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神様?のおはなし

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創作小説「神様?のおはなし」のマガジンです。
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#連載小説

神様?のおはなし㉟【完結】

神様?のおはなし㉟【完結】

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神様は神様であることを忘れて、人間を楽しんでいる。
私達、人間=神様である。

本当はなんでもできる。
でもしたくない、できないと思うことを自分自身が望んでいる。そういう人生を歩みたいと思い、人生を始めたから。

この人生はどんな体験をしてもいい。
楽しんでもいいし、楽しまなくてもいい。

全て自由なのである。

今、私が神様だと実感し、今の何も無い世界の本当の無に気づい

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神様?のおはなし㉞

神様?のおはなし㉞

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私はずっと気づかなかった。
自分が操作して、世界を創っていたことに。

神様が世界を創ったように、私も神様として世界を創りつづけていたのだ。

精巧な人間の身体の感覚と毎日を過ごしたという記憶で忘れていた。
私は人間だと思い込んでいた。

喜びも怒りも哀しみも楽しみもどんな感情でも体験したかった。
体が無くなった後の世界では感情は体験できない。

人生で体験したもの全てが

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神様?のおはなし㉝

神様?のおはなし㉝

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思い出すきっかけを掴むと、凄まじい量の記憶、情報が流れ込んできた。
普通ならパンクしそうなデータ量だが、自分に限界はないらしい。
全てを一瞬でダウンロードした。

そして、私は全て悟る。
先程まで人間の体という器にアクセスして、人生というものを体験していただけだった。

体無きあとは、神様という始まりの存在と同化する。
今ダウンロードし終わり、私は神様の一部から神様になっ

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神様?のおはなし㉜

神様?のおはなし㉜

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「あなたは神様から作られたもので、神様の記憶を通して全てにアクセスできるんだよ。」

声が聞こえた。
実体はないが、沢山の魂のようなものがある。

「覚えてる?あなたがさっき生きてた人生でパートナーの役割をしていたの。」

「え、パートナーはまだ生きているはずじゃ?」

「あなたの人生上ではね。ここから私はあなたの人生にアクセスしていただけだよ。」

「ええ?どういうこと

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神様?のおはなし㉛

神様?のおはなし㉛

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体がなくなった。
記憶はある。

私は一つの体というものに入り、六十数年ほど生きたらしい。

人としての記憶が全てまとめて入れられており、いつでも見られる。
このときはどんな感じだったなあと思い返して懐かしむ。

そして気づく。
この場所には、私が生きた人の記憶だけでなく沢山の人の記憶があることに。

あれ?
どうして私は他の人の記憶も見れるのだ?

神様?のおはなし㉚

神様?のおはなし㉚

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さて、これまでのおはなしの人生はどうだっただろうか。
平凡な人間の人生だっただろうか。

つまらない?自分と似ている?

随分面白くなかったかもしれない。
起承転結なんて全然ないし、酷い出来だと言われるだろう。

この人の身体の心臓は、先程止まった。
体が動かなくなった。

この人はこれからどうなるのだろう?

神様?のおはなし㉙

神様?のおはなし㉙

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家族たちといろんなことをした。
映画を見たり、パーティをした。
海にも行ったし、買い物もした。

楽しい顔を見れて幸せである。
貴重な時間を過ごした。

そして、体がだるい。痛い。
どんどん体が動かなくなってきた。

ベッドに寝ていることが増えた。
色んなことができなくなってくる。

情けない。
みんなに迷惑をかけてしまった。

ごめん。ありがとう。

神様?のおはなし㉘

神様?のおはなし㉘

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退院できる目処がたった。
大分痩せてしまった。
家族と過ごそう。孫や子供たちも会いに来てくれるらしい。

命尽きるまで、大切な人と過ごしたいと思う。
心残りはもう誰かとの時間を過ごせないということである。
お金や名誉は命が尽きる前ではもう意味がない。

誰も私には告げないがこの退院は、余生を過ごすための時間なのであろう。

そんな時間があるだけ幸せである。
当然この世を去

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神様?のおはなし㉗

神様?のおはなし㉗

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体調が良くない日が続くなと思い、病院に行った。
深刻な顔をした医者と家族と話をし、癌であることを告げられた。

今の時代よくあることである。
手術もできないような場所に転移しているらしい。
延命治療をして、余命半年だという。

「ああ、覚悟しないとな。」と思った。

病院で過ごす日々、家族が見舞いにも来てくれるが一人になると急に不安になる。
こんなに弱かったのか。

死へ

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神様?のおはなし㉖

神様?のおはなし㉖

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親の死を目前にして、自分の死も意識しだした。
健康診断もあまり良くない結果が出るようになってきた年齢である。

いつまでも元気に、ずっと若く居ることはできない。
いつか死ぬのは決定している。

これからの人生をどう生きようかと考えるようになった。

家族と過ごす時間を、より大切にしようと思った。
気の合う友人とも、前より会うようになった。

いつの間にか、時が過ぎている今

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神様?のおはなし㉕

神様?のおはなし㉕

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さて、時間は経過して。
私は老後という時期に経った。

そして、子供には連れ添う相手が見つかった。
結婚を見届けた。
おそらく最後となる、子どもの晴れ姿は輝かしかった。

それから、孫ができたのだ。
大変可愛い。
無邪気で、私を慕ってくれて愛らしい。
見ているだけで幸せになれる。

人生で経験したいなと思ったことは大体経験することができた。

これ以上の幸せを望むことはな

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神様?のおはなし㉔

神様?のおはなし㉔

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平日は仕事をし、いつもと変わらない日々だった。

休みの日に夫婦で出かけることにした。
出かける時は昔は子供がついてきていたし、大きくなってからは恥ずかしくて行かなかった。

散歩をし、喫茶店に入った。
子供はどうしているかという話をしたり、これからやりたいことの話などをした。

意外と話が弾むのに驚いた。
付き合いたてのようなドキドキはないけれど、家族になって落ち着く夫

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神様?のおはなし㉓

神様?のおはなし㉓

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そして、とうとう家には夫婦二人きりになる日が来た。
下の子の時は少し慣れて、笑顔で送り出すことができた。 

二人きり。
何を話せばいいのだろうか。

静かに、テレビの音が響いている。

「長かったね。子育て楽しかった?」と聞かれた。

「楽しかった。色んな事が。ありがとう。」と伝えた。

顔を見ると泣いていた。
一緒に泣いた。

なんとなくの喪失感を涙で洗い流して、ゆっ

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神様?のおはなし㉒

神様?のおはなし㉒

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荷物をトラックに積み終わり、子どもは「ありがとう、また。」と言った。

「いつでも帰っておいで。」

ありきたりだが、本心の気持ちを伝えた。
まだ家にはもう一人子どもがいるのだが、一人家から居なくなると喪失感がすごい。

今までの思い出を噛み締めながら、送り出した。
育児できる日々はあっという間だったな。

そして、私は子どもが家にいない日常に慣れるのだ。
下の子もあっと

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