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【信念】凄いな久遠チョコレート!映画『チョコレートな人々』が映す、障害者雇用に挑む社長の奮闘

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”凄い会社”の”凄い社長”の物語!久遠チョコレート・夏目浩次が覚悟を持って臨む「障害者雇用への挑戦」を映し出す映画『チョコレートな人々』

物凄く良い映画だった! 思いがけず素敵な作品に出会えたという感じである。しかし理由は後で書くが、こんな素晴らしい映画を危うく見逃すところだった。映画のタイトルが、非常に悪いのだ……。

映画『チョコレートな人々』は東海テレビ制作のドキュメンタリーである。そして、東海テレビ制作の映画は配信やDVD化がなされていない。本作上映後に監督の舞台挨拶があったのだが、その中で「東海テレビのドキュメンタリー映画は映画館での上映しかやらない」と語っていた。ポレポレ東中野というミニシアターとの縁でドキュメンタリー映画の制作を始めることになったらしく、そのこともあって配信等はやらないのだ、と。

なので、観るためには劇場上映されるのを待つしかない。なので、もしも観られる機会があるなら是非観て欲しいと思う。とんでもない人物がとんでもない挑戦を成し遂げ、さらにそれを押し広げようとしている様が映し出される作品であり、なかなか異端的な改革者である。このような人物のことは、知識として知っておいた方がいいだろう。

「障害者雇用」のために奮闘し続ける夏目浩次の凄まじさ

映画『チョコレートな人々』は、夏目浩次という人物を追う作品だ。彼は「久遠チョコレート」というチョコレートブランドを展開している。

彼が手掛ける会社の凄まじさは、なんと言っても障害者雇用の数だろう。なんと、全従業員の6割が障害者なのだ。また、シングルマザーなど女性の雇用にも力を入れており、全従業員の9割が女性であるという。恐らく従業員のほぼすべてが、「男性の障害者」「女性の障害者」「女性」のいずれかに分類されるのではないかと思う。

会社の規模は決して小さなものではない。今では、全国の福祉事業所と提携しながら、北は北海道から南は鹿児島まで57の拠点を持ち、年間16億円の売上を有する企業になっている。それを、ほぼ「障害者」と「女性」だけで成り立たせているのだ。もちろん搾取などしていない。全従業員に対し、それぞれの都道府県における最低賃金を保証しているのである。

夏目浩次はとにかく、「障害のあるなし関係なく、誰もが同じように働ける環境をどう作ればいいか」を日々考えている人物なのだ。なにせ、彼が「チョコレート」という商材に辿り着いた理由がなんと、「障害者を雇用する場を作るため」だったというのだから、その信念たるや凄まじいものがあると思う。

彼が障害者雇用に力を入れるきっかけとなったのが、大学時代の経験だ。彼はバリアフリー建築について学んでいたのだが、その過程で障害者の低賃金の実態を知った。なんと、1ヶ月働いても5000円程度しかもらえないというのだ。その現実を知った夏目浩次は、「そんな世界はおかしい」と考える。そして、「だったら、障害があっても働ける場を自分で作ればいい」と決断したのだという。

彼が最初に始めたのはパン屋だった。3人の障害者を雇い、夏目浩次を含めた6人で店を回して最低賃金の給料を出すという計画だ。しかし、やはり現実は厳しかった。彼は結局最後まで、自分の分の給料を出すことが出来なかったそうだ。銀行がお金を貸してくれなかったため、消費者金融のカードを6~7枚持ち、数千万円の借金を抱えてもいた。とてもまともな状態とは言えない。その後も、障害者雇用が実現出来るようにと様々な事業に挑戦するも、なかなか上手く行かずにいた。

そのような状況にあった2014年、彼はようやくチョコレートに辿り着く。トップショコラティエ・野口和男と出会ったのである。そして、彼からチョコレートについて学ぶことで、「これこそ、障害者雇用に最適の商材だ」という考えに行き着いたのだ。

まず、チョコレートの製造にはかなりの工程数があり、それぞれに異なる技術が必要とされる。もちろん、それをすべて1人でやろうとすれば大変だ。しかし、すべての工程を分業制にして、それぞれの障害者の特性に合った配置をしながら得意なことをやってもらえれば、誰もが働ける職場が作れるはずである。

さらにチョコレートは、工夫次第でいかようにも付加価値を付けることが可能な商材なのだ。パンはどうしても値段を上げて販売するのが難しい商材で、だから利益率が低かった。しかしチョコレートならやりようがある。

その力がフルに発揮されたのが、大阪・北新地に出店した際の営業活動だろう。北新地は日本有数の歓楽街だが、そのすぐ傍には貧困で苦しむ人が多く住む西成区がある。そこで夏目浩次は、「売上の一部を使って子ども食堂を開く」ことを考えるのだ。

しかしそのためにはまず、北新地の店でチョコレートをたくさん売らなければならない。そこで夏目浩次は、「座って1万円」と言われるような北新地の店へと出向き、「子ども食堂を開きたいから、店のお客さんに『あそこの店のお菓子がほしい』みたいなことを言ってくれるとありがたいです」と営業する。余裕のある金持ちから金を”奪い”、その金で子ども食堂を開こうというわけだ。

こういう戦略が可能なのも、チョコレートという商材の持つ可能性と言えるだろう。

あらゆる観点から”理想的”と言える「チョコレート」に出会ったことで、夏目浩次の計画は大きく進む。「障害者を適正な給料で雇用する」という、普通にはなかなか実現出来ないだろう難題をクリア出来る可能性が拓けてきたのだ。

このように夏目浩次は、首尾一貫して「障害者のための職場作り」を目標に掲げ、どんな困難があろうとその信念を曲げず、さらに苦労の末に軌道に乗るようになってからも当初の目標を見失うことなく、自らの信念をさらに広げようと事業を展開していくのである。

本当にこんな人がいるものなのかと驚愕させられてしまった。

障害者一人ひとりに合わせた対策を細かく考える

そんな凄まじい事業を展開している夏目浩次だが、やはり批判的な意見を浴びせられることも多いという。「障害者雇用」など絵空事だと考えている人たちから心無い言葉が届くのだ。

その中に、「障害者って言っても、軽度の人たちを雇っているだけなんでしょ?」というものがある。この意見は、かなり多く寄せられるそうだ。夏目浩次はそういう捉えられ方を払拭すべく、新たに「パウダーラボ」と名付けた場所を作った。ここは、重度の障害を持つ人たちが働く場所である。映画では、そこで働く障害者の人たちにもカメラを向けたり話を聞いたりするのだが、確かに「本当に働けるのだろうか?」と感じてしまうような、見た目にも分かるほど重度の障害を持った人たちだ。

夏目浩次の凄い点は、「環境に人を合わせる」という発想を基本的にしないことだと言えるだろう。徹底的に「人に環境を合わせる」というスタンスを貫いていくのだ。

例えば、自分では抑えられない「チック症状」によって突発的な行動を取ってしまう青年がいる。彼は衝動的に、床をドンと蹴る行動を取ってしまうのだ。そのパウダーラボは2階にあったため、1階のテナントの人から「もう少し静かにやってもらえないか」と要望が来てしまったのだという。

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