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宿災備忘録-発

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信じる。信じない。教えてくれるものは、いない 生まれながらに災厄を宿した存在、宿災/しゅくさい その運命に生まれたものと、ともに生きるものたちの記録 自らの中に真実を求める、…
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#和風ファンタジー

宿災備忘録-発:第1章1話

■ あらすじ 山護美影は、山懐の町、湖野(コヤ)の御神体・九十九山に仕える祖母の元で育…

Luno企画
1か月前
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宿災備忘録-発:第1章2話①

山護美影 9月19日生 22歳 保護者であった山護美代とは血縁関係なし。他、親族不明。 …

Luno企画
1か月前
2

宿災備忘録-発:第2章4話

太陽が西に傾く前に、美影は家に戻るつもりだった。しかし未だ山中にて、久遠の背中を追ってい…

Luno企画
1か月前
1

宿災備忘録-発:第2章5話

湖野の中心地から少し離れた場所。バイパス沿いの食事処。美影は久遠とともに鷹丸が運転する車…

Luno企画
1か月前
2

宿災備忘録-発:第2章6話②

境内を離れ、鳥居をくぐり、石段を下りる。満車状態の駐車場。鷹丸はその隅へと歩を進め、準備…

Luno企画
1か月前
2

宿災備忘録-発:第2章7話

ビレッジツクモは、山岳信仰団体ツクモが運営する簡易宿泊施設。建設費の出資者は石寄。湖野の…

Luno企画
4週間前
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宿災備忘録-発:第2章8話

美影は香織の部屋で、ひとりテレビと向き合っている。普段、深夜番組は見ない。しかし今は、降り出した雨の音を意識しないよう、感覚を他に向けておきたかった。 香織の住まいは、湖野の中心部にある商店街にある美容室の2階。元々は、香織の伯母が暮らしていた場所。 コンパクトで使いやすそうなキッチン。テーブルの上には、香織が灯してくれたアロマキャンドル。キッチンと間続きのリビングは通りに面していて、今はカーテンがひかれ、外は見えない。家具の配置は機能的で、無駄と感じる箇所は見当たら

宿災備忘録-発:第3章1話①

月夜にいななく高らかに いずこいずこと高らかに 声 枯れ果てて風に嘆き 空をさまよい何も届…

Luno企画
3週間前

宿災備忘録-発:第3章1話②

平静を装う美影の隣で、鷹丸は短くなったタバコを携帯灰皿でもみ消し、最後の煙を吐いた。タバ…

Luno企画
3週間前
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宿災備忘録-発:第3章2話

湖野の中心部から離れた高台に建つ、老人介護施設。鷹丸は、雨が弾ける駐車場を横切り、半ば駆…

Luno企画
3週間前
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宿災備忘録-発:第3章3話

香織の美容室。店内にいるのは、香織と中森、2人だけ。リクライニングチェアで仰向けになり、…

Luno企画
3週間前
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宿災備忘録-発:第3章4話

山護美影についての報告書 山護美影の出自について、湖野の産院で半世紀近く助産師を務めて…

Luno企画
3週間前
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宿災備忘録-発:第3章5話①

九十九山。雑木林の只中。雨音が空間を満たしている。鳥も虫も、木々の枝葉も、全てが雨に主役…

Luno企画
3週間前
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宿災備忘録-発:第3章5話②

「私、あそこを開けて、あの中に」 言葉の途中で、美影は駆けだした。確かめなければならないことがある。玉砂利を鳴らして走り、祠の裏手へ。 「こっちも閉じてる……私が?」 「閉じたのは、久遠です」 灯馬が横に立った。 「美影、あの夜のことを、貴方の口から教えてくれますか?」 灯馬に頷きを。久遠もそこにやってきた。取り戻した記憶を、美影は2人に伝えた。 降りだした雨 高揚していく気持ち 誰かが呼んでいる 呼んでるのは誰? 外に出た 雨に触れた あの場