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ADHDと間違われやすいASD由来の先延ばし・不注意・衝動性について

「片付けられない」「つい先延ばししてしまう」「不注意が多い」「衝動的に行動してしまう」…これらは一般的にADHD(注意欠陥・多動障害)の特性と言われています。
ADHDの代表的著書であるサリ・ソルデンの「Women with Attention Deficit Disorder」の邦題が「片付けられない女たち」という非常にインパクトの強いネーミングになっているおかげで「私の部屋や机が散らかってるのは性格のせいでなくADHDという脳の障害なんだ」と片付けられないことに密かにコンプレックスを抱いていた多くの女性の安堵と共感を呼んだと思います。
小さい頃から部屋を片づけるのが苦手でよく親に叱られていた私も例外ではありません。

ところで、この一見ADHDの特性とされている「片付けられない」「先延ばし」「不注意」「衝動的」というのは、実はASD由来のものもあるのではと思っています。
それらはADHD由来のものと見かけ似ていますが、内面的な動機が違うように思います。しかし私のようにADHDとASDの併発型の場合はどっち由来かの区別をつけるのは体感的になかなか難しいと感じています。
それでもADHD向けの治療を受けてこれらの困り事が大して改善しない場合は、ASD由来の可能性を考えるといいかもしれません。

それでは「ASD由来と考えられるADHDっぽい特性」について順番に考察したいと思います。なお、以下の内容は私の体感なので全てのASD/ADHD当事者に当てはまるものでないことをご了承下さい。

ASDが片付けられないのは「物が多すぎる」可能性

ASDの「片付けられない」は「物が多すぎる」というものがあるように思います。
コレクター気質の傾向があるので、ついつい興味のあるグッズや本などを色々買い込んでしまいがちです。「私はこんなにたくさんコレクションしてる」と見せびらかしたい側面もありますが、本質的に「物を自分のそばに置く」ことに安心感を覚えるのが大きな要因と感じています。
一方で古いものを捨てることも苦手です。興味がなくなって何年も経っている物についても「まだ使えるんじゃないか」「将来また使うこともあるんじゃないか」と捨てる決断がなかなかできません。
物が多いと視覚的にも気が散ってしまい、特に集中力のないADHD併発タイプにはあまり良い環境とは言えません。

また全体よりも細部にフォーカスする傾向があるため、「客観的に最も散らかっている箇所」より先に「そんなに散らかってないけど個人的にとても気になる箇所」を片づけようとすることがあります。部屋のごく一部を完璧に綺麗にするのに時間がかかって疲れてしまい、他の箇所まで手が回らなくなることもあります。
傍から見ると、「何でそんなに時間がかかってるんだろう?」「時間をかけている割に大して片付いてないのは何故なんだろう?」と不可解に映るかもしれません。

ASDの先延ばしは不安感から

先延ばしもADHDの典型的な困り事と言われることが多いですが、ASDにも先延ばしはあります。
集中力に困難のあるADHDの場合は「興味がないものは取りかかれない/集中できない」というのが大きいと思いますが、ASDの場合はそれに加えて「どこから手をつけたらいいのかわからない」「わからないまま手を出して間違ってたら怖い」という不安感が大きいように思います。
私が小学生だった頃は作文や読書感想文がなかなか書けなくてよく担任の先生から叱られました。それこそ「何を書いたらいいのかわからない」が大きかったのが原因です。
同じ先延ばしでも、算数ドリルのような単純な宿題を「面倒くさい」「気が乗らない」となかなか手をつけられなかったのとは心の動きが違ってたように思います。

ASDの不注意は「脳内歩きスマホ」が原因

ADHD由来の不注意とASD由来の不注意の違いは「外部刺激の有無に左右されるかされないか」があるように思います。
仕事中誰かに話しかけられるとそっちに反応してしまい、話が終わった後に何の仕事をしてたか忘れてしまうのはADHD的であるかもしれません。ウェブ検索しようとしておすすめに出てくるニュース記事をつい見てしまい何を検索したかったのか忘れてしまう、というのもあるあるだと思います。
これに対してASDの不注意は「脳内でずっと考え事をして周りが視界に入らなくなる」という感じではないかと思います。正確には「視覚には入っているけど脳がビジー状態のため見たものを認識しない」という感覚です。
ちょうど歩きスマホをしているときと似た感覚でしょうか。実際にスマホを見てなくても脳内の考え事にシングルフォーカスしてしまうため周りに気づけず物や人にぶつかったり転んだりする羽目になりやすいです。実は今朝も電車の中でぼんやり考え事をして目的の駅をうっかり乗り過ごししてしまいました(笑)。
この「脳内の考え事」は不注意優勢型ADHDの「脳内の多動」と区別がつかない所ではあると思います。個人的には「一つのことをずーっと考えている」ときはASD由来、「考え事の内容が短時間でクルクル変わる」ときはADHD由来かなと思いますが、あくまで私の体感です。

ASDの衝動性はストレスから

ASDの衝動性はストレスで心に余裕がなくなったときに出てきやすいと感じます。例えば誰かにネガティブなことを言われると必要以上に動揺してキツい言葉で言い返してしまったり、物を投げたり、とっさに保身の嘘をついてしまうなどです。
ASDは大抵の場合、慢性的に「心の余裕が足りない」状態です。感情の言語化がスムーズに行かず心の中に溜め込む傾向があるというのもあるかもしれません。日頃「外モード」で表向き無難に冷静に振る舞おうしていますが、不意打ちを突かれるような場面に直面すると一気にパニック状態になって衝動的な言動をしてしまうのです。
これに対してADHDの衝動性はストレスの有無に関係なく「その場の思いつき」という感覚があります。「あっ今面白いこと思いついたから言わなきゃ」とウズウズしてしまう感じです。
このケースもその場のTPOをよく考えずに発言してしまうので、結局は「失言」になってしまうことが多いのですけどね。
「あっ今株がいい感じに下がってるから買わなきゃ」でその場で100万円注ぎ込んでしまうも「ウズウズ/ソワソワ」があるのでADHD由来かもしれません。

併発型はADHD由来とASD由来の両方がある

先述の通りADHDとASDの併発型の場合はこれら先延ばしや不注意、衝動性がどっち由来かの区別をつけるのは体感的になかなか難しいと感じています。
強いて言えば、ADHD由来のものは「頭の中がソワソワ/フワフワして落ち着かない」という感覚があり、ASD由来のものは「心の余裕が全くない/テンパってる」という感覚がある気がします。

「今自分の脳内は『ソワソワ』と『パニック』のどっちだろうか?」とモニタリングするのはなかなか難しいので、後で自分の行動を振り返った時に「あの時自分はこういう気持ちだった」と脳内の動きをレビューすると次の対策が立てやすいかもしれません。

定型発達者からすれば「それらをADHD由来とかASD由来とか区別する意味あるの?原因にこだわるより具体的な対策を考えるほうが良いのでは?」と疑問に思うとは思いますが、当事者にとってはどちら由来なのかを見極めることは特性をコントロールする上でとても大事なことだと思っています。ASD由来の不注意や衝動性にADHD向けの対策が効果がなかったら、やはりASD向けの対策が必要なのです。


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