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23歳女一人でいいお肉を食べてみた。

枕崎に移住して、もうすぐで二か月。
今月の9日にお店がオープンして、シルバーウィークと闘い無事に生還したご褒美に一人焼肉を決行することにした。

大学時代からやってみたかった一人焼肉。しかし人目が気になってどうしても行けていなかった。
まだ、人目が気にならなくなったわけではないが、枕崎に移住してからは仲のいい友人が近くにいるわけでも知り合いがいるわけでもない。全く知らない人に見られたところで、それはただ見ているだけで記憶に残るほど認識することはないだろうという心の持ちようにより決行を決意。

家から徒歩数分圏内という嬉しい距離にある焼肉店。お酒も飲みたいし、行くならここにしよう。

通勤中、体操服姿の小学生を見かけ、今日、運動会があることを知った。運動会頑張ったねで焼肉を囲む家庭もあるだろう。
忙しそうだな、一人とか迷惑かなと思いながらも、ピークじゃなければいいじゃないと仕事終わりに予約。

「一人なんですけど、20時頃って席空いてますか?」
〈満席なので、空き次第ご連絡しますね〉

無駄に気を遣わない優しい女性。対応に感謝。
家から近いので、電話が来てからでもすぐに行けるという余裕。これはいい。

電話が来るのを待っている間に、溜まっていた洗い物を済ませてデスクチェアでぼーっとする。
思っていたよりも早く電話はきた。

ルンルンで一人家を出る。
周りに人がいないことをいいことに鼻唄歌いながら店へ向かう。

枕崎はなぜか焼肉屋が多い印象だ。
勧められる店もあそこの焼肉屋がいいよなんて言われる。
焼肉が有名なのかと訊くと、漁師町の反動だとか、ブランド牛でもないから地産地消が多いだとか。実際の理由は明らかではない。

店は本当にすぐに着いた。初めての店で初めての一人焼肉。
ドキドキしながら店の引き戸を開けると、奥の個室に通された。

全ての席が個室!
奥なら店員さんしか来ないから変に気遣うこともない。
いい席だ…と一人にやにやする。

先に、ライチチューハイを頼み、お酒が来るまで間に何を頼むか決める。
黒毛和牛A4~A5ランクを取り扱っているというだけあって、お値段はこれまで行っていたチェーン店食べ放題価格とは比べ物にならない。
予算3,000円を考えていたが、このときにケチっては後悔すると予算を完全に取っ払って胃袋にちょうどよく収まる量感覚だけを考えることにした。

最初に決めたのは、牛肉の炙りユッケ。
ここのところ桜肉のユッケは見るが、牛肉のユッケはなかなか見かけない。さすがいい肉を使っているお店だ。
生肉大好きな私としてはこれを頼まないわけにはいかない。
次は、あっさりめのお肉、牛タン。
そして、せっかく黒毛和牛取り扱い店なのだからということで、黒毛和牛の中落カルビに決める。
米で腹は膨らませたくないので、キャベツ盛を頼む。焼肉屋で食べるキャベツってなんであんなに美味しいのだろうか。友達や仕事の人と行くときも肉よりもキャベツを焼いては食べ、焼いては食べを繰り返す女だった。

いいタイミングでお酒が来た。
決めていたものをそれぞれ注文すると、電話対応してくれたであろう女将さんが「キャベツは一人前くらいにしときますか?足りなかったら追加するので」と提案してくれた。
確かに一人だと胃の入りようが分からないし残すのは忍びない。心遣いに感謝してお願いした。

自分のペースでちびちびとお酒を飲みながら、次々とくるお肉。
これを全部独り占めできるのかと思ったら店員さんの前でもにやけてしまう。

ユッケについていた玉ねぎを一緒に黄身と混ぜていただく。
玉ねぎの辛味が全くない。そして、ユッケが本当に美味しい。ユッケ特有のタレの中にもちゃんとお肉の味がしっかりある。

牛タンも中落カルビも分厚い。

私史上初の分厚い牛タン

「タン=薄い」という偏見が崩れた瞬間だ。気持ちの良い噛み応え。タレをつけずそのままも、タレをつけても最高に美味しい。
中落カルビはびっくりするほど柔らかかった。脂の甘さが口全体に広がる。これは食べても全然気持ち悪くならないし胸焼けもしない。ひたすらにお肉の美味しさを味わえた。

牛タン、中落カルビ、キャベツ、酒を順々に口に頬り続けて一時間が経とうとしていた頃、キャベツをおかわりする。
食べたいものを食べたいときに食べたい分だけ。いいな、一人。

ほろ酔いになってきたところで最後にデザートを注文。
お店がおすすめしている阿蘇バニラのきな粉と黒蜜かけにした。

お肉もキャベツも全部平らげたタイミングで運ばれたアイス。
口に入れた瞬間、これは頼んでよかったと幸せを嚙み締めた。

大学時代は月一ペースで焼肉食べ放題のあるチェーン店に友人と行っていた。もとを取りたい!と時間90分の中、少し無理して食べるときもあった。恋人とは29日が交際記念日だったこともあり、特に行きたいところがなければ記念日だからという口実で焼肉をまた食い意地しか張ってない二人で少し気持ち悪くなるくらい肉を食べていた。

これはこれで凄く楽しかった。
けど、一人が楽しくないという根拠にはなりえない。
一人は一人の楽しさがあった。
ゆっくりと自分のペースで好きなものを好きなだけ食べれる。誰が焼くとかの気遣いもいらない。デザートのタイミングも見定めなくていい。

一人で行動するのも悪くないな。

枕崎に移住してからというもの、プライベートな時間はほとんど一人で過ごすことが多い。休日になれば外に出て人に会う生活だった移住前とは全く違う生活をしている。

大学時代前半期は友達が少なくて、友達とわいわいしている人を見ると、住む世界が違うのだと羨ましく思いながらもそうなれるように行動するわけでもなく、大人数は苦手と言い聞かせて諦めていた。一人でカラオケに行ったり買い物に行ったりする程度でそれ以外はひたすら家だった。

大学時代後半期は人生の転機。NPOの活動で一気に交友関係が広がり人と過ごすことが多い毎日。住む世界が違うと思っていた大人数で楽しくわいわいの中に自分がいることも増えた。社会人になってからも勝手に個人企画を開催して撮影会したり古着販売会したり。

そして、移住し始めて人とのかかわりが少なくなった今。
ちょうど今の自分に必要な環境だと思う。
人といると、人と向き合うことで自分と向き合うこともできるが、自分自身としっかり向き合うことは少なくなっていた。
でも今、一人になって自分と向き合う時間が増えて、今後どうしていきたいのかとか本当は自分は何をしたいのか、第一優先がなんなのかとか漠然としていたものが徐々に形になってきているように思う。

今は、私の人生でいうデトックス期なのだろう。

大勢で楽しむ楽しさを知った大学時代と自ら選択して一人で楽しむ本当の楽しさを知り始めた社会人二年目の今。
これからは、今まで以上にいろんな楽しみ方を選択しながら人生を謳歌できる気がする。

来月は一人居酒屋かな。
新しい挑戦に胸が躍っている。

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