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明日から使えるメールマーケティングの考え方と手法

こんにちは、小東です。

いま営業・マーケティング界隈では、「(認知だけでなく)購買フェーズまで、完全オンライン化を目指すときが来た」と言う話題で持ちきりです。

各論はそれぞれの専門家に譲りますが、その答えは、コンテンツを作る力と届ける力、そして売り切る力の総合力で概ね決まってくるでしょう。

そしてこの未曾有の事態に生きるマーケターは、私をふくめ、所属企業や組織の「コンテンツを作る力」と「届ける力」を最大化する使命があります。

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そこで今回は、BtoBマーケティングの肝である「メールマーケティング」について「明日から実践できる基本的な考え方」と「メールの書き方」を紹介します。

私は「配配メール」の株式会社ラクスさんのユーザー会でも度々登壇させてもらっており、そこで会員さん限定に話すネタも特別に織り交ぜています。


■「メールマーケティング」とは何か?

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そもそもメールマーケティングとは、簡潔に言うと、自社商材に関心を持ってもらう・相談しに来てらうといった、態度変容を促す一連のメール施策を指します。

上手くいけば「あの●●社に話し聞いてみるか」と、メールを介してお客様からコンバージョンを獲る、あるいはアシストができます。

強調したいのは、頭の片隅に記憶してもらったり、何かで思い出してもらったり、声をかけてもらう、受け手の態度変容こそゴールという点。

そのため「決まった時刻にメールを配信する」と言った行為自体は、メールマーケティングのほんの一部であり、ただの「作業」になります。

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では「メール経由でコンバージョンを増やす(アシストする)ために、何をすべきか?」を考えていきます。必要な要素を分解すると、下記になります。

●メール施策でコンバージョンを増やすには?
・量:受信者の母数(①)×メール送信数(②)
・質:受信者のアポ転換数、率(③)

今回は、②送信数を増やす、③アポ転換数、率を向上させる考え方や施策を解説します。

言うまでもなく①も超重要ですが、①はオウンドメディアによるホワイトペーパー施策や、展示会による名刺獲得など、コンテンツマーケティング全般を語る必要があるため泣く泣くこのnoteの対象外とします。


■まずは自社リードの精査とジャンル分けする

ガイアックス登壇資料_0213

第一に「アポ転換数、率(③)」について解説します。

ここでは、受け手にとって響きやすい(態度変容を起こしやすい)メールとはなにかを整理していきます。

受け手が響くメールを配信するのには、闇雲に数を増やすのではいけません。まず誰に対して、どんな時に発信するのか考える必要があります。

もし私がメールマーケティングを始めて間もない組織に携わるなら、まず「自社のリードを切り分けて整理しよう」とアドバイスします。具体的には、セールスの進捗度を区別して、配信先を分けて管理することです。

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たとえば、①展示会リスト・ホワイトペーパーのDLリスト、②過去問い合わせ・非案件化リスト、③過去問い合わせ・失注リストのように分けます。

そうすれば、認知して間もない人(①)、過去に興味を持ってくれた人(②)、ニーズが顕在化していたものの提案が刺さらなかった人(③)、などカバーして、それぞれ適格なアプローチができるようになります。

※弊社では、上記「セールスの進捗」に加えて、狙いたい業界企業や大手代理店を区別した「リードの種類」も追加して配信リストを作成しています。

ここで勘の良い方は気付いたかもしれませんが、営業担当とメールマーケ担当は連携が必要です。なぜなら、①②③は流動的で進捗が非常に変わりやすいので、週や月に振り返り、SFA(営業支援システム)を随時更新し、流れをつかんでおく必要があるからです。


■ジャンル分けしたリードに、最適なメールを作る

次に「メール送信数(②)」について解説します。

今まで何人ものBtoBマーケターの方と情報交換してきましたが、「高価なMAを導入するほどでもないけど、有効なメールを定期的に配信していきたい」ニーズは一定あるはず。

ここでのノウハウは、特に保有リード数が数千~2万程度の組織の場合は、お役に立てると思います。

ウェブ広告やSNS運用でも当てはまりますが、ターゲット顧客に対して接触頻度を増やすことは超大事。覚えてもらうには、とにかく量です(前章のリスト作りができた前提で)。

解除率が極端に高くない限り(目標0.25%以下に抑える)、解除を恐れずに週2,3回は中身の違う配信をできるのが理想。そこで、「こんな発信してみたら?」というアイデアをご共有します。

参考:メルマガ配信の効果を妨げる「退会率」や「解約率」を下げる方法とは?

私が自社で、昨年100通近く配信したメールを分類したのが下記です。決まった「型」があるので、ひとつずつ簡単に解説していきます。

1.隔週、リード全体に、鉄板の定期メルマガ配信(営業担当名義)
2.週に2回ほど、定期セミナーのご案内(マーケ担当、営業担当名義)
3.月の始めに1回、セールス進捗度に合わせたご挨拶(営業担当名義)
4.月に2回ほど、自社コンテンツの告知や読み物を配信(マーケ担当名義)
5. 補足:毎日、ホワイトペーパーがDLされたらお礼配信(営業担当名義)

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1. 隔週、リード全体に、鉄板の定期メルマガ配信(営業担当名義)

まずは「認知して間もない人(①)、過去に興味を持ってくれた人(②)、ニーズが顕在化していたものの提案が刺さらなかった人(③)」、すべての人に対する情報発信です。

①②③に広く受け入れられる情報はなかなか想像しにくいですよね。ましてや「うちの商材良いですよ!」なんて訴求を①の人に行えば、たちまち嫌われてしまいます。

そこで弊社では、営業マンの名前を思いっきり出しながら、ビジネスパーソンに失敗あるある・個人の振り返り日記を導入文に書き、後半に鮮度の高い業界ニュースを3つほどまとめて解説を入れた、ゆる~いメルマガを配信しています。

先週はGoogleのシステム障害が発生しましたね。私もピンチに。。。

営業なのにフォルダから資料が取り出せずメールも送れず、久しぶりに本気で焦りました!!泣

その日は部署の仲間に励まされたものの、今度は彼らがFacebookとInstagramのエラーに見舞われ、クライアント企業様へのお電話対応に追われていました。。。

とか、

先週27日、任天堂からポケモンの新作「ソード・シールド」が発表されましたね!わくわく

赤・緑の発売から23年目の今年、完全新作です。Twitterトレンドでも盛り上がっていましたね!

私はスマブラを買い損ねたので今回がNintendo Switch買うチャンスかも、と思っています。ちなみにソードを買おうかと思っていますが皆さんどちらを買いますか?!

など、「今日の、あの営業マンはどんな話題を書いてんだろう?」と思わせる導入を入れています。

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ちなみに、本文は堅めのニュース解説を入れています。詳しい施策や効果については下記をご覧ください。

この隔週メルマガの役割は、①②③ファネル全体に「●●社って面白いな」「営業マンのひと、応援したいな」と思ってもらえれば良いのです。弊社では男女の営業マンで試し、両方とも30%近くの開封率があるので、再現性は高いです。


2.週に2回ほど、定期セミナーのご案内(マーケ担当、営業担当名義)

次に「認知して間もない人(①)、過去に興味を持ってくれた人(②)」を対象とした施策になります。弊社では展示会の出展はしてませんが、SEO記事経由のホワイトペーパーがそれ同様の件数分ダウンロードされます。

そうしたメールリストの方々のなかには「無料ならぜひ勉強しておきたい」「業界やトレンドを理解したい(成果を出したい)」ひとが多い。

そのため、ホワイトペーパーの内容から少し踏み込んだ企画の無料セミナー(ウェビナー)や他社との共催イベントの集客と相性が良いです。反応の良い営業トーク、案件で喜ばれた事例 ➡ ホワイトペーパー ➡ セミナーコンテンツ、と進化させるのが手堅いかもしれません(その辺りは下記にまとめています)。

ですので、メールのCTAをセミナー(ウェビナー)ページにしたメールをドンドン案内すると良いです。弊社では月3~4回実施しているので、週2回は集客の案内をしています。

ちなみに弊社で昨年セミナー申し込み者の集計を取ったところ、参加者の約3割が、直近3ヶ月のホワイトペーパー経由だったことが分かりました。手堅い導線を構築すると、後々のお問い合わせ件数にも効いてきます。


3.月の始めに1回、セールス進捗度に合わせたご挨拶(営業担当名義)

こちらは「①展示会リスト・ホワイトペーパーDLリスト、②過去問い合わせ・非案件化リスト、③過去問い合わせ・失注リスト」のうち、特に②③、かつ「狙いたい業界企業群」をターゲットにした施策です。

一言で表現するなら、「あなただけに特別な『お土産』をプレゼントします」作戦です。

たとえば、狙いたい業界企業群が「お菓子メーカー」だったとします。その企業群に該当する会社名、メールアドレス、名前を一覧化させたリストを作成します(毎月つぎ足すように、同リストを育てていきます)。

次に、営業トークや過去のセミナー、トレンドをまとめた、何かしら共有しがいのあるPDFデータを、マーケ部の人は月に1つか2つ用意します。

そこに月初、営業マンからご挨拶のメールとして、「お菓子メーカーの貴社にぴったりな事例・ニュースを、特別にまとめました。本来外部には出しておりません。良かったらお使いくださいませ。」とお渡します。

直販以外に、代理店でも使えます。狙いたい企業群が、たとえば広告代理店なら「代理店の皆様がクライアント様からよく聞かれる先進事例やホットなニュースを、弊社のノウハウと解説を織り込んで厳選しました。社内で、ご共有くださいませ。」となるでしょうか。

ポイントは「毎月決まった営業マンが」「あなただけに」「無料の資料をプレゼント」。この流れです。

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上記は弊社で注力したい業界に絞り、リスト毎に書き方を変えたメールの反応率です。もちろん①②③のブロード配信に比べて分母が少ないため割合が高くなるのは当たり前なのですが、3桁以上の対象にこれだけ開封・リンククリックしてもらえれば十分、有効と言えるはずです。

ここで注意点。たとえ返事が来なくても、多少の解除があっても、挫けず気にせず月1回は送って欲しいです。

資料のクオリティをマーケターが担保する前提ですが、無料で自社のために資料をくれる人を心底嫌うBtoB担当者はほぼいませんし、仮にそうであれば、もともとビジネスのご縁がない方だと割り切る勇気を持ちましょう。


4.月に2回ほど、自社コンテンツの告知や読み物を配信(マーケ担当名義)

営業マンからのメールに加え、マーケ部からも援護します。

自社の過去のウェブコンテンツ(ex. 記事や導入事例)、プレスリリース、書籍の発売など、自社で当たり前に流通している情報を、②③あるいは、①~③すべての方々向けにリライトしてお送りします。

ポイントは「A:メールだけでコンテンツの中身がよく分かること」と、「B:受け手の読後のアクションが明確なこと」です。

前者Aは導入文で何のためのメールかを明記し、メール内に図解を多めにして、「ほとんどメールで伝えたけど、それでももっと知りたい人はリンクを押してね」と誘導しましょう。

次に後者Bとは、メールを読んだ人に「So what?(読んだけど何さ?)」と思わせないことです。「本を買って欲しいのか」「アンケートに協力して欲しいのか」「興味あったら返信して欲しいのか」、CTAを明確に打ち出すことです。

これが無いと、時間をかけて作ったメール文が水の泡になってしまいます。具体的に補足します。

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こちらは先月弊社で配信したメール。「YouTubeチャンネルを解説しました」「5~10分でSNSトレンドや基礎知識が学べるので見てね」という内容でした。CTAはチャンネルへの遷移のみでしたが、今後チャンネル登録を加えても良いでしょうね。

この施策の良いところは手間が掛からないところです。導入・CTA・大き目の画像・対象者・CTA・締めの挨拶、という構文が固定されている(注:CTAは開いてすぐ見える、できるだけ上に置く!)ので、マーケターの方は既存コンテンツを噛み砕くだけですぐ異なる内容でも、作成可能です。


5. 補足:毎日、ホワイトペーパーがDLされたらお礼配信(営業担当名義)

これはフィールドセールス~インサイドセールスのどちらかが配信すると特に効果的な施策で、「認知して間もない人(①)」が対象になります。

弊社では、ホワイトペーパーがダウンロードされた日には、できるだけその日中に挨拶メールを送っています。もちろん、①の人は「勉強目的で資料をダウンロードしただけで、サービスなんてすぐ要らないよ!」というテンションの方が多いです。

そのため、下記に絞って「ご挨拶」します。

・資料をダウンロードいただきありがとうございます。
・貴社業界の方には、この資料もよくダウンロード頂いてます(URL送る)
・他にも無料で学べるセミナーをやってますので、良かったら(URL送る)
・もし●●でお困りでしたら、お気軽にご返信ください(MTG可能です)

ざっくりですが、内容はこれだけでOKです。また、①の人に何でもかんでも架電しなくて大丈夫です(嫌われてしまいます)。

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また、配信タイミングは、弊社では午前11時か午後4時代に送っています。理由はホワイトペーパーを掲載しているオウンドメディアのアクセスが最も集中する(読者が端末の前に居る)タイミングと合わせたかったからです。


■おまけ:ちょっとの工夫で改善するメールの見た目

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ここまで、リードの精査とメールの内容について書いてきました。ここからは、開封率を上げるちょっとした表現のテクニックを紹介します。

ポイントは人名、顔写真、注目されやすい「話し言葉」です。これらを入れない場合に比べて、開封率が明らかに伸びる傾向が見られます。

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単調なセミナー集客の案内メールよりも、営業の高橋(個人名・顔出し)が送る、タイトルが目を引くメールの方が、25~30%の開封率を誇ります。

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当時、弊社の高橋はフィールドセールスとして営業現場に出たり、オフラインセミナーの受付係もやっていたので、「あ、あの高橋さんですね!」と声掛けしてもらえました。

ゆるいメール本文は、なかなか乗り出せない企業や組織もいるかと思いますが、顔出しや実名出しは、覚えてもらう+親密さを訴求するチャンスなのでぜひ取り入れたいメール施策のひとつです。


※ヘッダー写真素材:https://mailmarketinglab.jp/hai2mail-user-events-no3/

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お役に立てましたか? マーケターが狙いたい見込み顧客に対して、社内のノウハウをまとめ、適切にアプローチする具体的なプロセスをできるだけ詳細に説明してみました。

今回のnoteを読んでくれた方やその周辺の方が、自社のメールマーケティング施策に活用して、少しでも成果を向上させられることを願っています(感想などあれば、ぜひ聞かせてください)!


■以前書いたBtoBマーケティング施策ノート


サポートしてくれた方、いつでも靴を磨かれに来てください。