINE?  なに言ってるの?」
「だって、ママ。これ見て」
恵美子えみこは、LINEのトークルームを見た。

💬 澪、元気か?

「でしょ?  これ、パパだよね?」
「迷惑メッセージじゃん。ぜったい返信なんかしちゃダメよ」
「だって送信者、パパだよ。[たかお]になってる」

恵美子えみこは、
リビングのすみにある仏壇ぶつだんを指差して、
「ねぇ、みお。…… パパは去年、亡くなってるんだよ」

みおは、
真新まあたらしい仏壇ぶつだんに飾ってある、
崇夫たかお遺影いえいをちらっと見て、
下唇したくちびるみ、
憤然ふんぜんとした顔で、自室へと向かった。
恵美子えみこの顔も見ずに、
「晩ご飯、いらない」  そう言って、自室に入っていった。
そのすぐあと、
みおの部屋から、なにかモノを投げつける音が聞こえた。

恵美子えみこは、思った。
みおは怒ってる)
(おそらくその怒りのまま、LINEの返信をするに違いない)
(ごめんね、みお
(あとは、あなた次第。…… 頼むよ、みお

その夜、恵美子えみこは、
就寝前に崇夫たかおのスマホを確認した。
崇夫たかお恵美子えみこのトークルームは1つだけだった。
みおにはあるトークルームBはなかった。
恵美子えみこは、思った。
崇夫たかおが消したんだ)
恵美子えみこは、1年前を振り返った。

崇夫たかお恵美子えみこに、
みおとのトークルームBを見せるとき、
必ずトークルームBを開いた状態だった。
トーク一覧いちらんを見せたのは、最初だけ。
みおから最初の返信LINEが来たときだけだった。
それ以降、崇夫たかお恵美子えみこに、
トーク一覧いちらんを見せなかった。
恵美子えみこは、思った。
崇夫たかおは、わたしに隠してたんだ)

実は、1年前、崇夫たかおは早い段階から気づいていた。
アプリ「ミライン(未来のひととLINEであそぼう)」が、
ごっこ遊びじゃなく、未来のみおとLINEができていることに、
そして未来の恵美子えみこともLINEができていることに。
このことに気づいたきっかけは、
未来の恵美子えみこが最初に返信したLINEにあった。

みおとのトークルームBを見直しながら、
微笑ましい崇夫たかおみおのやりとりに、
恵美子えみこはとても幸せな気分になっていた。
トークルームBの、
恵美子えみこ崇夫たかおの代わりに打った
最後のメッセージに辿たどり着いたそのとき、

チコン ♪ チコン ♪ チコン ♪ チコン ♪ チコン ♪
立てつづけに、LINEが入った。

 💬 ねぇ パパ?
  最後なの?  もうLINEくれないの?
  ずっとわたしも愛してる💗
  だから ねぇ パパ LINEして!

 💬 ねぇ パパ LINEしてよ

 💬 ねぇ パパ お願い

 💬 パパ お願いします

 💬 お願いします 澪

いまさら届いたみおのせつないさけびに、
恵美子えみこは、きょう、2度目の号泣をした。

しばらく泣いて、
再度、みおとのトークルームBをすべて見直した。

そして、今度は自分のスマホを取り出して、
1年前の崇夫たかおに、最初のLINEの返信をした。

 💬 わたしも愛してる💗
  でね、崇夫。
  このトークルームBは、こっちの未来とつながってるよ。
  澪のも、わたしのも、ちゃんとつながってるからね。
  ウソじゃないから。
  その証拠に、ヴァ、ヴァ、だから。
  澪から、そう返信あるから、覚悟してね💗
  それと、このLINEは、
  そっちの恵美子にはぜったい内緒にしておいて。
  ややこしくなるから。
  じゃ、また、LINE待ってる😘

1年前の崇夫たかおは、このLINEの返信と、
数日後に届いたみおからの返信で、
未来とつながったトークルームBを確信した。


翌朝も、みお機嫌きげんが悪かった。
しかし、数日後の夕方、
恵美子えみこが帰宅し、
「ただいまぁ」と言うと、
「ママ、おかえりー」と上機嫌じょうきげん恵美子えみこを迎えた。
恵美子えみこは靴を脱ぎながら、
崇夫たかおとつながったな)と確信した。

恵美子えみこみおは、たまに喧嘩けんかした。
しかし、決まってみおの方から、
「ごめんなさい。わたし、言い過ぎた」と仲直りのきっかけをつくった。
恵美子えみこは思い当たる、
崇夫たかおみおとのトークルームBを見返して、
そのつど1年前の崇夫たかおに感謝のLINEを入れた。

現在と1年前とのLINEやりとりが3ヶ月ほど続いたある日。
夕食後のリビング。
ソファで2人いっしょにテレビをていると、
みお唐突とうとつに言った。
「ねぇ、ママ。わたし、看護師をめざすことにした」
恵美子えみこは、心の中で(きたー!)と思った。
恵美子えみこつとめて冷静に、
「どうして?」とたずねると、
みお恵美子えみこに顔を向け、
「担当してくれてた阿部あべさん」
「うん。まりあさんね」
「そう。ダジャレネームの[あべまりあ]さん」
「失礼だから、やめなさい」
「いつも優しくて、手際てぎわも良くって、カッコよかったでしょ」
「うん。わたしとパパ、よくしかられた」
「そうなの?  まりあさんに?」
「うん。うるさいって。ほかの患者さんの迷惑だって」
「やっぱり、カッコいいなぁ」
「で、看護師の夢は、もう決定?」
「そう。だから、もうパパにも ……」
ハッとした表情になったみおは、
あわてて仏壇ぶつだんを指差して、
「…… パパにも伝えた。こないだ」
(笑える。みお、ドギマギしてるじゃん)
「それで、パパはOKだって?」
「写真のパパが、OKの顔してるじゃん」
(バレてんだぞ、みお崇夫たかおのOKも知ってんだぞ)
恵美子えみこがニヤニヤすると、
みおが、
「なに、その顔!」と苛立いらだった。
「ううん、別に?」
「で、ママはOK?」
「OKに決まってるじゃん。みおを応援する」
「ありがとう、ママ」
恵美子えみこみおを指差し、笑顔で言った。
「全力応援するから、ぜったい裏切うらぎんなよ」
「ママこそ、途中で応援やめるの、ぜったい禁止だからね」
みおがそう言い返すと、
恵美子えみこ敬礼けいれいのフリをした。
「はい! ギルベルト少佐!」
「なに、それ。そんなシーンないし」

みおは席を立ち、仏壇ぶつだんの前に行った。
恵美子えみこはリモコンを手に取り、テレビの電源をオフにした。

仏壇ぶつだんの前に正座したみお
崇夫たかお遺影いえいに向かって、
「いま、ママからOKいただきました」
そう報告し、こんどは正座したまま角度を変えて、
恵美子えみこの方を向いた。
そして頭を深く下げた。
「応援してください。これからもよろしくお願いします」
恵美子えみこは小さく優しく言った。
「はい。がんばってください」

さらに2ヶ月ほど過ぎたとき、
「ただいまぁ」
仕事から帰宅した恵美子えみこ
待ち構えるようにみおが玄関ホールに立っていた。
「おかえり、ママ」
みお、どうしたの?  その顔」
目を真っ赤にして、まぶたれている。
「わたし、余計なことを。どうしよう、ママ」
恵美子えみこは、咄嗟とっさに気づいた。
(アレだ。1年前の崇夫たかおから、あの返信が来たんだ)

 💬 そっか、あと1ヶ月で、パパ死んじゃうのか。
  じゃあ、それまでの間、いっぱい会話しないとね。
  澪、教えてくれて、ありがとうね💗

恵美子えみこは、
「あとでちゃんと話をくから」
靴を脱ぎ、
「お願い。ひとまず着替えさせて」
廊下を歩きながら、
「リビングで待ってて」
そうみおに伝えた。

着替え終えた恵美子えみこがリビングに行くと、
みお仏壇ぶつだんの前で正座していた。
恵美子えみこは腰をかがめて近づき、同じように正座した。
すると、みお恵美子えみこにしがみつき、
泣きながら、内緒にしていたLINEのことを告白した。

一部始終を話したみお
恵美子えみこはすべて知っていたが、
あえてみおにこう言った。
「話してくれて、ありがとうね、みお
「ママはね。あなたの様子がおかしいと、ずっと思ってた」
「誰かとのLINEをスクロールしながら見ていることがよくあった」
「たぶん、あのニセモノのパパに違いないと思ってた」
みおは黙ったまま、首を横に振った。
「あなた、それしてるとき、いつも楽しそうだった」
「そろそろ、ちゃんとめさせないといけない。ママはそう思ってた」
「ねぇ、みお。それ、ママに見せてくれる?」
みお恵美子えみこにスマホを渡した。
いったんおさまっていた涙だったが、
またみおはボロボロと泣き始めた。

恵美子えみこは、
みお崇夫たかおのトークルームを開き、

💬 澪、元気か?

1年前の崇夫たかおから届いたこのメッセージまでさかのぼった。
崇夫たかお側からは見慣れたトークルームだったが、
みお側から見ると、景色がぜんぜん違って見えた。
スクロールしながら、
みおの気持ちが、はっきり伝わってきた。
怒ってるとき、嬉しいとき、つらいとき、悲しいとき、
まるでみおと自分が重なる感覚になった。
崇夫たかおの愛情も、直接伝わってくる。

すべて見た。

 💬 ごめんなさい わたし余計なこと いっちゃったみたい
  わたし イヤだ もっともっと パパとLINEしたいよ

ここまで、すべて見た。

みおの前では、
このLINEの崇夫たかおを、
ニセモノのパパとして扱わなくてはいけないのに、
ついクチがすべってしまった。
つい本音がれてしまった。

「…… パパ」とつぶやき、
「…… 崇夫たかお、本当にいままでありがとうね」
恵美子えみこは、涙をボトボト落としながら、
泣き続けているみおを抱き寄せ、しばらく2人で泣いた。

そして、この1週間後、
1年前の崇夫たかおからラストメッセージが届く。
1年前の恵美子えみこが、
崇夫たかおからのメモをそのまま打ったLINEが届く。

 💬 澪、これが最後のLINEになると思う。
  澪、看護師になる夢、かなえなさい。
  澪ならなれるし、
  パパは天国と澪のそばを行き来するから、安心しなさい。
  澪、夢に向かって、頑張れ!
  パパはこれからもずっと応援している。
  そしてこれからもずっと、愛してるよ💗

しかし、
このラストメッセージが届いているはずなのに、
みおから恵美子えみこへの報告は一切いっさいなかった。

恵美子えみこはもちろん知っている。

 💬 ねぇ パパ?
  最後なの?  もうLINEくれないの?
  ずっとわたしも愛してる💗
  だから ねぇ パパ LINEして!

 💬 ねぇ パパ LINEしてよ

 💬 ねぇ パパ お願い

 💬 パパ お願いします

 💬 お願いします 澪

このみおのせつないさけびを知っている。
しかし、恵美子えみこは、
「返信きたの?」とたずねたりはしなかった。
みおからの報告があるまで待つことにした。

結局、みおは、崇夫たかおとのLINEについて、
それ以降、何も言わなくなった。
つらく苦しいはずなのに、そんな様子を微塵みじんも見せず、
これまでと変わらず、元気で陽気で、
たまに泣くみおのままで居続いつづけた。
むしろ、みおたくましくなった。

中学3年生になったみおは、
7月の三者面談の際、担任の先生に、
とある高校のパンフレットを見せながら、
「わたしはこの5年一貫いっかんの私立の看護高校に行きます」
「この看護高校で、最短5年で正看護師をめざします」
「公立高校から大学だと7年間。公立高校から専門学校だと6年間」
「この高校なら最短5年でめざせます。学費もお得です」
「高校から大学の場合、合計約700万。高校から専門は合計約400万」
「この高校なら約300万。県の助成金利用でさらに安くなります」
一気にまくてたみおに、
担任の先生も、恵美子えみこも、圧倒された。

その後、みおは、
その5年一貫いっかんの看護高校に進学した。


話は少しさかのぼって、
恵美子えみこは、みおと抱き合って泣いたその日の夜、
崇夫たかおにLINEを送っていた。


 💬 澪へのLINEは、
  そっちの恵美子に頼んだら、送ってくれる。
  上手に頼んであげてね。
  いまのわたしは、どんな頼まれ方をしたのか知ってるけど、
  1年前のそっちに変な影響及ぼすと、
  なにか良くないことが起こるかも、なので、
  しっかり考えて、そっちの恵美子に頼んであげて。
  ヒントだけなら大丈夫かな?
  メモを渡す。さらにもう1つメモを渡す。これがヒント。
  それから、このメッセージを読んだら、
  このトークルームBは、完全に消してください。
  じゃないと、のちのち、
  そっちの恵美子が発見しちゃったら、大変だから。
  でね。
  これが、わたしからの最後のLINEだから、言わせて。
  
  崇夫。
  澪のこと、いままで本当にありがとう。
  わたしとのこのLINEも、付き合ってくれて本当にありがとう。
  このLINEは、1年後のこっちで、ずっと大事にするね。
  
  ダメだ、わたし。
  涙が止まらないや。ぜんぜん止まらないや。
  ねぇ、もっと、LINEしたい。
  もっと、つづけたい。

  どうしよう。どうしよう。どうしよう。

  えーい、もう!
  
  愛してる💗 チュ!😘 だ!

  崇夫のバカ!



そして、
令和◯年3月◯日、
看護師国家試験の合格発表日を迎えた。

合格者は、午後2時に厚生労働省のサイト内のページに、
受験地および受験番号が掲載される。

リビングのソファに、
恵美子えみこみおは並んで座り、
午後2時を待って、ノートPCからサイトにアクセスした。

みおの受験番号はあった。

看護師国家試験に見事合格したみおに、
恵美子えみこは言った。
みお、おめでとう」
「うん」
みおは涙ぐみながら、
「ありがとう、ママ」とこたえた。
「さぁ、パパに報告しようか」と恵美子えみこ
みおは笑顔でうなずき、
ノートPCを持って、仏壇ぶつだんの前に移動した。
画面を見せながら、
「…… パパ。…… ご報告です」
「わたし、みおは、見事に合格いたしました」

そのとき、
リビングのソファの上に置いてあったみおのスマホが鳴った。

チン ♪ コン ♪(LINEの通知音)

恵美子えみこは、
ソファの上のみおのスマホを手に取り、
仏壇ぶつだんの方へと移動した。
みおに「見てごらん」と言って、
スマホを手渡した。

みお崇夫たかおのトークルームに、
6年ぶりのメッセージが届いていた。

💬 澪、合格おめでとう💗

みおは驚いた。
「えっ?  どうして?  ママ、どういうこと?」

恵美子えみこはニッコリ笑って、スマホを2つ取り出した。
「こっちがわたしの」
「こっちがパパのスマホ」
「まさか、ママ、ずっとわたしをダマしてたの?」
恵美子えみこは首を横に振った。
「ダマしてなんかない」
「さっきのLINEは、わたしがこのパパのスマホから送ったの」
「その[合格おめでとう]は、パパから頼まれていたやつ」
みお困惑こんわくした。
「ママ。ごめん。ぜんぜん意味が分かんない」

「6年前のLINEは、間違いなく、パパなの」
「わたしが大好きな、崇夫たかお本人なんだよ」

「ねぇ、ママ、説明して」
「ちょっと待って。わたしもパパに報告させて」

恵美子えみこは、みおの隣に正座した。
そして飾ってある遺影いえいに向かって、
「約束のLINE、いま、ちゃんと送りました」
「タイミングは、これで良かった?  まぁまぁじゃない?」
「ねぇ、崇夫たかお
「いままでありがとう」
みおのこと、いままで本当にありがとう」
「これからも、みおのこと、見守ってあげてください」
そう言い終えると、
手を合わせて、目を閉じ、礼拝らいはいした。

そのあと恵美子えみこは、
長い時間をかけて、みおに一部始終を話した。

「パパも、ママも、いじわるすぎない?」
「ダマしてはないけど、ずっと黙ってたわけじゃん!」
「パパはしょうがないけど」
「ママは違うじゃん!」
「教えてくれても、良かったんじゃない?」
「だって、わたし、すごくつらかったんだよ」
みお下唇したくちびるんだ。
「パパからのLINEが来なくなって」
みおは泣き始めた。
「そのあと何度もLINEしたけど、パパからはもう来なくて」
「誰にも言えなくてさ」
「ママにも言えなくてさ」
「ひとりでえて、ひとりで泣いて」
みおが声を上げて泣き出した。
「うあぁーん!  ママのバカ!」
そう言い放って、自分の部屋に飛び込んでいった。

30分ほどって、
目を真っ赤にしたみおが部屋から出てきた。

キッチンで夕食の準備をし始めていた恵美子えみこに、
「ママ」と声をかけた。
「さっきは言い過ぎました。ごめんなさい」
恵美子えみこも謝った。
「ずっと言えなくて、ごめんね、みお
崇夫たかおとの約束だったから」
「うん」
みお崇夫たかおからのプレゼントがある」
「えっ?」
「ちょっと待ってて」
恵美子えみこが自室に行って、すぐに戻ってきた。
「はい、これ」
みおに2枚のメモを渡した。
それは、
みおに送るLINEメッセージのために、
崇夫たかおが手書きした2枚のメモだった。
みおは受け取るやいなや、
きたな!」と言った。
「でも、すごく嬉しい」と笑顔になったみお
「ねぇ、ママ。わたしね、この1文、好きなの」
「どの1文?」と恵美子えみこ
みお恵美子えみこに、
手書きのメモを見せながら、指でなぞった。
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パパは天国と澪のそばを行き来するから、安心しなさい。
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「わたしね。この1文に、すごく勇気づけられてた」
「なんだか、ずっと見守ってくれてる気がしてて」
「ほんとにわたしのそばに来てるか、分かんないけどね」

そのとき、

チコココ コココン ♪  チコココ コココン ♪  チコココ コココン ♪ 

みおのスマホに、LINEの着信が来た。

「えっ!」
恵美子えみこみおの顔を見て、
「まさか、崇夫たかお?」
みおはすぐに否定した。
「違う、違う。まりあさん、まりあさん」

「はい、みおです」
「わざわざ、すみません。お電話いただいて」
「はい、LINEした通りです」
「はい、ちゃんと合格しました」
「はい、ありがとうございます」
「いえいえ」
「じゃあ、こんど、飲みに連れていってください」
「はい。ではでは、失礼します」

みおがLINE電話を終えると、
恵美子えみこが言った。
「びっくりしたじゃん」
「いまのタイミングは、どう考えたって崇夫たかおでしょ」
みおが「ママっ」と軽くしかった。

そのとき、

ガタタタン!

仏壇ぶつだんに飾ってあった崇夫たかお遺影いえいが床に落ちた。

「えっ?」とみお
「あのアピールが崇夫たかおかもね?」と恵美子えみこ
みおは、仏壇ぶつだんのところに行き、
崇夫たかお遺影いえいを、仏壇ぶつだんに置き直した。
そして遺影いえいながめて、感謝の言葉をべた。

「パパ。いつもそばにいてくれて、ありがとうございます」


~ 第3章:恵美子えみこ / おしまい ~


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以上、やたらと長いプロットでした。
第3章なんて、しっかり書けば、ちょっとした短編。
ここに、自分のメモにあった「17歳のノルマ」から着想ちゃくそうを得た、
みお&看護師(阿部あべまりあ)のエピソードを追加する予定です。
もうスピードで書き切ったので、おそらく誤字脱字ごじだつじもあります。
いずれ、ゆっくり手直ししながら、訂正するつもりです。

このプロットを元にして、
ご自身で「小説を書きたい!」という方には、
1,000万円で販売します。(ウソです)
でも、パクらないでくださいね。(著作権あるので)

てか、どっかのテレビ局さんで、連続ドラマ化してくれないかなぁ~。
なんてことも、考えちゃったりなんかして。
その場合は、みおと幼なじみの男子を登場させて、
恋愛要素を加えないと、いまどきのテレビ局さんは、ね。

ま、そんなことはさておき、
今回の記事でお伝えしたいことは、
前回「#022 アイツは突然やってくる②」とまったく同じです。

ストーリーをひらめいてしまったら、
覚え書きでもいい。プロットでもいい。
プロットは短くてもいい。長くなってもいい。
とにかく逃げずに書き切る。

ということです。



[告知]
とても売れているようなので、
この本を買いました。
~ 5月中に読後の感想を記事にします ~



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