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公園なら、思いきり歌える


「公園で、誰もいないところで思いっきり歌うのって楽しいよ」

とある友人がそう言った。

私も思いきり歌うことが好きなので、それはある意味憧れる行為なのだけど、いくら公園とはいえ、それは恥ずかしいだろう。

ましてや、周りに誰もいないなんてそんなチャンスあるだろうか。
公園なんて、家族連れやペットの散歩をしている人が多いだろうに。

将来、私がその行為をすることはないだろうーーそう思っていた。



「今から公園行って犬の散歩するから、支度して!」

布団でぬくぬくしていた私にとって、それは痛い言葉だった。
この温もりが名残惜しい。

けれど、散歩が楽しいのも事実。
なんだかんだ楽しいことは分かっているから、この名残惜しさも手放せるのだ。

私は起き上がって、まだ寝ている飼い犬を起こすことにした。


「私は買物してきたいから、先に散歩しててね」

母は用事があるらしく、私と飼い犬だけで先に散歩することになった。
公園に着くと、思っていたより人が少ない。

芝生でサッカーをする人たち、犬の散歩をする人たちが、まばらにいる。

少し歩けば、辺りにいるのは私と飼い犬だけになった。

私はワンフレーズだけ、歌ってみることにした。

振り返るけれど、まだ誰もいない。
だからもう少し歌ってみる。

今度は腹の底から声を出すように歌ってみる。
最近読んだ「歌い方」の本に、そうすると良いと書いてあったからだ。

こんなに思いきり歌っているのに、きっと誰にも聞こえていない。
なんて心地いいんだろう。

走り出したくなるような、そんな気持ちになった。
そしてもっと、散歩が好きになっていた。




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