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【有料老人ホームvol.8】あの日の空を知らなくて...

8月15日は終戦記念日

毎年この日は大体晴れていてミンミンゼミが鳴り、青空が広がる暑い1日が多いのですが今年は全国各地で大雨が降り、関東でも夏ではないみたいな涼しさを感じます。

この日になると、私が必ず思い出すのが7年前に有料老人ホームに勤めていた時のお昼ご飯の一コマです。

日中働いている職員は大体の人がお昼の時間になると食事の配膳をするためにダイニングに集まります。

私もいつものように一人一人にトレイに並べられた食事を配り歩いていました。

その時、いつもハキハキ喋って頭の良い北野さんという方に声をかけられました。

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「今日は終戦記念日だね」

私もそう言われて、はっと思い出し「そうでしたねー。あの日も青空でしたか?」と質問しました。

「あの日もとても晴れていて今日みたいに暑かったよ!みんなで天皇陛下の玉音放送聞いたんだから」

いつものようにハキハキ話すのでまるで楽しいことのように聞こえました。

北野さんは生涯独身で過ごされ、貧しい戦後の時代に仕事をしながら弟たちを学校に行かせ、家族みんなの生活を助けたりと頑張って来られた方でした。

私は「あー...あの日も青空...そうでしたかぁ」と言いながら窓から見える青空を眺めその場から立ち去ろうとすると、北野さんがわたしの背中に向かって

「あなた達はあの日の空を知らないなんて羨ましいね」

と言われました。

思わず振り返ったら北野さんがニコッと微笑み、それからは黙って食事を続けられました。

「そうだなー、私はその日の空を知らないなぁ」と改めて思いました。

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その頃の時代に生まれなくて本当によかったと思います。

日本は絶対にもう戦争🪖をしない国と子供の時に聞いて、今まで安心していましたが...ここ数年は「ほんとにこのまま何もないのだろうか...」と思います。危ない気配が漂っているように日々感じます。

私はたまたまこの職業に就き、色んな高齢者の方に巡り合い話を聞くタイミングにある意味恵まれています。

その中の方に「戦後100年も経つと私たちみたいな戦争体験を知る人間がいなくなる、そしたらまた戦争が始まるケースが多い、気をつけなさいね」とボソッと言われたことがありました。

気をつけるってどうしたらいいの?!と動揺するしかないわけですが。

20代後半から、戦時中の話は聞けば聞くほど「今聞かないでいつ聞くのか?!」と思うようになりました。

少しでも関心を持つ若者に、心ある人に向けて戦争体験を語り継いでくださる方に1人でも多く出会うことができたらいいなと真剣に思います。

最後までお読みいただきありがとうございました🕊

※北野さんは仮名です。


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