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作詩-言葉たち-vol2

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#夜

水底の月

夜に溶けてしまいたい
月も差さない深い夜に
このまま溶かされてしまえたら
あたたかい闇が抱きしめてくれるかしら

漂っているだけで
空気の摩擦に傷ついてしまうよ

摩擦係数ゼロのクラゲだったら
皮膚にまとわるヤスリの熱に
焼かれなくて済むのだろうか

波にゆられて
全て委ねて

水底へゆこうか
月も差さない水の底へ

©2016  緋月 燈

寂しさのしずく

隣にいる人すら
意味を持たぬほどの
寂しさがこぼれでるときがあるの

紫いろの夜は
差し伸べられる手すら厭わしくて
すくいあげられることを望んでいない

闇にも呑みこめない雫を
熱く濡らしては
絞りだせない声を滲ませる

今夜は
孤独なほど寂しくなくなるから
どこまでも一人にして頂戴

世界に別れを告げて
一人 待ち侘びる雨音は
月光の音色よりピアノらしく寂しく響くのでしょう

透明にしすぎた寂し

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変わらないこと

臆病なままでも世界に触れる
怖がりな冬を眠ってすごしたくなる
時折訪れる春の陽気に
少しだけ誘われてもみる

一日一日が四季
一時一時が季節
心が揺れ動くままに雨が降り
夜より昏い夕立が降る

抜け殻より軽い中身の身体が
風に飛ばされても
石より重い心が
陽射しに安らげなくても

一日一日が四季
一時一時が季節
心が揺れ動くままに夜を思い
月の光だけがやさしさになる

燈火でありたい
何を見失って

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