思考の空き容量
やらないといけないことが増えるとやりたいことを考える余裕がなくなる。
これは日本にいた時に実感したこと。
日々のタスクに追われ続けて、将来とか好きなこととか、どんな研究をしたいかとか、そういう前向きなことを考えられなくなる。
そして目の前のものをひたすら消化し続けるだけになる。
スイスに来て、かなり時間に余裕を持てるようになりました。
土日は基本的に休みだし、ラボワークも9:00-18:00だし。
でもやはり、タスクが集中する時期はやってくる。
この1月がまさにそれ。
インターンの高校生のお世話に始まり、風邪でお休みのポスドクさんの実験サポート、国際学会の要旨を登録し、神戸でやり残したデータが届いたので解析をはじめ、こっちでの新しい解析用データが届き...
そんなこんなで実験しながらも完全に実験に集中しているわけではなく、頭の片隅では違うことを考えている (まぁ、実験といっても難しいことしてるわけではなく、DNA抽出とかPCRなので、寝ててもできるんだけど)。
あの論文の書き出しはこっちに変更しよう。
この実験が終わったら要旨の登録をしよう。
あのデータの解析方法は確かこれでよかったはずだよね...
あ、じゃぁこのデータも論文に入れられるんじゃないかな...
そんなことを考えながら作業するから、昨日は寝ててもできる電気泳動で謎レベルの失敗をかましてしまったけど(電源のさし間違いに気づかず放置...)。
でも、研究者として本当に考えないといけないのは、先のこと。
今の研究が終わったら何をするか。
手元にある現象のどこがどんなふうに面白いのか。
その現象にはどのアプローチで切り込むか。
先行研究で報告があるかどうか。
自力でどこまでできて、誰の協力を仰がないといけないか。
それは将来の研究者としてのテーマにつながるのか。
もしくは片手間レベルの趣味のものか。
コムギ遺伝学をやっている以上、「これやろう!」と決めてから材料を集め始めると時間がかかって仕方がないので、事前にアンテナを張って、ちょっとでも面白くなりそうなことは材料作りを初めておかないといけない。
だから、夢が膨らむ話を考えられる余裕を持ち続けないといけない。
土曜日の昼下がり、誰もいない快適な研究室で昨日の失敗をやり直しながらそんなことを考えたのでした。
ここ数週間はそんな余裕がなかったので、今週は消化できるだけのタスクを消化して、ちょっとずつ思考の空き容量を増やしていこうと思います。
写真は先週木曜日の雪の日。すっかり雪化粧を施されたキャンパスの裏庭。
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