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【驚異】ガイア理論の提唱者が未来の地球を語る。100歳の主張とは思えない超絶刺激に満ちた内容:『ノヴァセン』

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正直「物凄く胡散臭い」と感じた「ガイア理論」の話は、AIや地球外生命体の話にも繋がる超面白い話だった

とにかくこの本からは「胡散臭さ」しか感じられなかった

本書を手にとった理由は、帯のコメントを落合陽一が書いていたからだ。というか正直、落合陽一のコメントがなかったら絶対に読まなかったと言っていい。

落合陽一のコメントを除くと、帯にはこんな風に書かれている。

<超知能>が地球を更新する

100歳の大家が放つ、衝撃の未来像。従来の生命観を覆す「ポスト・ガイア理論」!

なかなかの胡散臭さではないだろうか。正直、何の本だかさっぱり分からないし、『ノヴァセン』というタイトルも、この固有名詞を知らなければなんの情報も与えてくれない。

そして、中身も負けず劣らず胡散臭いのだ。日本語版解説を書いている佐倉統氏は、本書のテーマである「ガイア理論」をこんな風に要約している。

地球はひとつの巨大な自己調整システムであり、すなわち生命体のようなものだ

とても科学者の主張とは思えないだろう。本書に序文を寄せているブライアン・アップルヤードは、「著者が語るガイア理論を理解できなかった」と書いている。著者も、自身が提唱した「ガイア理論」について、

英語圏の地球科学や生命科学の専門家たちのほとんどに受け入れられなかったのは事実

と書いているほどだ。まあそうだろう。ちょっとまともな主張とは思えない。

普通に考えれば相手にされるとは思えない理論のはずだが、「ガイア理論」は無視されずに済んだ。というのもこの著者、とんでもない経歴の持ち主なのである。

本書の著者ジェームズ・ラヴロックは何者なのか?

本書には、著者の功績を紹介するこんな文章がある。

英国王立教会フェローに選出された際、その理由として挙げられた彼の業績は呼吸器感染症に関する研究、空気滅菌、血液凝固、生細胞の凍結、人工授精、ガスクロマトグラフィーなど多岐にわたりました

研究者として様々な賞や学位を授与されているし、気候科学や地球外生命体の研究など、扱う対象も幅広い。

そう、とにかく凄まじい功績を持つ偉大な科学者であり、そんな科学者の主張だからこそ「ガイア理論」は無視されなかったのだ。現在では彼の発想は受け入れられているという。

相当に著名な科学者なのだが、彼の凄まじい点は「研究による成果」だけに留まらない。その研究スタイルが、普通ではあり得ないものなのだ。

それ以来わたしは、企業や政府機関からの依頼による仕事で得た収入と特許のロイヤリティによって生計を立ててきた

著者は、大学や研究所に所属しておらず、まったくの個人として研究を行っている。研究資金もすべて個人で集めたり稼いだりする、一匹狼の科学者なのだ。

SNSやクラウドファンディングなどが発達している現代であれば、このようなスタイルの研究も成立するかもしれない。しかし、この記事のタイトルでも触れたように、この著者、御年なんと100歳である。執筆時点で99歳であり、本書は100歳の誕生日に合わせて出版されたのだ。つまり、SNSもクラウドファンディングも、それこそインターネットも何もない時代から、個人で研究し続けているのである。

その事実も凄まじいし、何よりも、99歳で本書を執筆したという点に驚かされてしまう。解説の佐倉氏も、

著者名を知らずにこれが30代の新進気鋭の学者が書いたものだと言われたら、ぼくはなんの疑いもなく信じたと思う。

と書いているが、本当にその通りだ。100歳でもまだこれほど斬新な発想と思考を展開できるというのは、驚きでしかない。

本書は、そんな超人的とも言える科学者が執筆した作品なのである。

「ガイア理論」が示す「自己調整システム」について

本書で著者は、AIについて非常に興味深い論考を展開させるのだが、それを理解するためにまず、「ガイア理論」の主張をざっと理解しておこう。

先程「ガイア理論」について、「地球は巨大な自己調整システム」という要約を紹介したが、ここで出てくる「自己調整システム」について詳しく書いていこう。これは、地球の表面温度に関係する話である。

事実、これまでの35億年で太陽の熱の放射量は20パーセント増えた。これは地球の表面温度を50℃まで上げるのに相当する量で、そうなれば温室効果は上昇の一途をたどり、地球を不毛の地へと変えていたはずだ。だがそんなことは起こっていない。確かに温暖期があり氷河期があったものの、地球の表面全体の平均気温は現在の15℃から上下約5℃の変化しかなかったのだ。
これがガイアの働きだ。

著者が言う「ガイア」というのは、ざっくり「地球」のことだと思えばいい。著者は要するに、「普通なら、太陽の熱を取り込んだ地球はもっと熱くなるはずなのに、地球の表面温度は大して変化していない」と主張しているわけだ。そしてこのような仕組みのことを「自己調整システム」と呼んでいる。

では、この「自己調整システム」はどのように作動しているのだろうか。この点に関する著者の主張は非常に興味深い。なんと「自己調整システム」は、地球上に存在する「生命」のお陰で実現している、というのだ。

本当のところ、地球環境は居住可能性を維持するために大規模な適応を行ってきた。太陽からの熱をコントロールしてきたのは、生命なのだ。もし地球から生命を一掃したら、あまりにも地球が熱くなりすぎて、もはや居住は不可能だろう。

つまり、「生命がいるお陰で、地球は熱くならずに済んでいる」というわけである。

さてここで、少しだけ別の話をしよう。

宇宙科学の世界には、「ハビタブルゾーン」という概念がある。これは、「生命が存在可能な宇宙の領域」のことを指す。基本的には、「液体の水が天体表面に安定的に存在できる条件」から求められるそうだ。それは、恒星からの距離や惑星の質量、自転速度、自転軸の傾きなど様々な要素によって決まる。そして、もし地球外生命体が存在するならば、「ハビタブルゾーン」の条件を満たす領域に存在するはずだ、と考えられているという。

しかし著者は、この「ハビタブルゾーン」というアイデアには欠陥があると主張する。

そうした知的生命が人間とまったく同じこと、つまりハビタブルゾーンにある惑星を探しているとしよう。この地球外知的生命体は水星と金星は除外するだろう。明らかに太陽に近すぎるからだ。だが地球もまた、太陽に近すぎるとして除外されるだろう。火星こそが、唯一条件を満たす星だと結論づけるはずだ。
地球は並外れた量の熱を吸収して放出しているので、ハビタブルゾーンの内側にあるとは見なされないはずだ。地球外知的生命体の天文学者は太陽系を眺め、金星と比べて地球の表面温度があまりに特異であることに驚きを隠せないだろう

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