宿災備忘録-発:第2章8話
美影は香織の部屋で、ひとりテレビと向き合っている。普段、深夜番組は見ない。しかし今は、降り出した雨の音を意識しないよう、感覚を他に向けておきたかった。
香織の住まいは、湖野の中心部にある商店街にある美容室の2階。元々は、香織の伯母が暮らしていた場所。
コンパクトで使いやすそうなキッチン。テーブルの上には、香織が灯してくれたアロマキャンドル。キッチンと間続きのリビングは通りに面していて、今はカーテンがひかれ、外は見えない。家具の配置は機能的で、無駄と感じる箇所は見当たら