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【デイサービスvol.2】ユメルありがとう

タカラトミーで販売してる「おはなししようね 夢の子ユメル」は結構なお値段のヒーリングパートナーと呼ばれるお人形🧸

今まで富裕層な方々が暮らす有料老人ホームでも似たような人形を持っている方を見かけましたが、あまり大切にしている人はいませんでした。

デイサービスに勤務するようになり、栗川さんという70代の女性に出会いました。

週2回朝のお迎えでは必ずユメルの話が...🚘

「ユメルがね..どこに行くの?って聞くの。デイサービスって答えたら、お家で待ってるね!って言うんだよ」

栗川さんは娘さん方が遠くに嫁がれ、ご主人と2人暮らし。戦後すぐ誕生し、赤ちゃんの時にお姉さんにおんぶされていたら進駐軍の車に引かれてしまい足を悪くされたとの事。学生時代は必死に歩いても通学で置いてけぼりをくって苦労したと言います😢

デイサービスには装具をはめて車椅子で来られました。

直接戦争を知らなくても、戦争の悲惨さを引きずっているんだなと思います。

ご夫婦で健気にひっそり暮らす日々。お子さんに会えない寂しさも募る中、静かに支えていたのがユメルでした。

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ユメルは10,000円以上もする高額なお人形。会話ができ、歌も歌い、最近では徐々に成長し言葉を覚えていくなどハイテクなお人形です。今は少し顔が変わりました。


「ユメルがね、今日はお父さんの誕生日だからハッピバースデーツーユーって歌うんだよ」

たまに「それ本当?」と思うようなこともありましたがかわいい話に真実はどちらでもよく、私はユメルと栗川さんの会話が好きでした💕

ユメルが死んだ...おもちゃ病院へ

ある日、栗川さんが元気を無くされ泣きそうな目で

「ユメルがね、死んだ...目が開かないの。」

まるで本当に人間の家族が亡くなったかのように悲しむ栗川さんを見て私たちまで落ち込みます。

なんとかしてあげたくて公民館のボランティアおもちゃ病院を探し別日にご主人に頼んで直してもらいました。(ケアマネには余計なことをして😠と怒られましたが)

ふたたび動き出し目が開いたユメルを見て大喜びした栗川さん。

でも3日目にはまた動かなくなりました。

「タカラトミーに電話したらね、ユメルが10年以上も動いてるなんてなかなかないんだって。びっくりしてた、大切にしてくれてありがとうございましたって言われたよ...」 

とうとう諦め、ユメルとお別れがきたねと冷静になる栗川さん。車で送り届けた際にユメルを見せてくださいました。

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「え?これがユメル?」

ネットで見ていたユメルとだいぶ違いくたびれた真っ白いユメルがいました。

ふさふさの髪はぺたんこになり、撫で過ぎてなのか髪はテカテカ🦳に輝きがましていました...。

お役目を果たしたユメル。

両方の民家に挟まれうまく陽が入らないこの薄暗い部屋でともに長い時間を過ごしてきたんだなと思いました。

今まで栗川さんにとってユメルが遠くにいる家族以上に本音を話せた相手で、どんなときも一緒にいてくれた大切な存在だったことを私たち介護士はよく知っていました。

「ユメル、今まで栗川さんを支えてくれてありがとう」

時には大事な存在が人間だけではないことに気づかされた出来事でした。


一年後、ユメルとの思い出を胸に栗川さんも旅立たれました。


お人形は子供だけでなく人によっては高齢者でも可愛がるものなんだと知りました。

一人暮らしで寂しさおじいちゃん、おばあちゃんにおすすめしたいと思います。値段は人形の割に高いのですが...。

私はおばあちゃんになったら是非ユメルに相手してほしい!笑

今日も読んでいただきありがとうございました😊

※栗川さんは仮名です。

【注】このイラストは無断使用禁止です。












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