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クレーの残した料理レシピ

画家パウル・クレーが残したメモには、ときおり料理のレシピや調理の注意事項まで書かれていたという。

『描くこと、食べること
生活人クレーの想像力の源泉を食卓に探る』
と帯にある。

食べることにこだわり続けた画家クレーの食卓。
興味津々で頁をめくる。

元々、日記や手紙、美術学校で教えていたときの講義メモ、講演原稿、造形理論の論文など多くの著述がある中に、
その日、誰に会い、何を食べ、またヴァイオリンで何を演奏したか、というだけの簡素な記録があるという。
1933年にドイツを追われ、生地ベルンに逃れて一年後のことで、クレーは55歳。

クレーは食いしん坊であったそうだ。
美食家やグルメとは違う。どう言ったらよいか、もっと生活人の清廉な感じがする。

本のこの一文が、もっと知りたい気持ちを煽る。
この本の後半には、メモを再現したレシピと写真が載っている。
(*注 レシピ・料理・文 林 綾野氏)

大麦のスープ、チコリのサラダ、グラーシュ、スパゲッティ・アル・スーゴ、ポルチーニ茸のリゾット、フレッシュ・シャンピニオン、豚のヒレ肉のシャンピニオン、タラの水煮、ヴィエナー・シュニッツェル、ロシュティ、フリカデル、洋梨のシュトロイゼルクーヘン、焼きリンゴ・・・

どれも、そう高くはない食材を工夫して作られる生活人の料理であることが嬉しくなる。
有名な画家も一人の生活者(人)であるという、当たり前のようだけれど、とても遠い世界の人を近くに感じるような・・・親しみを覚えるのだ。

以前記事に書いたことがある、ハンガリーみやげのパプリカパウダーは、
農民料理グラーシュに使うようだ、と書いたが、色々な作り方があるようで、このレシピにはパプリカパウダーは使用していないようだ。
しかし、このレシピがあれば再現できる。
(・・・と思ってからかなり経つが、まだ再現に至っていない。これを機に作ってみようと思う。)

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クレーは祖母に絵の手ほどきを受けたということも、この本で初めて知った。
実は、父と母は音楽学校で知り合うという、音楽一家に育ったのだそうだ。
母は声楽を学んだ人で、クレーは6歳からヴァイオリンを始め、11歳にしてベルン音楽協会(オーケストラ)の非常勤団員になったというので驚いた。
それで、「ヴァイオリンで何を演奏したか?」というメモが残っているのだ。

祖母の家をよく訪れていたクレーは、祖母から画用紙や鉛筆を与えられ、絵本やカレンダーを模写することを教わったのだという。

きっかけというのは偶然のようでいて、運命に添うように起きるのかも知れないと常々思っているのだが、「何が」その人の運命を「今ある方向」に導いたかを知るのは、とても興味深い。
私が絵で音楽を思い浮かべるとすると、クレーよりカンディンスキーだったが、
カンディンスキーとは隣家に住んでいたらしい。


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いちじくは、柔らかい実がするん、と描かれている。
今の季節、店頭にはいちじくが並ぶ。
いちじくの様々なレシピをnoteで拝見しては、
「食べたい。食べたい。」とだけメモに残しそうな私である。
ソテーする、ワインで煮る、その分量も・・・書き留めておくようにしよう。




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