グレン・グールドと『草枕』
グレン・グールドの愛読書が『草枕』だったという記事が載っていた。
『SIGNATURE』12月号の特集は、グレン・グールドである。
ポストで受け取り、部屋に入るや否やページを捲った。
表紙は、グールドの母が祖母から譲り受け、グールドが最初に触れたというドミニオンのピアノと、グールドを象徴する低すぎる椅子の複製品の写真。
別荘に行く度にこのピアノをトレーラーで150キロの道のりを運ばせていたために、かなり摩耗したのを修繕したものだそうだ。
グールドの死後、ベッドサイドには2冊の本があり、そのうちの一冊が夏目漱石の『草枕』であったという話が、しばらく読むと出てくる。
夏目漱石を通じて、日本の文化や精神に関心を持っていたのかも知れない、という内容である。
『草枕』は、英語版で『The Three-Cornered World(三角の世界)』。
と書かれている。
読書家であったグールドは『草枕』を愛読し、彼のラジオ番組で第一章の一部を朗読したのだという。
私は、『The Three-Cornered World』の装丁にも、面白さを感じてしまった。
三角の世界か・・・。
頭に赤い三角形?
常識という名の一角を頭の中から摩滅する・・・それを、赤い三角形という直接的な表現にしているのが、日本的でないところが面白い。
また、グールドの友人の話も興味深かった。
その内容からも、色々楽しく想像した。
惹かれているものを、もっと深く知る楽しみを秋の夜に味わった。
「芸術の目的とは、一時的にアドレナリンを分泌させることではなく、生涯をかけて徐々に驚異と静穏の状態を創り上げていくことである。」
というグールドの言葉は、やはり深みを持っている。
以前、グレン・グールドの記事を書いたことがある。
芝生に埋め込まれたグールドの墓石には、ピアノのレリーフと『ゴールドベルク変奏曲』の最初の3小節が刻まれており、それが彼の墓碑銘であるという。
書くこと、描くことを続けていきたいと思います。