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トシちゃんのオレ様ダンス
─ 自分で決めてきた人生だ、と。
「そうそう。自分で決めたことを人のせいにするわけにいかないじゃん。事務所をやめた時もそう。あの時代(1994年)に事務所を蹴るってのはさ、今とは訳が違うからね」
田原俊彦 週刊女性PRIME 2023年12月8日
80年代後半、トシちゃんは「オレ様キャラ」でした。特に88年、曲もドラマも大ヒットしたあたりのころから。
一方、そのころマッチがなぜか世間的に「落ち着いた好青年キャラ」として見られるという不思議な現象が起こっていました。80年代前半はトシちゃんが王子様で、マッチは絶叫系不良キャラだったというのに。
トシちゃんが野心的なキャラになったのは、やはり例の紅白落選が大きな要因だったと思います。「冗談じゃないよ! オレはまだまだこれからだよ」という反発心をエネルギーに、世間に対して闘争心をむき出しにするようになったと。そんな尖った雰囲気がお茶の間の人々を遠ざけてしまったかもしれないけれど、ことパフォーマンスにおいては人間味がぐっと注入され、各段に魅力的になりました。
80年代前半は、西条先生やボビー先生に付けてもらった振りを忠実にこなすだけでした。だけど後半のダンスでは、「見ろ!これがオレだ!」と言わんばかりのトシちゃんの「叫び」を感じるのです。反骨心が彼のパフォーマンスに厚みを加え、自立した大人の踊りにしたのでしょう。「好きにやらせてもらうけど、ちゃんと責任は取るよ」と言いたげなオレ様ダンス。
一方、例えば少年隊の踊り。上手いんだけど何というか…優等生すぎて。統制されてる感というか、疑うことなく受け入れている感というか、手懐けられている感というか、恵まれてる感というか。それらが美しいシンクロを作り出す要素となっているんでしょうけど、内側から放つ主張を感じなくて、観ていてもあまり心を掴まれないんですよね。
光GENJIも、一生懸命やっている様子が大人から言われたことを必死にこなそうとしているようで、少し痛々しく見えてしまうのです。好き放題のびのびできていない感じがして。
グループだと他者を意識して動きを揃えることが必要だから、個性を出し切れないのは仕方がないことかもしれません。その代わり、責任も緊張も独りで負わずに済むわけで。
ソロで戦ってきたトシちゃんの反骨心と自立心は、数年後、厳しい世界に突入する源となりました。
─ あらためて訊きますけど、なんでやめたんですか?
「やめたいからやめたの(笑)。だってもう10周年ぐらいの時から、自分でショーも作っていたし、ドラマやれば当たるし。もうすべて教わることは教わったなと。」
田原俊彦 週刊女性PRIME 2023年12月8日