あまりにも偏見が過ぎる。当時の自分をぶん殴りたい。
そんな1年が終わった。
なんとかやり遂げた。
そう思うしかなかった。
しかし、既に心身は限界を超えていたのだと思う。
最後が思い出せない。
思い出せるのは、このおかしなメンタルをどうにかしないといけないということだけだった。
うつの時のことは思い出せないとうつ病の本や体験記によく書いてあるがその通りである。
本当に思い出せないのだ。
闘病中のことはぽつりぽつりとは思い出せる。
しかし、2学期途中から3学期のことはほとんど覚えていないのである。
おそらく春に近い暖かい日だったと思う。
私は精神科を探していた。
精神科じゃなくてもいい心療内科でもどこでもいいと思っていた。
ただし、その時にはまだ精神科というのは頭のおかしな人が行くところで、
怖いところだという偏見をもっていた。
一度行ってしまったら二度と普通の人には戻れないのだ。
そういう凝り固まった偏見があった。
だからできたら精神科や心療内科には行きたくはなかった。
書いていて思い出したが、
いつの初任者研修のことかは覚えてはいないが、
あまりにも心が苦しくて、
仲良くしてもらっていただいぶ年上の初任者に相談したことがあった。
彼は、色々と話を聞いてくれて、
「実は僕はうつで通院してるんだよ」
と語ってくれた。
そして、うつとはどういうメカニズムでどうしてそういう状態が起こるかを詳しく説明してくれた。
病院へ行った方がいい。
とは言われた記憶はないが、
その時の私は彼から見たらうつ状態だったのかもしれない。
ただ、そんな状態でもなんとか仕事へは行っていたし、
自分がうつだとかおかしいとかは思っていなかった。
ただ単に頑張りが足りないだけなんだ。
自分に能力がないからだ。
だからもっと頑張らなければならないんだ。
そういう気持ちでいっぱいだった。
しかしもう限界だった。
当時の自分にはどうしたらいいのかわからなかった。
それだけの知恵も知識もなかったし、
もう頭はおかしくなっていたのだと思う。
別にうつの人の頭がおかしいと言っているわけではない。
自分の頭がおかしくなっていたと言っているのだ。
もはや正常な思考ができない状態だったのだろう。
もはやなりふり構っていられないので調べることにした。
うつとはなんなのか?
どうしたら治るのか?
どうしたらいいのか?
どうやらうつになるとお薬がもらえるらしい。
そのお薬を飲むと元気になったり苦しい状態から抜け出すことができるらしい。
ということはわかった。
ではそのお薬をもらうためにはどうすればいいのか。
病院へ行かなければならないのである。
というわけでネットで精神科や心療内科を検索した。
自分が思っていた以上に精神科や心療内科という場所はたくさんあった。
驚いた。
完全な偏見のもと、そういう病院はそんなにないものだと考えていた。
しかし、調べていくと、
どうやら予約を取ろうにも2ヶ月待ち3ヶ月待ちが当たり前だということがわかった。
本当だろうか?
そんなに多くの人が精神科や心療内科にかかりたいと思っているのか?
そしてそんなにも多くの人が精神科や心療内科に通院しているのか?
しかし、真偽はわからなくてもなんとかしてお薬をもらわなければならない。
そこまで状況は差し迫っていた。
いつどうなるかわからない。
苦しい。
しんどい。
もう無理だ。
なんとかしてくれ。
そういう思いでいっぱいになっていた。
しかし怖い。
予約の方法は基本的に電話でするようだった。
では一体どこの病院に電話をすればいいのだ。
わからない。
変な病院だったらどうしよう。
変な薬を飲まされて一生薬漬けになったり、頭がおかしくなったらどうしよう。
書いていて思ったが本当に偏見の塊であった。
もしかしたらうつになったことのない人や周りにうつ病になってたり、精神科、心療内科に通ったことがある人がいない人は今でもそう思っている人が大半なのかもしれない。
「あの人は精神科に通っているらしいよ」
「あの人は頭がおかしいらしいよ」
「あの人はおかしくなってしまったらしいよ」
などと思われているのかもしれない。
まさに偏見である。
精神科や心療内科といっても、普通の病院となんら変わらない。
受付があって、待合室があって、診療室があってお医者さんがいる。
お医者さんと話をして治療方針を決める。
場合によっては薬が出たり、カウンセリングを勧められたりする。
薬が出た場合には調剤薬局へ行き処方箋を渡してお薬をもらうだけである。
内科や皮膚科や眼科や耳鼻科なんかとなんら変わりないのである。
そしてうつになる人や色々心を痛めてしまった人は優しくて繊細な人たちが多いと思う。
別に自分が優しくて繊細だとは思わないが、
うつになってから同じようにうつになった人に実際に会ったり、間接的にも話をしたり読んだり聞いたりすると、皆優しくて真面目で繊細で傷つきやすそうな人たちばかりであった。
しかし20年前の自分は偏見の塊である。
行くならばできるだけ良さそうな病院にしたいと思い、
予約の電話をかける前に実際にその病院を見に行った。
ここは古いからダメ。
ここはなんとなくダメ。
ここもなんとなく外観が寂れてる感じがするからダメ。
とかいう風に近所の病院を見てはダメだししていた。
そのうちに森田療法という言葉を知った。
まぁ知っただけで、なんだろうと思い、当時森田療法の本を読んだ気もするが内容は忘れてしまったが、当時は、森田療法でやっている病院もいいなぁと思った。
それで実際の病院も近所にあった。
しかし結局そこには行かなかった。
何軒か見に行ったうち、
ホームページも良さそう、実際に見た感じも良さそう。
と思った病院があったから意を決して電話をする。
電話をかけるまでにすごく悩んだ。
やっぱりかけるのをやめようか、それとももう限界だから予約を入れようか。
しかし予約できてしまったら行かなければならない。
行ってしまったら自分は精神がおかしい人だと思われてしまう。
本当に偏見の塊もいいところで、本当に申し訳ない。
一体どこからどんな上から目線で物を見ているのだろうと思う。
本当に情けないし申し訳なく思う。
当時の自分に会えたらとりあえずぶん殴るか説教をするだろう。
ただ、当時、話が前後するが、病院に通ってるとわかってから自分の前を去った人や態度が急変する人がいたことは事実だった。
また話が逸れてしまったが、
とにかく思い切って電話をしてみた。
「プルルルル、プルルルル。はい、なんとか病院です。」
「あのー、初診なんですが予約をお願いしたいのですが。」
「えー、今からだと3ヶ月後になりますがよろしいですか?」
・・・・・・・・。
よろしいわけがないのである。
こちらとしては今すぐにでも診察してもらって薬を出してもらいたいくらいである。
なんでもいいから薬を飲めば元の状態に戻って普通の状態で働けるようになるのに3ヶ月も待っていられない。
「あ、そうですか。では、大丈夫です。」
「わかりましたー。失礼しまーす。ガチャ。」
話には聞いていたが本当に3ヶ月待ちだとは…。
落ち込んでもいられないので次々と電話をするがどこも状況は同じであった。
2ヶ月待ち、3ヶ月待ちなのである。
そんなに待たされたら自分はもう耐えられない。
どうしようもない。
家の周りの病院は全滅である。
仕方がないので範囲を広げることにした。
バスや電車でできれば乗り換えなしで行ける範囲で。
「プルルルルル、プルルルルル、はい、なんとか病院です。」
「あのー、初診で予約したいんですが。」
もう何度も同じセリフを言っていたのでもはや言い慣れてしまっていた。
返事はいつもと同じだろうと思っていたが、
「はい、いつがよろしいですか?」
きたああああああああああああああああああああああああああ。
「あの、できれば早めにお願いしたいんですが。」
「早めだと、〇〇日の〇〇時があいていますが。」
「ではその日でお願いします。」
「〇〇日の〇〇時でよろしいですね。お待ちしております。お気をつけて。・・・ガチャ。」
ちょっと遠いがバスで一本で行ける病院の予約が取れたのである。
そしてその病院の先生と今に至るまで長い長い付き合いが始まったのであった。
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