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中南米で最も有名な日本人? ヨコイ・ケンジ氏について

スカイプなどで南米の人と話していると、「ヨコイ・ケンジって知ってる?」とよく聞かれる。

一体何者なのかと聞くと、コロンビアのスラムでボランティアをしたり、講演を行っている人物なのだそうだ。

日本語の情報は少ないので、ここではスペイン語の記事や動画を見た情報を加えつつ、まとめたい。

彼は1979年に、日本人の父とコロンビア人の母の間に生まれる。NECのエンジニアであった父の仕事の関係で、パナマやコスタリカで幼少期を過ごす。彼が10才のとき、コロンビアで日本人が誘拐され殺害されたことから、家族はより安全な暮らしを求めて横浜へ移住する。最初は文化の違いに戸惑い苦労する。たとえば、学校で授業が始まるときに行われる号令や、雑巾で床を拭く掃除方法などなど。だが、気の合う仲間やよい先生に巡り合い、24才まで日本で過ごす。ある日、コロンビアのニュースで、自分の子供に与える食べ物を得るため人質を取った男性のことを知り、ショックを受ける。コロンビアのために何かできないかと、コロンビアのスラム街へ移り住む。スラム街で日本の文化である「規律」を教え、その動画が有名になり、あちこちで講演を依頼されるようになる。彼の講演を録画したyoutubeの動画は数百万回再生されており、コロンビアでは彼を知らない人はいないほどの人気となっている。

動画もあげておこう。

彼の生い立ちや業績、紹介などについては日本語でもいくつか記事があるのでそちらをお読み頂ければ。

彼のことを初めて聞いたのはもう4~5年前になるが、最初はなぜそんなにこの人物が人気なのかわからなかった。

しかし、今日ベネズエラ人にヨコイ・ケンジの素晴らしさについて話されてわかった気がする。

彼の有名な言葉の一つに、「遅かれ早かれ、規律は知性に打ち勝つ」というものがある。

最初、この言葉を聞いてもピンと来なかった。おそらく、多くの日本人はそうだろう。

なぜならここ最近の日本のムードからすれば、「規律」なんて正直うんざり、だからだ。自粛しろ、人に迷惑をかけるな、ルールを守れ。学校や会社は軍隊のようで、同調圧力、空気を読むことなどに皆が疲れている。世界的に見れば日本は異常すぎるほど規律の正しい国だけど、それゆえに規律に食傷君なのだ。

一方、コロンビアは逆だ。暴力と貧困が日常で、誰も他人のことなど気にせず、他人を騙して、奪って、殺す。言い過ぎかもしれないが、スラムでの生活はそういうもので、希望など見い出せない。貧困を抜け出すために、子供たちは将来はギャングや麻薬の売人くらいしか選択肢を思い浮かばない。

ヨコイはそんなスラムの人々に、日本の文化である「規律」を通して、希望を与えている。生き甲斐を持ち、人の役に立ち、規律ある生活を送ることで良い人生になるのだと、人々は一縷の望みを持てるのだ。

彼の話を聞き、人々の表情が明るくなっていく様を見ると、ヨコイは伝道師や神父のようだ。

コロンビア人は「規律」を通して、日本人は「自由」を通して自分たちの人生が良いものになるのではと考える。この異なる文化のコントラストは強烈だ。

日本人にとって当たり前である「規律」という文化が、遠く離れた南米でウケているのは、まだまだ日本という国の独自性、ポテンシャルを感じる。


ちなみに、おれは2019年10月、彼が来日した際のトーク・イベントに参加する予定だった。だが、直前になり、こんなメールが届き、彼に会うことはできなかった。

【台風19号接近に伴うイベント中止のお知らせ】
 みなさま、横井けんじです。
この度は過去最大とも言われる台風の接近により、みなさまの安全第一を考え、イベントを中止とさせて頂きます。楽しみに待ってくださっていたみなさまには大変申し訳なく思います。また来年日本での講演を予定しておりますので、次回みなさまとお会いできることを楽しみにしております。

その翌年(2020年)からは、ご存知のように新型コロナウイルスにより世界が変わってしまい、彼にお目にかかることは叶っていない。

2022年頃には叶うだろうか。


[参考]

El Spectador "Yokoi Kenji Díaz, el japonés que puso de moda Ciudad Bolívar"



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