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コロナ禍のデータで読み解く、観光予報

こんばんは。観光ライターのMasanoriです。

昨日noteでテーマにした、ターゲットについての続きです。例にした旅館の場合、Google Analyticsなど解析ツールから実際の顕在化している層を知ることまでは比較的容易に判明します。今回は、視点を少し広げて、その地域の交流人口のデータとマッチしているか、という裏付けをおこないたいと思います。

地域経済分析システム(RESAS:リーサス)

例えば、カスタマージャーニー的に、妻が意思決定、夫が決裁者のファミリーが顕在層だとして、その地域には実は現在、ひとり旅のほうが多く訪れていた、なんてことが判明すると、機会の損失に繋がります。そのあたりのデータを我々の業界では『RESAS』で調査をしますが、いつのまにか、『V-RESAS』なるコロナ禍ならではのデータが提供されていました。
(以下引用)

新型コロナウイルス感染症が地域経済に与える影響の可視化
V-RESASは、新型コロナウイルス感染症 [COVID-19] が、地域経済に与える影響の把握及び地域再活性化施策の検討におけるデータの活用を目的とした見える化を行っているサイトです。”
https://v-resas.go.jp/

正直、2019年と2020年はインバウンドはもちろんのこと、国内も比較する意味があまりなくなりました。それほどに、新型コロナウイルスが観光に及ぼした影響は大きく、GoToの地域別スタートの違いや停止など、現場と同じぐらい観光メディアやOTAも混乱していると思います。なので、V-RESASが提供してくれる情報はありがたく活用させていただきます。

対象は12月にGoToトラベルで行った長崎県長崎市

というわけで、実際に調べる対象地域を決める必要があるので、2020年12月に、ANAのダイナミックパッケージでGoToトラベルを活用して旅行した長崎県長崎市を対象にしてみます。ぶっちゃけ、既にクロージングはしていますが、長崎県のおしごとは何度かやらせていただいたこともあって、ご縁も多少感じております。

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飲食店情報の閲覧数

9月の第四週に、「鍋料理」カテゴリでピークが見られます。この時期はGoTo旅行者需要が大多数。12月の第五週が水準としては第一回目の緊急事態宣言時まで落ち込んでいるので、交流人口による閲覧と同期しているものと見て間違いはないと思われます。「居酒屋・バー」が下降線を辿るなかで、直近では「カフェ・スイーツ」が増進。昨対では-40%ですが、1月二週目で増加に転じているのは、新しい生活様式における同ジャンルでの客足が復旧しつつある可能性が考えられます。

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セグメント別宿泊者数

こちらは肝心の2021年に入ってからのデータがまだ更新されておりませんが、GoTo停止になる前は「子ども連れ」(ファミリー)がアタマひとつ抜き出ています。一方で「男女二人(カップル・夫婦)」、「ひとり旅」も昨対90%以上と高水準です。飲食のデータと掛け合わせると、「鍋料理・カフェ・スイーツ」×「ファミリー・夫婦・ひとり旅」となり、すべてに応えるコンテンツが施設にあれば良いですが、マッチするものだけでも強調することで潜在層の獲得機会に繋がります。

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マイクロツーリズムが定着しつつある

興味深いのが、「長崎県の予約代表者の居住地」のグラフと、上図がほぼ一致していることです。つまり、8月あたりから急伸している「子ども連れ」は、ほぼ県内旅行者であることがわかります。ちょうど、同時期に星野リゾート代表の星野佳路氏がおっしゃっていた“マイクロツーリズム”が実際に回り始めた例かもしれません。
※遠方や海外への旅行ではなく、新しい生活様式を守りながら、地元の人が同県や近郊で過ごす旅のスタイル。

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実はこの結果は観光ライターやメディアにとっても重要です。
というのも、遠方からお越しいただくためのコンテンツと、県内の方が訪れたくなるようなコンテンツは、かなり趣旨が異なるからです。当然ライティングにも影響が出てきます。極端な話、地元の方に対して、“地元の山海の幸”の良さを謳ってもあまり響かないのです。なので、地元の方向けには、シェフの匠の業を見せどころとする、特別なスイーツを提供するなど、他のコンテンツで興味を持ってもらうしかありません。

宿泊動向で裏付け

こちらのラジオボタンを「長崎県からの旅行者の宿泊地」にすると、長崎県がTOPになることから、前述のマイクロツーリズム需要があることはわかります。ここでは、それ以外の地域を確認しました。結果、同じ九州の福岡県からの流入、大阪府からの流入が続いて多いことがわかります。
九州エリアと関西エリアが、長崎県に何を求めるのか、というニーズを深堀したコンテンツがあれば、実際に訪れているこれらの層を獲得できます。

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ライターなら気になるキーワード

そして最後にキーワード。グラフを見ると明確ですが、地域名で検索されていることがわかります。つまり、東京スカイツリーや、ウポポイといった特定の施設を目的とするよりも、地域名から周辺観光を探って旅行計画を立てる、という行動をおこなっている可能性が高いと思われます。
これらの観光予報データから、最適なコンテンツを造成し、ターゲット層に合わせたライティングをおこなうことが、観光系ライターの腕の見せ所になります。

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いかがでしたか。
緊急事態宣言の延長も決まり、GoToの停止も延長、観光業界は暗中模索が続きますが、今だからこそやれる対策は実行すべきタイミングなのかもしれません。信頼おけるライターやマーケターに、相談してみるのも良いかもしれません。

V-RESASデータについての問い合わせメールのドメインが、cas.go.jpになっていて、JPWHOISで見たら、内閣官房のドメインでした。提供者の欄にも表記がありましたが、こういうのは国土交通省(観光庁)ではないのですね。普段気にすることなく使っていましたが、勉強になりました。あらゆる業界で、今本当に必要なデータだと思います。

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