宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節 秋・壱3
水に浸して柔らかさを取り戻した野菜と粗塩を入れただけの、質素な粥。しかしひとりではないせいか、妙に旨味を感じる。いつもより時間をかけて味わい、深遠は食器を置いた。
「ごちそう様。とても美味かった。重い荷物を背負っているだけのことはある」
「おかしな褒め方しやがって。でもいいや、深遠に褒められるなんて滅多にないからな」
「それなりに甘やかした気もするが」
「冗談だろ? 結界が何かもわからないガキに、心得だなんだって散々教え込んだくせに」
「必要だからな。知らなければ危険が及