見出し画像

【革新】映画音楽における唯一のルールは「ルールなど無い」だ。”異次元の音”を生み出す天才を追う:映画『すばらしき映画音楽たち』

完全版はこちらからご覧いただけます


映画に命を吹き込む「映画音楽」の歴史を追うドキュメンタリー

とても面白い映画だった。私は、自分で何か音楽活動をしているわけでもないし、そもそも日常的に音楽を聞くことさえあまりない。映画は結構観ているが、ドキュメンタリー映画や上映館が決して多くはないマイナーな映画を観ることが多い。子どもの頃から映画を観ていたというわけではないので、誰もが知る超メジャー作品の多くを観ていないままだ。

そんな私でも、「映画音楽」をテーマにしたこの作品はもの凄く面白く感じられた。

非常に印象的だったのは、誰かが発したこの言葉だ。

映画音楽のルールは一つだけだ。“ルールは無い”

映画を観ると、「なるほど」と感じさせられる。確かにルール無用の世界なのだ。そこにあるのは、「その映画に合った、最適な音を生み出す」という1点のみ。だからこそ、革命児・天才・異才など様々な才能が集まり、歴史に名を残すような仕事が生まれるのだ。

映画の中で、

映画音楽は20-21世紀が生んだ偉大な芸術だ。

と評していた人物がいる。何を以って「芸術」とみなすかは人それぞれだと思うが、映画の中で紹介されていたこのエピソードは1つ大きな示唆を与えるように思う。それは、「オーケストラを日常的に使っているのは映画音楽の世界だけ」という事実だ。もちろんオーケストラも公演など行っているだろうが、決して多くの人の目に触れることはない。オーケストラを丸ごと呑み込んでいるような存在とも言える映画音楽の世界は、「芸術」と言ってもいいのではないかと私は感じた。

この映画では、映画監督・作曲家・ミュージシャン・プロデューサーなど、実際に「映画音楽の制作」に携わる者だけではなく、映画史研究家や科学者など多種多様な人物が登場し、映画音楽について語っていく。また、様々な名作映画のワンシーンが挿入され、映画音楽が印象的に使われている場面も紹介される。

私は、音楽的なセンスや感覚がないので、映画で流れる音楽について何かを感じることがあまりない。だからこそこの映画のように、具体的な場面をセレクトし、言葉で解説をしてくれると、その凄さが改めて理解できると感じた。

「映画音楽」がどのような歴史の変遷を持ち、どのような革命を経て現在に至ったのか、興味深く知ることができると思う。

映画音楽の天才ジョン・ウィリアムズ

「ジョン・ウィリアムズ」を知らなかったとしても、彼が生み出した映画音楽を聞いたことがないという人はたぶんいないだろう。例えばあの有名な2音。

『JAWS』は、音楽がなければ、何が何だか分からない。

そう、誰もが耳にしたことがあるだろう、あの「ダーダン、ダーダン」という音。サメの登場シーンで印象的に流れるこの音楽を生み出した人物こそ、ジョン・ウィリアムズである。今では何の違和感もないだろうが、当時の常識では「無謀な実験」と思われたそうだ。しかし実際には、そのあまりに印象的なフレーズは多くの観客の耳に残り、大成功を収めることとなった。

彼の映画音楽は『JAWS』に留まらない。『スター・ウォーズ』『インディー・ジョーンズ』『ジュラシック・パーク』『ET』『スーパーマン』など、聞いた瞬間に誰もが映画のワンシーンを思い浮かべられる名曲を次々に生み出したのだ。

私は上述の映画を実際には観たことがない。この点も凄まじいと言えるだろう。先に挙げたタイトルでいえば、『インディー・ジョーンズ』を金曜ロードショーか何かで観たことがあるかもしれない、というぐらい。他の映画は、設定や有名なシーンは知っているが、全編を通して観たことは恐らくないと思う。それなのに音楽を聞けばそれが何の映画か分かるのだ。そんなの他に、日本のゲーム音楽ぐらいしかないだろう。私はゲームもほとんどやらないが、それでも、すぎやまこういち氏が生み出した音楽は聞けば分かる。

この点だけでも、映画音楽の凄さが分かろうというものだ。

映画において「音楽」の重要性はいかにして高まったのか

この映画では、映画史を紐解きながら、映画音楽がいかにして現在のような立ち位置になっていったのかにも触れていく。

映画は元々、「無声映画」から始まった。映像だけで音はなく、劇場に設置されたオルガンで音楽をつけていたそうだ。日本では、無声映画の内容を解説するために「活動弁士」と呼ばれる人たちが喋りで劇場を盛り上げたが、外国では主に「映写機の音」をごまかす目的で音楽がつけられたという。

そんな理由で導入された音楽だったが、映画人たちは次第に、音楽こそが力を有していると認識するようになっていく。

最初に映画音楽に革命をもたらしたのが『キングコング』だ。この映画で初めて、映画音楽にオーケストラが取り入れられたという。これは非常に革命的なことだった。

またそもそも『キングコング』は、音楽がないと作り物感が強く出てしまう。実際は着ぐるみなのだから当然だ。しかし音楽が加わることで途端に迫力が生まれる。『キングコング』はまさに、音楽の力を映画の作り手たちに実感させた映画でもあったのだ。

これ以降は、ブログ「ルシルナ」でご覧いただけます

ここから先は

2,203字

¥ 100

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?