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小説「ファミリイ」#1〜#46(完結)

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『真・人間失格』の、家族に焦点を当てたアナザー・サイドストーリー。 機能不全に家庭に生まれ、血を分けたはずの者たちとも打ち解けることができず、家を包む灰色の空気から逃げた男が、現… もっと読む
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記事一覧

小説「ファミリイ」(♯46・最終章)

34.社会人10年目 その日はやはり淡々とした日常の先にやってきた。僕にとって待ち侘びた…

小説「ファミリイ」(♯45)

 実家に戻ってきてから三年目に差し掛かろうという、あれは如月の終わりごろだったろうか。そ…

小説「ファミリイ」(♯44)

 何でもない時に一人、りょうまのことを呼ぶようになったのは父も同様だった。こんなところは…

小説「ファミリイ」(♯43)

我が家は、僕が戻ってきて初めて静寂に包まれた。  家に帰ってきてから僕が恐れたことは…

小説「ファミリイ」(♯42)

26.現在(7) 激震が走った。Hが自身のインスタグラムに、恋人と別れたことを投稿した。「…

小説「ファミリイ」(♯41)

 その年は春の番組改編期に担当番組が終了してしまい、新規の仕事も入ってこなかった。忙しく…

小説「ファミリイ」(♯40)

 その後も先輩を通じて何度か不本意に彼女と出くわしてしまうことはあったが、 挨拶程度に留まり、疎遠になっていった。  フェイスブックは共通の友人がいたので、それでも彼女の近況は逐一、僕の目に入ってきた。美希は僕を無碍にしてから、僕と同じような脚本家を仕事にしている人間と交際を始め、時期は正確には知らないが四年ほど前に入籍をしたらしかった。僕は三年前に彼女が披露宴を開いている様子をインスタグラムで動画として上がっていたのを見て、結婚の事実を知った。打ちひしがれたが、どこかで

小説「ファミリイ」(♯39)

21.社会人4年目  五月半ばに地元へと再び帰ってきたが、父はまた無職になっていた。一年ほど…

小説「ファミリイ」(♯38)

19.社会人3年目 放送作家業を始めてから二年経ったころから、僕はリサーチの手伝いを卒業して…

小説「ファミリイ」(♯37)

 四月上旬の終わりのことだった。道端の桜が散り終えてあらかた新芽に変わり、地面に落ちてい…

小説「ファミリイ」(♯36)

 Hとは同じ班を組んでよく飲むに行くようになり、すっかり友人としての仲は出来上がっていた…

小説「ファミリイ」(♯35)

15.大学院時代(2) たった数ヶ月前までは遥か京の地で東京での生活に強く大きな夢を描けて…

小説「ファミリイ」(♯34)

 埼玉のアパートに荷物を引き入れ、まだ荷解きすら済んでいない引越し翌日のことだった。すっ…

小説「ファミリイ」(♯33)

 四回生に上がる直前の三月の終わりから四月にかけて、僕は東京で円滑に就職活動を行うために、実家に長期滞在をすることになった。このころ僕はテレビ番組の制作会社なども受験し始めていて、ようやくいくつかの会社の一次面接を突破し、二次、三次へと駒を進めていたのだ。そのほかのテレビやコマーシャルの制作会社の選考も並行して受けていったので合計二十日ほど滞在をしていた。映画サークルで定期的に開催していた上映会に関する雑務や、ほとんど単位を取得していたとはいえ、まだ所属しているゼミの研究発表