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おっさん系アラサー女子、初メイドカフェだにゃん(後編)

このお店は、誰かがオプションで

ライブコースを注文すると

ステージでメイドさん達が歌ってくれて、

注文してない他のお客さんも一緒に

ライブを拝めるというシステムらしい。


しかし初心者の私達が

ライブコースを注文する勇気もなく

さらに平日の昼すぎに来たもんで

お客さんの入りも少ない状況だった。


「他にライブコースを注文しそうな人も

いなさそうだし、今回は帰るか…」


と、諦めかけたその時。

「いらっしゃっいませ、ご主人様ぁぁぁ!

きゃー!いつもありがとにゃ〜ん!!!」


エレベーターの方を見ると

一人で来ていた40代くらいの男性。

もう明らかに、いつも来てます、

なんならマジの俺ん家ですけど、なにか?

的なオーラ満載のガチご主人様、降臨。


(…えぇぇぇ!?もはや経営者!?

もしかしてここの娘、全部お前の女か!?

…こ、これは面白そうだ!!!)


なんて勝手な事を思っていると、

なんとガチ主人が私達の

隣の席にお座りになった。


兄はすぐにガチ主人に興味を持ち、

「よく来られるんですか??」と声をかけた。

(い、いいぞ!ナイスだ、兄貴…!!!)


ガ主「え!いやぁ、まぁ、新宿と池袋に

いつも行くんですけど、今日はこっちに

来てみたんですよ。」


(お前の別荘は一体いくつある!?

な、なんてカッコいいんだ…!!(?))


「私達、今回初めて来たんです!

今日ライブも見たかったんですけど、

人も少ないし帰ろうとしてたとこで…」


ガ主「初めてかぁ!そうだったですね!

僕も今日は推しの子と写真撮りにきただけで…

誰かライブ注文してくれたらいいですね!」


(いや、もうあなたと話せただけで

結構私は嬉しいぞ…!ガチ主!)


初心者の私達をバカにする事なく

基本的すぎる質問も、嬉しそうに

真摯に受け答えしてくれるガチ主。

笑いながら和やかに話していた、その時。


「わぁー!!ご注文ありがとうございま〜す!

ご主人様ぁぁぁ!!」


遠くでキャピキャピしたメイドの声が響くと

急に照明が消えた。

「え…??」

と思ったら色とりどりのスポットライトが

四方八方に暴れまくり、

爆音で音楽が流れ始めた。


私達は一体何が起こるのかワクワクしながら

ふとガチ主の方を見た。


すると先程の3人で会話してた時の

笑顔は完全に消え、リュックの中から

おもむろに何かを取り出した。

よく見るとピンクに光るペンライト2本。

ガチ主は突然立ち上がり、

ペンライトを持って客席の後方にある

スペースへ全力で走っていった。


するとメイドさん達が

ステージに上がり、一斉に踊り出した。

私は奥に居た大学生の男の子2人組が

ライブコースを注文した事に気づき、

(君達、ありがとう!!最高だ!!)

と感謝しながら、メイドさんの

可愛さに釘付けになった。


「す、すげぇ…!!」

私は兄の大きな声に我に返った。

兄がメイドさんの方とは逆方向を見ていたので、

私も釣られてそちらに視線を移す。


(…っ!?!?)

ガチ主が全力で踊っている!!!!

まさしく私達が求めていたヲタ芸だ!!!!


「や、ヤバすぎる…!!!笑笑」

私達は目を輝かせてガチ主に見入った。

キレのある動き。

きっといつも踊っているのであろう、

ムダのないスムーズな身体の使い方。


サビに入るとペンライトの残像が

さらに美しく舞い、ライトセイバーのようだ。

まるで一人きりでも戦う勇ましい侍だ。


メイドさんそっちのけで、

ガチ主だけ見つめていると

あっという間に曲が終わってしまった。


やりきったガチ主は、戦で勝ち抜き

敵の首を討ち取ってきた殿様のように

誇らしい顔をして席に戻ってきた。


私達は盛大な拍手でガチ主を迎えた。

感動で言葉にならなかったので、

兄と私はガチ主に握手を求めた。


「もう…!!す、凄かったっす!!

感動しました…!ホントに!!

ありがとうございますっ…!!」


私達は世界を救ったヒーローを讃えるように

ガチ主と硬い握手を交わした。

その後もガチ主に怒涛のヒーローインタビュー。

最後にもう一度感謝の言葉を伝え、

大満足の私達は店を後にした。


次回、

〜あとがき〜

一、てか帰り際にこんな奇跡起こるもんね?

二、実はガチ主の前にも出会った、もう一人の主

三、ガチ主様に教わった大切な学び



の3本です!

乞うご期待!(^o^)/

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