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【感想】映画『レオン』は、殺し屋マチルダを演じたナタリー・ポートマンがとにかく素晴らしい(監督:リュック・ベッソン 出演:ジャン・レノ、ゲイリー・オールドマン)

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「名作」という評価ぐらいしか知らずに観に行った映画『レオン』にはのけぞった。ナタリー・ポートマン演じる殺し屋マチルダがとにかく素敵すぎる

もの凄く素晴らしい作品でした。映画館でしか映画を観ない私は、昔の名作がリバイバル上映される時にはなるべく観るようにしているのですが、まさかこんなに面白い作品だとは思わず、とにかく驚かされました。

「ナタリー・ポートマンの扱い」には問題があったかもしれないが、「マチルダの描き方」としては説得力を感じた

本作はとにかく、ナタリー・ポートマンが素晴らしすぎました。この点については、知り合いの女性も絶賛していたので、男女問わず、彼女には惚れ込んでしまうような何かがあるのだろうと思います。

ただその後、監督のリュック・ベッソンがセクハラで訴えられていることを知りました。また、本作『レオン』についても、「不適切な描写がある」と問題視されているようです。確かに、「不適切」と言われればその通りで、物議を醸す理由も分からないでもありません。そのため、「ナタリー・ポートマンがとても良かった」みたいなことは正直書きにくいのですが、しかしそのような事実を知ってもやはり、「ナタリー・ポートマンの凄さに圧倒された」という感覚は消えずにいます。

さて、まずはこの点について、私自身の考えを明確にしておこうと思います。

まず、「当時12,3歳だっただろうナタリー・ポートマンをどのように扱ったのか」についてはもちろん議論があるべきでしょう。そして、もし「『”当時”の”世間一般”の常識』に照らして適切ではない行為があった」のなら、何らかのアクション(処分なり処罰なり)があって然るべきだと思います。「”当時”の”世間一般”の常識」と書いたのは、「『”今”の常識』と比較するのは厳しい」という私個人の感覚と、「『当時の”映画業界”の常識』に照らすのは正しくないだろう」という判断からです。

一方で、「映画『レオン』という作品内における『マチルダの行動』」という捉え方をする場合、それは決して「不適切なもの」には思えないと私には感じられました。本作ではとにかく、冒頭からマチルダがかなり絶望的な事態に巻き込まれ、「頼れそうなのは、目の前にいる、よく知っているわけではない中年男性(レオン)だけ」という状況に置かれるのです。しかも、「この男性は、無条件に自分を助けてくれそうには思えない」という風にマチルダには見えています。

そのような状況では、たとえ13歳の少女だとしても、「自分の持てる”武器”を駆使して気を惹くしかない」でしょう。作中におけるマチルダの振る舞いは基本的に、そのような「生存戦略」と捉えるべきで、そしてそれは、あのような状況に置かれた少女にとって決して理解不能な行動ではないと私には感じられます。さらに本作の展開を素直に信じるのであれば、「マチルダはレオンに恋心を抱くようになる」わけです。であれば余計、「気を惹くための努力をする」のは当然と言えるだろうと思います。

だから恐らく、この物語が小説やマンガ、アニメであれば問題はなかったはずです。それを「『12,3歳の少女』を起用した実写」で制作したから問題視されていると考えるのが妥当でしょう(ただこの辺りの感覚は、日本と欧米でも異なると思うので、実際のところは分かりません)。もちろん先程書いた通り、「ナタリー・ポートマンの扱い」に何か不適切な部分があったのなら、それは「良くないことだった」と捉えて何らかのアクションがあるべきです。しかしそれはそれとして、「マチルダの行動原理」としては妥当だったと私には感じられました。

しかし本当に、凄まじい物語を提示しようとしているなと思います。なにせ先述の通り、本作では「中年男性のレオンと13歳のマチルダの間に”恋”は生まれ得るか?」という展開になっていくからです。観客は、「これは”恋”と呼ばなければ理解しにくい関係だ」という感覚になっていくと思います。しかし理性的には、「中年男性と少女の間に”恋”など存在するはずがない」と感じているわけです。観ているとこのような相反する感覚が生まれるわけですが、当然、そのままでは「素晴らしい作品だった」という評価にはならないでしょう。そして「良い作品」と感じたのであれば、「彼らの間に”恋”が存在する」という事実をリアルなものとして受け取っていると捉えるのが自然だろうと思います。

そしてとにかく、そんな風に感じさせるだけの演技をしているというのが、本作の凄さだと言えるでしょう。もちろん、レオンを演じたジャン・レノも良かったですが、やはりマチルダを演じたナタリー・ポートマンが圧倒的だったなと思います。

とにかくナタリー・ポートマンが凄まじかった

ここまでで私は、マチルダの年齢を「13歳」と表記してきましたが、それは鑑賞後に調べて分かったことです。映画を観ている時には、マチルダが何歳の設定なのか知りませんでした。彼女がタバコを吸っている場面があり、そこで年齢を問われて「18歳」と答えていたのが明らかに嘘だというのは分かります。しかし作中には、年齢をはっきり示唆するような場面はなかったはずです。なので後で調べて「13歳」だと知って驚きました。

設定年齢は分からなかったものの、マチルダがかなり大人びた存在であることは間違いありません。作中には、子どもらしくはしゃぐ場面もあり、そこでは子どもっぽさ全開なのですが、殺し屋としての訓練を受けている時などはかなり大人びた印象でした。普通、この両者のバランスを取るのは相当難しいと思うのですが、しかし同時に、本作『レオン』はそのバランスを絶妙に取り続けなければ成立し得ない作品でもあると言えます。

そしてそのかなり難しい均衡を、ナタリー・ポートマンが見事に演じていたというわけです。

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