「自閉スペクトラム症の女の子が出会う世界」について
最近私が意識して取り組んでいるのが「読書」です。
ここ数年「SNS依存」「スマホ依存」の自覚があり、スマホやネットから敢えて距離を置いて心身を休める「デジタルデトックス」の必要性を感じていました。
詳しくは後日改めて書こうと思いますが、長時間SNSやネットを見ていると目が疲れて頭痛がしてくるだけでなく、脳に入る情報量が過剰のために知らず知らずのうちに脳疲労を起こしている不安があるからです。目と脳を守るためにネットを見る時間を減らし、その分を読書に当てることにしました。
本当は活字そのものから離れて外で自然と触れあうみたいなののほうが一番理想的なのでしょうが、幼少時から本にどっぷり浸かっていた私がいきなり「脱活字」を試みても禁断症状が出てしまうかもしれません。
近年はついスマホばかり見てまとまった本を読むことが殆どなかったのですが、今年に入ってから毎週のように地元や隣市の図書館に通い、語学から郷土史・古代日本史や神話・神道、スピリチュアルやセラピー、さらには政治思想まで興味の赴くままに本を借りまくっては週末に読むという日々を送るようになりました。
その中で最も感銘を受けたのが「自閉スペクトラム症の女の子が出会う世界」(サラ・ヘンドリックス著・堀越英美訳、河出書房新社)です。
以前からTwitterでも度々話題になっていた本で、この本がテーマのスペースを聴いて、当時未読ながら参加者の方々の感想に感銘を受けて自分も読んでみたいと思うようになりました。地元の図書館に置いてあったのはラッキーなことでした。
350ページ近くあり、当初「貸出期間内に読みきれるんだろうか…」と不安でしたが、いざ読み始めたら序章から「これ私にもある!わかる!」とページが止まらなくなり、2日で読み終わってしまいました。
本書は男性当事者とは異なるASD女性特有の特性や幼年期・思春期・成人・老年期までライフステージごとに直面する困り事について、本人の体験談や欧米のASD女性当事者やその家族達による声を集めたものです。邦題は「女の子」とありますが原題は「Women and Girls」とあり、あらゆる年齢層の女性が対象です。当初は著者がイギリス人ということで「欧米の人とは文化も違うし困り事が私とは違うんじゃないかな」と思っていたのですが、全般を通して常々自分について思ってたことがそのまま書かれてるようで驚きさえありました。欧米に対する「個性が尊重され女性の発言力が強い(のでASD女性にとっては日本より生きやすい)」というイメージもまた一種のステロタイプだと気づかされた気がします。
共感できる箇所に傍線を引いていたら本が線だらけになってしまうかもしれません。
例えば第2章における、現在のASD診断基準が男性当事者の特性に当てはめられていること、また医者側の「ASDは男性に多い」と考えているために女性当事者はASDの診断を受けにくいという説は、15年前に私が自身のASDを疑って相談した最初の発達専門医から「ありえない」と否定された経験からもとても納得のいくものです。男性当事者とは異なる特性を持つ「女性のASD」というのがあるのではないか、男性をベースとした現在のASD診断基準を見直し女性向けの診断基準を設けるべきではないかという著者の意見には心から同意です。
ASD女性による手記は以前より国内外に多くありますが、正直言って個人的にあまり内容的に共感できないものも少なくありませんでした。一昔前の女性当事者は男性基準のASD診断をクリアしていると考えられるため、著書に書かれている特性も多くの女性当事者より男性のそれに近かったのかもしれません。さらに話題性のために特性やエピソードが少々誇張して書かれている可能性も考えられます。
一方で、本書で取り上げられているエピソードは「現行のASDの診断基準からしばしば外れてしまう」タイプの「女性のASD」当事者によるものが多いので共感しやすいのかもしれません。個人的には当てはまらないエピソードでも「何故その行動に出てしまうのか」を理解することができます。訳も読みやすく、翻訳本独特の不自然さを感じさせません。
女性当事者に多いとされる性自認の特異性(第10章)や併発する体調不良(第13章)など、個人的に思い当たるエピソードも多くあり「私はASDというより『女性のASD』だったんだ」と気づかされた点で、本書を読んでよかったと心から思います。
ここまでASD女性に関する豊富でかつ網羅的なエピソードがまとめられていると「正直私がnoteでASDについて書く意味ないな」と思ってしまうのですが、ADHDに比べASD女性の特性に関する情報は少なく、また特性も当事者によって「同じ特性とは思えない」ぐらい多様性に富んでいるため、できるだけ多くの当事者が自身の特性や感覚を発信していくことが大事だと思うし、その一人として今後も細々と記事を書き続けようと思っています。
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