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感覚と運動の発達凸凹マガジン

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発達障害の感覚過敏と鈍摩やDCD(発達性協調運動障害)について行っている実験心理・脳科学の研究など、研究の世界的な動向についてシェアしていこうと思います。
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#自閉症

ASD者の錯視の起こりにくさについて

ASD者の錯視の起こりにくさについて

様々な視知覚の錯覚現象が実験心理学の研究によって知られていますが、ASD者ではそうした錯覚が起こりにくいということが1990年代から盛んに言われるようになり、数多くの研究が行われてきました。その発端となったのはFrith (1989)、Frith & Happe (1994) で提唱されたWeak Central Coherence(WCC)理論、日本語で言うと弱い「中枢性統合理論」です。WCCの

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不安と感覚の密接な関係 Part1

不安と感覚の密接な関係 Part1

近年、少しずつですが自閉症の方が感覚の困りごとをもつことが知られてきたと感じます。代表的なのは感覚過敏・感覚鈍麻といった症状です。

ですが、自閉症の方のもつ特徴でまだまだ知られていないことは多く、その一つは‘’不安‘’の高さです。むしろ、情動的な反応は鈍いとさえ思われていることもありますが、当事者は強い不安を抱えて日常生活を送り、不安を背景に、傍からは不適応と捉えられる行動が生じている場合もあり

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”枠をとらえ”、”枠に収める”ことの個人差と不器用さ

”枠をとらえ”、”枠に収める”ことの個人差と不器用さ

この記事を書くきっかけとなったのは @pekarinhika さんのツイートに関心を惹きつけられたからでした。

この記事を読み、私たちが報告した研究結果(Umesawa et al., 2020) との関係を思い出さざるを得ませんでした。

この論文では、参加者は下図のような実験状況で、PC画面に白い”枠”と黄色い×印(ターゲット)が表れます。参加者は、まず画面上の×印の位置を記憶します。

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