「各国の教育制度」わたしは比べる
アメリカ
アメリカの教育制度は多様性と地域性に富んでおり、各州によって大きく異なる特徴があります。以下にアメリカの教育制度についての主なポイントを説明します。
教育の構造
プリスクール (Preschool):
通常2歳から5歳までの幼児教育で、公立の場合は無償または低価格で提供されることが多く、私立のプリスクールもあります。
キンダーガーテン (Kindergarten):
5歳または6歳から始まり、1年間のプログラムです。多くの州で義務教育の一部とされています。
初等教育 (Elementary Education):
1年生から5年生または6年生まで(州によって異なる)。
中等教育 (Secondary Education):
中学校 (Middle School / Junior High School):
通常は6年生から8年生まで。州によって6-8年生または7-8年生の2年制もあります。
高等学校 (High School):
9年生から12年生まで。4年間で卒業します。
義務教育:
アメリカでは「K-12」システムが一般的で、キンダーガーテンから12年生までの13年間の教育が義務付けられています。
義務教育の開始年齢や終了年齢は州によって異なりますが、ほとんどの州で6歳から18歳までが義務教育期間です。
教育の地域性:
各州、そして各学区が教育制度やカリキュラムを設定します。これにより、教育内容やアプローチに大きな地域間差異が存在します。
学校区(School Districts)は地元の教育委員会によって管理され、学校の運営や教師の採用、予算などもここで決定されます。
教育の種類:
公立学校 (Public Schools):
最も一般的で、地域の住民の税金によって資金が提供されます。
私立学校 (Private Schools):
公立学校に比べて学費がかかりますが、宗教的、哲学的、教育方針に基づいた教育を提供します。
チャータースクール (Charter Schools):
公的資金を受けつつ、より自由なカリキュラムや教育方法を用いる学校です。
ホームスクーリング (Homeschooling):
家庭で教育を行う選択肢も広く受け入れられており、特定の規制の下で認められています。
教育制度の特徴:
単位制 (Credit System):
高校では大学のような単位制が採用されています。生徒は卒業のために必要な単位を取得する必要があります。
AP (Advanced Placement) や IB (International Baccalaureate):
大学レベルのコースを高校で受けることができ、大学の単位として認められる可能性があります。
ギフテッド教育 (Gifted Education):
特別な才能を持つ学生向けの教育プログラムがあり、飛び級や特別クラスが設けられることもあります。
特別支援教育:
アメリカでは障害のある子供たちに対する教育の提供が法的に義務付けられており、個別教育計画(IEP:Individualized Education Program)が作成されます。
高等教育:
大学進学率は高く、4年制大学およびコミュニティカレッジ(2年制)があります。コミュニティカレッジは職業訓練や大学への編入を目的としています。
イギリス
イギリスの教育制度は、その歴史や文化、そして政治的・地域的な違いに基づいて形成されています。以下にイギリスの教育制度の主要な特徴を説明します。
教育の構造:
早期教育 (Early Years Education):
幼稚園(Nursery):
通常3歳から4歳まで。
受け入れクラス(Reception class):
4歳から5歳で、正式な学校教育の開始点と見なされます。
初等教育 (Primary Education):
通常、5歳から11歳までの6年間で構成されます。キーストージ1(Key Stage 1, 5-7歳)とキーストージ2(Key Stage 2, 7-11歳)に分かれます。
中等教育 (Secondary Education):
11歳から16歳までの5年間が義務教育の最終段階で、キーストージ3(Key Stage 3, 11-14歳)とキーストージ4(Key Stage 4, 14-16歳)に分けられます。
GCSE:
16歳でGeneral Certificate of Secondary Education(GCSE)試験を受け、卒業証書を取得します。
第六形態教育 (Sixth Form Education) または ファーザーエデュケーション (Further Education):
16歳から18/19歳までで、Aレベル(A Levels)やBTECなどの資格を取得します。大学進学を目指す学生は通常Aレベルを選択します。
教育の種類:
国立学校 (State Schools):
ほとんどの児童生徒が通う学校で、地方自治体やアカデミートラストによって運営されます。学費は無料。
Community Schools:
地方自治体が完全に管理。
Academies:
政府の資金を受けつつ、より自由なカリキュラムを持つ学校。
Free Schools:
親や教師、慈善団体などが設立した、自治体から独立した学校。
Faith Schools:
宗教的背景を持つ学校で、特定の信仰に基づく教育を行っています。
私立学校 (Independent Schools):
学費を支払う必要があり、独立して運営される。イギリスのエリート教育の一部とされる。
Public Schools:
実際には私立学校を指す。Eton CollegeやHarrow Schoolなどが有名。
グラマースクール (Grammar Schools):
選抜試験(11+試験)に合格した生徒のみが通うことができるアカデミックな学校。
教育制度の特徴:
全人的教育:
イギリスの教育はアカデミックな学習だけでなく、社会性や倫理、スポーツ、芸術など全人的な発展を目指します。
国家カリキュラム:
各ステージごとに国家が定めたカリキュラムが存在し、学校はこれに沿って教育を提供します。
試験と評価:
GCSEやAレベル試験が重要な教育の節目であり、進路選択に大きな影響を与えます。
大学進学:
大学入学にはUCAS(Universities and Colleges Admissions Service)を通じて申請します。Aレベル成績が主に評価されます。
地域差:
イギリスの教育は、地域や学校の種類によって質やアプローチが異なります。特にロンドンや南東部では教育資源が豊富であるとされています。
高等教育:
イギリスの高等教育は世界的に評価が高く、多くの大学が世界の大学ランキングで上位にランクインします。
大学進学率は高く、特に18歳から19歳の間では大学進学が一般的です。
北欧諸国
北欧諸国(特にフィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマークなど)は、教育制度が世界的に高く評価されています。ここではこれらの国の教育制度の共通点と個別の特徴について説明します。
共通の特徴:
平等主義:
北欧の教育は全ての子供が質の高い教育を受けられるように設計されており、教育格差を最小限に抑えることを目指しています。
児童中心の学習:
生徒の個々の能力や興味に合わせた教育が重視され、教師は生徒の自己啓発と批判的思考を促す役割を担います。
少人数教育:
クラスサイズが小さく、教師が各生徒に個別に対応できる環境が整っています。
自由なカリキュラム:
国家が定める基本的な枠組みはあるものの、学校や教師に教育方法や内容に大きな自由度が与えられます。
義務教育の期間:
長い義務教育期間があり、一般的に9年から10年間の義務教育が設けられています。
無償教育:
義務教育期間中は無償で、高等教育でも学生は助成金や低利の学生ローンを利用できます。
フィンランド
無試験主義:
試験よりも継続的な評価が重視され、全国的な標準化試験(例えば日本の学力テストのようなもの)は存在しません。
遅い学力評価:
生徒の評価は12歳頃まで行われず、学校での成績が出始めるのも比較的遅い。
教師の質:
教師は高度に訓練され、社会的地位が高い。教師になるための競争は激しく、教員養成プログラムは厳格です。
スウェーデン
学校選択の自由度:
生徒は自分の住む地域外の学校を選択することができ、公立学校だけでなくフリーコミュナル・スクール(自由学校)も選べます。
個別化された学習:
個々の生徒の学習ペースや興味に合わせて学習計画が立てられます。
ICT教育:
情報通信技術の活用が進んでおり、デジタルリテラシーの教育が重視されています。
ノルウェー
包括教育:
特殊教育ニーズのある子供も通常のクラスで学ぶことが奨励され、特別支援教育がクラス内で提供されます。
学力評価の遅れ:
フィンランドと同様に、学力評価は比較的遅く、8年生までは公式な成績が付けられません。
自然環境との結びつき:
学校の外での活動や自然環境を使った学習が重要視されます。
デンマーク
自由学校制度:
教育方針や哲学に基づく私立学校を選択する自由があり、公立学校の選択肢だけでなく、生徒と保護者はさまざまな教育環境を選ぶことができます。
フォルケホイスコール(Folk High School):
成人のための非公式な教育機関で、一般教育を提供し、社会参加や自己啓発を促進します。
その他の特徴:
社会福祉との連携:
教育は社会福祉政策の一環として捉えられ、子供たちの健康、福祉、教育が統合的に支援されます。
多文化教育:
移民や難民の子供たちへの教育支援も手厚く、多言語教育や文化理解教育が進められています。
持続可能性教育:
環境教育や持続可能な社会についての学習がカリキュラムに組み込まれています。