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1曲から紐解く作り手とのリンク(心に遺るゲーム音楽"後編)"

『テイルズオブファンタジア』
「伝説のRPG」と謳われた本作は、時を重ねた後
業界にとっても伝説となったのではと思う。

別のモノと思っていた点と点が線として繋がった時の高揚感は、何にも代え難い歓びである。

はじめに

これは『心に遺るゲーム音楽』の"後編"です。
※本題はタイトルが思い付かず、ちょいちょい変えてます。

しかし前編との繋がりはゼロです(笑)

本来は曲とそのゲームの話しをするつもりでしたが予てから書いていた別の記事とたまたま合流してしまいまして。

実体験と当時の想いと記憶を元にしております。
記憶違い、認識の差異、時間軸の矛盾があったら申し訳ありません。

知られざる…なのか、知る人ぞ知る…のか。
自分には分かりませんが…。
Wikipedia等で多少裏を取りつつ、初めて超長尺でゲームタイトルについて語ってます。

曲の話しと云うよりゲームの話し、
そこから身の上話しや人生訓と話題が跳躍します。

あくまで「当時のコドモの目から見た昔話(思い出話)である」事をご承知置きください。


では、まず曲をご紹介しましょう。

テイルズオブファンタジア / TAKE UP THE CROSS

※曲の雰囲気を覚えておいてください。

テイルズオブファンタジアはテイルズシリーズの記念碑的第1作目として1995年12月にスーパーファミコンから発売されました。

この曲はその『通常戦闘曲』です。
RPGにおいて通常戦闘曲は最もプレイヤーが聴く作品でしょうから心に刻まれやすくもあります。
つまり花形のようなモノだから、コンポーザーにとっては相当難しいオーダーであるはずです。

戦闘曲はクリエイター生命そのものを賭けるが如く、その人らしい、その人にしか出来ない珠玉の1曲として創られている。と、思います。


リリースした時の背景

この"1995年"と云う年はゲーム業界にとってもゲームユーザーにとっても"アツい年"だったように感じてなりません。
※世の中的にも大変な年でした。

何故なら、その年にコンシューマー機(家庭用ゲーム機)で出たソフトは、

クロノトリガー、ドラクエ6、ロマサガ3、
天地創造、タクティクスオウガ、聖剣伝説3、
風来のシレン、フロントミッション、
ドラキュラXX……etc

…と超大作ばかりがリリースされた年。
"RPGはスクウェアとエニックスの独壇場"と化している時代を知ってる方は

「まさかこの2社が合併する」なんてニュースが報じられた時、さぞかし驚いた事でしょう。

そんなタイミングで"このRPGの牙城"に老舗ナムコ(現在はバンダイナムコ)が挑んだ新タイトルが「テイルズオブファンタジア(以降TOP)」です。

結果的に販売本数25万本と奮ってはいないのですが本作は多くのユーザーの心を掴み、"ナムコらしい"新しいRPGのカタチを世に知らしめてくれたと思えます。

TOPのスゴいトコロ

そうそう、僕はかなりのナムコ贔屓です(笑)

このゲームは様々な点で素晴らしいゲームだったと評価しています。

まず、なんとオープニングで"歌が聴こえる"
それもスーパーファミコンで。
それだけじゃなくてキャラクターが"戦闘中に喋っている"

この演出にはとても驚きました。
声については後ほど紹介します。

更に戦闘システムも非常に斬新でその名も「リニアモーションバトル(=一直線上で行動する戦闘)」により、ボイス効果と相まってアクション性に富んだ、画期的なシステムでした。

当時を振り返ると、そこに至った開発の意図が見えてくるように感じます。

家庭用機はほぼRPG一色に染まっていた中で、アーケードゲーム…つまりゲームセンターは格闘ゲームに染まっていました。
この年に稼働したタイトルと云うと、

鉄拳2、餓狼伝説3、
サムライスピリッツ斬紅郎無双剣、
ストリートファイターZERO

既に格闘ゲームブームの第2章に突入しているほどで、SNK、カプコン、セガやナムコと、こっちはこっちで"しのぎを削る"戦いが起きていたわけです。

恐らくこの格ゲー的なスピード感や判断力、反射力の要素を入れたくてこうしたのだと思います。
そう思うのはキャラクターが繰り出す技名や特性が裏付けてくれていて、

魔神剣=飛び道具・虎牙破斬=対空攻撃
秋沙雨=連打攻撃・獅子戦吼=突進攻撃

例えば空を飛んでいる敵に対して虎牙破斬で落とし、秋沙雨でたたみかける…と云った事が出来たりもしたんですね。
更に2つの技を合わせた奥義もあったりと、アクションを伴いながらも飽きづらい戦略性に富んだ戦闘シーンの魅せ方と云えます。
(ゲーム終盤はアクションが逆に面倒で、結局飽きそうだった(笑))

シナリオにしても秀逸です。
世代を経て、時空を超える闘いと云う王道。
北欧神話ベースの純正ファンタジーを彷彿とする設定の上での王道。

一見して重厚な物語のようにも感じるが、これはキャラクターデザインの藤島康介さんのタッチだからこそ良い意味で裏切り、それぞれが際立つストリングスになっていると感じます。

更に"コドモからオトナへと変化する心象風景、そして機微"
これは"声がある点"が功を奏しています。
スーパーファミコンに声を入れると云うのは、当時に於いて不可能ではないにしてもあまり見かけない部類だったと感じます。
入れたとしても一部の掛け声で、そこまでキレイに音は出せなかったです。データ容量の問題もあったんじゃないかなと。
ただ声が入っているゲームがそれまで無かった訳ではなくPCエンジンの天外魔境でCD-ROMを使った、アニメと見まごうような声の掛け合いはありました。

そのPCエンジン等の要素をスーパーファミコンに持ってきた…と云うところでしょう。

声が入る良さですが、声から得る情報(先入観)により主要登場人物の性質を"文字ではない音の起伏で理解してもらう"のは、プレイヤーという主観でありながらオーディエンスとして物語を俯瞰出来る要素ではないかと思います。

セリフと云う面で声をゲームに入れ込むそれをスーパーファミコンと云うROMカセットで歌も入れつつ、割としっかり吹き込めているのはスゴいと感じましたね。

以上がTOPのパーソナルでスゴいと感じる点であり、これらの評価が高いからこそ色々なプラットフォームでリマスターされたのではないでしょうか。

数年後、繋がる点と点

僕がTOPをプレイしたのは発売当初。そこから時は流れゲーム機はPlayStationに変わり、続編が産まれた。

それもまた名作です。
そしてある時、前評判の良さでたまたまプレイした"テイルズシリーズとは別のタイトル"にハマった時、何かに気付いた自分が居ました。


皆さん、先程の曲の印象は覚えていますか?


それを踏まえてお聴き頂きたい。

ヴァルキリープロファイルの通常戦闘曲
「未確認神闘シンドローム」

これを聴いた時に「TOPの曲と似ている」と思いました。

ヴァルキリープロファイルは1999年、トライエースから発売されたこれもまた「伝説のRPG」と形容出来る作品です。

ネット文化もそこまででは無かった時代。
調べる術はあまりありません。

説明書に書いてあったのかもしれませんが、そんな事に気付かず僕はここで「スタッフロールを見るだけの為に」必死でクリアしました。

以前から"クレジット(スタッフロール)"を必ず見る事はアニメを観る時にやっていました。
そうやって就職先(アニメ制作会社)を探したくらいです。

…すると、相部屋の弟が言いました。

「これスターオーシャン2(SO2)の曲にも似てるよ」

スターオーシャン2の通常戦闘曲
「Stab the sword of justice」


SO2はヴァルキリープロファイルの1年前に発売されたタイトルでエニックス好きの弟がやっていたものでした。

互いに調べて行き着いた先は、

桜庭統(Motoi Sakuraba)と云う方でした。

僕はテイルズ、弟はスターオーシャンと云うそれぞれ「近いし別物(パクリだと思ってた)」としてやっていたモノが繋った瞬間です。

元が同じなら、近いモノがそりゃ出来るなと。

トライエースと云う社名をスーパーファミコン時代から知っていた人がどれだけ居ようものか。

※ここからは当時の身の上話しです。

2000年1月。
僕は当時卒業間近の就職生で、直ぐ様そこに飛び込みました。
これまでボロカス言われた中で得た経験を活かした新しい企画書を携えて。

既にアニメーション会社に内定は決まっていました。でもきっと諦められなかったのでしょう。

電話したその日に履歴書と企画書を郵送し、暫く経つと面接が決まりました。
プレゼンテーションしに来いと。

当時あまり行った事の無い中野坂上に行くと、狭いフロアで大量のパソコンにかじり着く勇者たちが居ました。
写真ではない、初めて生で見た戦場です。

僕は面接で思いの丈の全てを話し、そして聞いた。

その時知ったのが「日本テレネット」と云う会社の事です。

スキの原点たるモノ

TOPを作ったのは厳密にはナムコでは無かった。
作ったのは日本テレネットのウルフチームと言われる人たちで、紆余曲折ありトライエースが生まれスターオーシャンを作った事を。

日本テレネットはパソコンゲーム、PCエンジン、メガドライブのソフト開発もしていた。
TOPのポテンシャルも頷ける。

そうか、元は同じトコロから始まったのか。

僕の「スキ」は同じ人たちから作られていたのか。

こんなに嬉しい事はありません。

ですが残念ながら試験自体は落ちました。

面接官に言われました。

「百舌鳥くんの企画の熱意はスゴいけど全然浅いし、僕ら好みじゃない」

恐らく会社の色と違う…と云う意味合いだと思います。
ボコボコにされたのは言うまでも無いが、ただそこにはこれまでに無かった「本気なら這い上がって来い感」があったように思えます。

当時は特にベンチャー企業が目立った。
ゲーム会社も小さい所はそうでした。

年齢性別関係なく"実力"です。

今になったから分かる事ですが、
育てはしない、イチから面倒も見れないのは、
今、そこに掛けるカネも時間も無いからだと。

彼らはただ「最高のゲームを作りたい」のだと。

その後に「ウチはムリだけどヤル気があるなら」と教えてくれた社名がありました。

識ると視える製作者の経脈

教えてくれた会社は、メディアビジョンでした。

僕は知っていた。そこがワイルドアームズ(WA)を作っている会社だと云う事を。

その頃、ファミ通か何かでスタッフ募集をしていてたからです。
チラシがWA1のジャケットに近いデザインだった覚えはある。

WAは大好きで近年リリースしたセカンドイグニッションももちろん兄弟共にプレイしていました。

そこで更に知る事になります。
メディアビジョンも日本テレネットから独立された方たちでした。
当時でどれだけの方が知っているか分かりませんが、少なくとも僕はこの時全く知りませんでした。

日本テレネットに居た方の中には桜庭統さんがおり、そしてWAの曲を作られた"なるけみちこ"さんもそうです。

また「アンチRPG」と謳われた、ドラクエやFF等を風刺する「moon」と云うゲームを作られた"西健一"さんも。
(moonはラムネ&40好きの自分は大層ハマりました)

ちなみにこれは、教えてくれただけで紹介ではありません。
話の流れでたまたま聞いただけの事です。

そこからと云うモノ、クリエイターの経脈を辿りながらゲームをプレイする事がとても楽しくなりました。

裏方を知ると作品の個性も似てくる。
それが好きな作品なら、その人、そのチームが作るモノも自分好みだったりする。

そして、それが続きモノでも違和感を検知出来るようにもなる。

これは更に後の話……。
WAが5になって雰囲気が変わった気がした。
全体的にそんな印象があるのはプレイされた皆さんはご存知だと思いますが…特に気になったのが
曲でした。

調べてみると、なるけさんでは無かった。
その方と云うのが" 上松範康"さん。
(ちなみにシナリオは黒崎薫さん、るろ剣の和月伸宏さんの奥さんです)

上松さんは後にWAを作った金子彰史さんとタッグを組んで、戦姫絶唱シンフォギアをやる事になります。最初の方は観てました。

この考え方は様々なモノに使え、今僕それで「スキな系統のモノを出来るだけ漏らさず」視聴出来ています。


線路は続くよどこまでも

結局、メディアビジョンは受けていません。

その時はもうココロが折れていたから。

僕が就活で受けたゲーム会社は大手とそして自分が知る限りの会社、すなわち知識の全てでした。
説明会や試験の為に親に交通費を借りて日本各地に行ったたのは思い出でもあり、トラウマです。

迷惑を掛けられないコドモながらの思いもありながら、相反して"既にこの道は(親の願いから)違えたから"と夢に生きたい気持ちもある。

アニメはまだ歴史があるし業界大手だったから良かったが、ゲームはどうだ…。
僕を取り巻いた環境はそんな時代です。

実は一度高卒間際に(1997年)の時に黙ってSNKとタイトーを受けて合格していました。
もちろん進学があり、ケンカしてもダメでした。

そんな葛藤がありました。

もしかしたらトライエースで面接した人はスゴい方だったのかもしれない。
唯一の武器である熱意を押せばどうにかなったかもしれない。

受かったかもしれない。

しかし当時の無知な自分。
その癖に自尊心が無駄にある、知った気でいたマヌケと言ってもいい。

僕はコドモ時代の終わりと共に、かねてから追い続けた夢を終えました。

しかしゲームを作る事への望みを絶った訳ではありません。

アニメーション会社で働いた後、僕はゲーム会社に入りました。

ただ、ゲーム開発ではありません。
ゲームを通じて皆さんに遊びを楽しんでもらうエンターテイナーとしてです。

自らがゲームの世界の一部になった…と云う感じでしょうか。

その後、マシン自体の仕組みが気になり、アミューズメントゲーム機を直すメンテナンスにも携わりました。

結局なんだかんだでゲームが好きで"ゲームを通じて届けたい想いや遊びのカタチ"を提供したかったんでしょうね。

この曲に出逢わなければ、きっと得られなかった境地だと僕は思っています。

楽しみ方は人それぞれ。
時代は違えど想いの源流はきっと変わりません。

"かつてコドモだったオトナたち"がゲームに限らずそう云う気持ちにあった時を懐かしんでくだされば嬉しいです。

そして、僕も親です。
「これからオトナになるコドモたち」の夢と云う芽ををオトナが摘む事の無いようにしましょう。

編集後期

加筆修正を重ねる内に文章量が膨れ上がりました。
合流した記事の制作と合わせると、空いた時間に細かく書いて執筆期間に3週間……だいぶ掛かりました。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

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