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「スターなオレをする」が、仕事です

『職業=田原俊彦』2009という自著があるそうな。もう10年以上も前に出しているんですね。

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shueisha  1984

歌手でもなく俳優でもなくアイドルでもなくタレントでもなく、田原俊彦というジャンルの生業。田原俊彦という業務に従事しているということ。同じスタンスとして郷ひろみがいますね。そして、以前書いたジュリー。

この3人しか思いつきません、自分の名前を職業にできる人は。まず、当然ソロの芸能人じゃないと不可能。グループだったらその構成員というアイデンティティも持つわけだから。なので、昭和の人に限られてしまいます。

他だと例えば西城秀樹さん、晃司クンとかの広島組。彼らは大スターだけどまたちょっと違うというか。ヒデキにはジュリーやヒロミGoのようなエキセントリックさ、わがままさの印象が強くなくて。晃司クンも、そこまで強く「スターなオレ」にこだわっていなさそうでこれまた違う感じ。ついでにマッチも。つまり、スターであることへの執着の強さ度合ですね。光が強ければ影も濃い。栄光と凋落の落差。賞賛と引き換えのバッシング。

「職業=自分」の3人の中で一番安定的にうまくやってきたのがヒロミGo。ランキング番組や賞レースに出ないなど先陣切って独自オレ様路線に行ったけど、第一線アイドル期以降もヒット曲あったし、好きな時にアメリカ行って活動したくなったら帰ってきて、やりたいようにやっている印象。本人の人気実力実績も当然ありますが、大きな事務所にいるのが最大の強みでしょうね。他の二人は独立しています。さらに「スターをする」にあたり、彼の強みは芸名であること。負のシーンに直面した時、切り替えができる。

本名だと、かなりきつい。例えば、聖子ちゃんは芸名だったからこそやってこれたのでは。90年代の異常なバッシングも、人格から切り離せば「松田聖子という商品の評判がよろしくないみたいで」と遠目で見ることができる。彼女の場合は存在がコントロールできないくらいビッグになりすぎていて、その時点で自分自身と距離が出来ていたんだろうと思います。何を言われても生身の自分の精神にダイレクトには来ない。「松田聖子っていう名前が世間でいろいろ言われちゃってますね」と。

本名だと、魂を持ったリアルな自分を守るための殻を創ることが必要になる。主役じゃないと表に出ないとか、満席じゃないとコンサートをしないとか。でもそうでもしないと、負のシーンがダイレクトに生身の自分に突き刺さって心が壊れそうになってしまう。芸名と言う偽名が自分を守ってくれないから。

だから、やっぱりトシちゃんはたいへんだったと思う。ジャニーズは原則本名。「田原俊彦」で仕事しているから、結婚などのプライベートを隠さないと生身の自分が保てないでしょう。独立したあとは後ろ盾がなくなったためとげとげの殻を身にまとっていたけど、90年代の世間の攻撃性の方こそ異常だった。トシちゃんといい聖子ちゃんといい、あのバッシングは何だったんだろうって。二人とも乗り越えて今、真のスターになっていて本当に素敵。二人で紅白あたりでメドレーとデュエットしてほしい! あ、ジュリーもね。