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至光社の美しい『国際版絵本』堀文子さんの絵

至光社の国際版絵本を好きだった母は、他の絵本は手放しても、このシリーズだけはとってあった。
紙は傷むので、そろそろ必要なものだけ残して、処分しようと思った。

その中に、日本画家・堀文子さんの絵があって、思わず手を止めた。
今更ながら、感動した。
良いものは、どんなに時間が経っても、感動が薄れることはないのだと、改めて思った。

堀文子さんは、2019年に100歳で亡くなられている。
東京出身で絵を学んだ画家であるが、軽井沢のほかイタリアにもアトリエがあり、アマゾン川、マヤ遺跡、インカ遺跡へスケッチ旅行にも行かれている。
お歳を重ねてからの白髪になったお姿が、とても美しい。

一冊は、『みち』。絵も文も堀文子さん。
もう一冊は、谷川俊太郎さんの詩に、堀文子さんの絵。

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あんずのむらに
はるが
のぼってくる

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はなびらを のこして はるは いってしまった


美しいな、と思う。
絵を描きたくて描きたくて、描いたようなエネルギーがあるように感じる。

絵本の最後に、『みち』に寄せた、堀文子さんの言葉が載っている。
この頃は、大磯におられたようだ。

 山道の古い野佛に、いましがた、誰かが備えたうつぎの花。山菜とりの村人か。峠をこえて行く旅人か。そのやさしい人の姿は見えない。
 人は道で別れ、かけがえのない人と出会った。追われて行った人もあり、帰る人もあったが、道は何も語らず、生きては亡びる、人の世の運命を運び、はてもなく続く。
 そして、道端の野佛にぬかづいて、人は旅の無事をいのるのだ。


大人が読む絵本のような、含蓄のある言葉がたくさんある。

わたしは このやまみちで 
むかしの ひとの こえを きいた

てんの みちを 
たいようが おちてゆく

このみちは
いつから そして
どこへ ゆくのか

はてもなく つづく ひとすじの みち

そして、とても素敵な夕焼け雲が描かれている。
人生は旅に例えられる。
そして、その人生とは、『みち』を辿って進んでいくことなのだろう。


このみちは いつから そして どこへ ゆくのか

はなびらを のこして はるは いってしまった


短いセンテンスなのに、深く深く考えさせられる言葉。
人間は、精神は若いまま、身体だけは歳をとっていってしまう。
堀文子さんは、そのような意味で書かれたのではないかも知れないけれど。


『き』という絵本の中の、好きな一節は、これ。
谷川俊太郎さんの詩。

こうすいなんて いらないわ はなが あんまり いい においだから
わたしは きっと ろくがつに およめに いく

うっとりとする。
こういう予感というのは、女の子にはあるような気がするからだ。




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