#315 離婚事件 ~住宅ローンと財産分与,住宅の名義変更~

今日は弁護士らしく,実際に僕が扱った離婚事件についてお話したいと思います。

離婚事件は本当に多いです。僕は今弁護士4年目(3年と9ヶ月)ですが,2年半働いた途端にうつ病を患い,それから今日までずっと働いていないので,弁護士としての経験年数は2年半で止まったままですが,その2年半の中でも,離婚事件はたくさん扱いました。

世の中には離婚専門の弁護士もいますが,僕の考えとしては,離婚事件に特に専門性は必要ないと思います。

雑な言い方をすれば「誰でもいい」です。離婚事件で弁護士に依頼する場合,離婚事件の専門性にこだわる必要はないと思います。

専門性にこだわるよりも,「この弁護士とウマが合うか」「この弁護士の意見を信頼できるか」「信頼して任せていいか」を考えたほうがいいです。

弁護士は,一緒に紛争を解決するパートナーです。安くない報酬を払う相手でもあります。専門性よりも「信頼できるかどうか」を基準に選ぶべきでしょう。「信頼して任せよう」と思えたら依頼すればいいですし,信頼できそうにないなら依頼しなくていいんです。

弁護士に法律相談をしたら,「依頼しなきゃいけない」と思ってしまう人がいるかもしれませんが,そんなことありません。依頼するかどうか,じっくり考えていいです。「依頼しなくていいか」と思ったら,依頼しなくていい。

もっと言えば,依頼した後も,「やっぱりやーめた」と言っていいんです。依頼した後でも,弁護士は変えていいんです。まあ,もちろん,「やっぱりやーめた」が一方的であれば,着手金は返金してもらえませんし,「やっぱりやーめた」までの間に弁護士が立て替えた郵便切手代や交通費などは支払う必要はありますが,とはいえ,そういった「損切り」をすれば,弁護士は変更していいんです。

どの弁護士を選ぶかどうかは,あくまで,お金を払うお客さんの側に決定権があるんです。それを踏まえて,どの弁護士に依頼するかどうか,依頼する前も,依頼した後も,じっくり考えていいんです。

これは,めちゃくちゃに大事なことなんで,ちょっとタイトルから離れますが,書いておきました。

で,です。

今回は離婚事件の話ですが,離婚には特に専門性が求められない(と僕は思っている)ので,1年目のうちから,いろいろと担当するわけです。

そうやっていろいろと離婚事件に直面する中で,よく出てくるのが「住宅ローンどうするか問題」です。

そもそも,離婚すると「財産分与」なる問題が出てくるのはご存知の方が多いと思います。

「財産分与」とは「結婚してから離婚するまでの間に夫婦で築いた財産を半分こする」という意味です。ざっくり言えば。

(「半分こ」じゃ納得できない!と主張することもあります。これは「分与率」と言われる問題ですが,ここでは割愛します。)

で,「半分こ」にするためには,結婚してから離婚するまでの夫婦で築いた財産を全部足し算して,その総額をはじき出し,その半分の金額を導きます。

「夫婦で築いた財産」なんて言っても,それぞれの財産(預金や生命保険)は,夫婦どちらかの単独名義になっていますよね?夫婦2人の名義の預金口座なんてありません。たぶん,銀行が作らせてくれません。

で,それぞれの名義の財産は,離婚する際に,名義人がそれぞれ引き取ればいいんですが,それだと,さっき説明した「半分の金額」よりも多い額を引き取ることになる人と,少ない額を引き取ることになる人が出てくる。

その差額は,現金で調整します。

例えば,結婚してから離婚するまで間に総額4000万円財産を築いた夫婦が離婚する場合で,夫名義の財産が2500万円,妻名義の財産が1500万円なら,それぞれが自分名義の財産を引き取るんですが,それだと,夫が500万円もらいすぎていて,その反面,妻が500万円少ないので,夫が現金で妻に500万円を支払う。

こんな感じで財産分与の問題は解決していきます。

で,タイトルに書いた住宅ローンの話に進みます。

わざわざ言うまでもありませんが,「住宅ローン」は「借金」です。本当に「言うまでもありません」ね(笑)。

住宅ローンも,「マイナスの財産」として,「結婚してから離婚するまで間に夫婦で築いた財産」に含めて考えます。

さっき書いた「結婚してから離婚するまで間に夫婦で築いた財産=4000万円」の夫婦を,もう一度例に出します。

この夫婦には,夫名義の住宅ローンがあって,離婚時点の残額が2000万円としましょう。この住宅ローンは,住宅に住み続ける夫が離婚後も支払い続けることが夫婦で約束されたと考えます。

そうすると,夫婦で築いた財産の総額は,プラスの財産4000万円から,マイナスの財産(=住宅ローン)を差し引いた2000万円ということになります。この2000万円のうち,妻名義の財産は1500万円,夫名義の財産は500万円(プラスの財産2500万円-マイナスの財産2000万円)ですから,妻が500万円多くもらいすぎていて,逆に夫は500万円少ないです。そのため,妻は,夫に対して500万円を現金で支払うことになります。

住宅ローンは「マイナスの財産」として考えるんですね。

で,もう少し複雑な場合があります。「あります」というか,「めちゃくちゃ頻繁」にあります。

それは,住宅が夫婦の共有名義の場合です。これは,本当に多い。まあ,夫婦で一緒に働いてお金を出し合って住宅ローンを返済していく場合が,今の共働き社会では多いでしょうから,お金を出し合う夫婦双方の名義にするのも,よくわかります。

ただ,離婚する場合,「夫婦共有名義」のまま放置するわけにいきませんよね?

「よね?」と疑問形にしたのは,別に離婚する場合,夫婦共有名義の住宅を単独名義にしなければいけない法的な義務があるわけではないからです。

別に,離婚した後,夫婦共有名義のまま,その建物に住み続けても全然犯罪じゃありません。だから,離婚した後,共有名義のまま放置したっていいです。

ただ,普通,離婚した後も住宅に住み続ける人は,自分の単独名義にしたいと考えます。だって,そうしないと将来住宅を売却しようとしても,売却できませんから。

住宅を売却する場合,名義人の実印と印鑑証明書が必要です。この2つがないと売れません。共有名義のままだと,離婚した夫(または妻)の実印がないと売れない状態が続いてしまうんです。

これは非常に不便ですよね。離婚した夫(または妻)が,おいそれと,印鑑証明書を送ってくれるとは到底思えません。今は,マイナンバーカードがあればコンビニでも印鑑証明書が発行できるようにもなりましたが,離婚した相手がマイナンバーカードを作成しているかどうかわからないし,コンビニにすら行ってくれるかどうかもわからない。「ハンコ代くれよ。じゃなきゃ嫌だ」なんて言われるかもしれません。

だから,離婚する際に,必ず住宅の名義は自分の単独名義にしておきたい。そう思うはずです。

弁護士としても,よほどの事情がない限り,共有名義の住宅は単独名義に変更しましょうとアドバイスしますし,単独名義に変更されるまで離婚事件は終わらないと考えている弁護士が多いと思います。

ただ,ここで大きな問題が発生します。住宅ローンです。

またまた言うまでもありませんが,住宅ローンは,銀行からお金を借りるものです。そして,借りたお金に利息を付け加えて返すものです。

これがどうして決まっているかというと,「住宅ローン契約書」にサインしたからです。銀行との間で,「最初に〇〇万円お金を借ります(渡されます)」「その渡されたお金に年利〇〇%の利息を付け加えて〇〇年で返済します」と書かれた契約書にサインしたからこそ,銀行は最初にお金を渡してくれたわけですし,そのお金に利息を付け加えて毎月返済しなきゃいけなくなっているんです。

で,その「住宅ローン契約書」には,「住宅の名義を変更したら残額を一括して支払ってもらいますからね」と書いてあります。

!!!!!!!

これはヤバいですね。さっき書いたように,住宅に引き続き住み続ける妻(または夫)としては,是が非でも自分の単独名義にしておきたいところなんですが,しかしながら,共有名義から単独名義にしてしまうと,住宅ローンの契約書で約束した「名義変更したら一括返済」がやってきてしまいます・・・・。

僕はかつて,この問題に直面しました。僕が扱った事例では,住宅が共有名義になっていて,離婚で夫が自宅を離れ,妻が住み続けることになっていました。

先ほど書いたような理由で,妻は,ぜったいに共有名義を妻の単独名義にしておきたいと考えていました。しかも,離婚後すぐに所在不明になってしまうような夫で,そんな夫に将来実印と印鑑証明書をもらうなんて100%ムリだったので,是が非でも単独名義にする必要がありました。

もちろん,その住宅ローンの契約書には,「名義変更したら残額一括返済ね!」と書いてあります。

で,僕はどうしたか。

よく,インターネットでこのことについて調べると「単独名義にすることを銀行から承諾してもらいましょう」なんて書いてありますが,それは多分ダメです。銀行が承諾するかどうかわかりませんし,たぶん承諾しません。

そして,銀行は,「単独名義にしたいんですけど」と言われたことによって,その住宅の名義が変更されるかどうか毎日チェックするでしょう。そして,名義が変更された途端に,「一括返済」を持ち出して,一括返済を迫り,それでも払われない場合は抵当権を実行して住宅を競売にかけるでしょう。

そうすると,せっかく財産分与で住宅を確保できても,競売で住宅が売られてしまい,住宅に住み続けることができなくなってしまいます。

だから,「銀行に承諾をとる」ことはダメです。というか,「名義変更を承諾したいんですけど」と銀行に話すことすらダメです。話してしまうと,競売のリスクが出てきてしまうからです。

銀行は,とにかく借金を回収したくてウズウズしてますからね。一括返済を迫るチャンスが巡ってくれば,それを逃さないでしょう。

じゃあ僕はどうしたかというと,単独名義に変更しちゃったんです。銀行にナイショで。で,住宅ローンは夫名義で,夫の預金口座から引き落としで返済することになっていましたから,その引き落とし口座の通帳と銀行印を,離婚後は妻が「住宅ローン返済専用口座」として預かることにしたんです。

そうすれば,銀行との関係では,「夫がローンを支払い続けている」という,離婚前と同じ錠がいた続くだけなので,銀行が目くじらを立てて,名義変更をチェックしてくる可能性は非常に低いです。

銀行は,毎月の返済が滞っていなければ,貸した相手が離婚したかどうかをいちいち調べたりしませんし,住宅ローンの住宅の名義が変更されたかどうかもチェックしません。

確かに,銀行は住宅ローンの住宅の名義を毎日チェックすることはできますが,それもタダじゃないんです。名義変更を確認するにも,法務局に手数料を払う必要があります(数百円なので高くはありませんが,それほど安いもんでもありません)。

ローンが滞りなく返済されている住宅の名義が変更されているかどうかを,銀行がわざわざ確認する可能性は極端に低いです。「ない」と言っていいくらいでしょう。

だから,銀行にナイショで,共有名義から妻の単独名義に変更しても,「一括返済」になるリスクは低いと判断し,名義を変更したんです。

ここで名義を変更しないまま放置した場合,将来住宅の処分で大変な思いをすることになりますからね。

まあ,夫からハンコ代を要求されるかもしれない,ということは既に書きました。それだけじゃなく,「そんな約束していない」と開き直ってくるかもしれません。夫が死んでいれば,その相続人の名義に変更した上で,その相続人たちから実印と印鑑証明書をもらうことになります。

もし,その相続人たちが応じてくれなかったら,訴訟を提起する必要があります。妻の単独名義にすることを求める訴訟を相続人相手に提起し,それで最終的に単独名義にはできるでしょうが,相続人たちが妻をどう思っているかわかりませんから,この訴訟が長引く可能性も充分にあります。

だから,離婚の際は,名義変更によって住宅ローンが一括返済になってしまうことにおびえるよりも,単独名義にしておくべきでしょう。僕はそう考えています。

【今日のうつ病】(うつ病経過まとめ:こちら

今日までに経過した期間↓

・うつ病発症(2019年7月10日~):460日(1年3か月と2日)

・実家療養後の1人暮らし(2019年9月27日~):381日(1年と15日)

・午前中の散歩(2019年11月7日~):340日(11か月と5日)

・毎日ブログ(2019年12月3日~):314日(10か月と9日)

・出勤練習(2020年3月30日~):196日(6か月と12日)

今日で,出勤練習を始めて6か月と12日目になります。新型コロナウイルスの影響で,4月13日~5月11日までの約1か月間,一時中断されていましたが,それを差し引いても,5か月以上は出勤練習を積み重ねてきました。

そんな今日の「SleepCycle」を見ると(睡眠記録アプリ「SleepCycle」についてはこちら),午前0時16分に布団に入りました。昨日に引き続き寝つきは良かったです。しかし,今日は休日にもかかわらず,朝7時16分に目が覚めてしまいました。もう少し眠っていたかったです。SleepCycle独自の睡眠品質も69%/100%と低く,あまり質の良い睡眠がとれていません。

(なお,僕のうつ病は,主な症状が不眠(①寝つきが悪い②中途覚醒③朝早く目が覚めてしまい二度寝もできない)で,この不眠症状の有無が,その日の調子の良し悪しや,回復の進み具合を左右します。そのため,毎日の睡眠時間や睡眠の質について,睡眠記録アプリ「SleepCycle」に記録されているデータをもとに逐一書き出すことにしています。)

僕のうつ病の場合,「調子悪い→調子良い→調子悪い」というループを何度も何度も繰り返してきたんですが,今日は「調子悪いゾーン」のようです。めちゃくちゃに調子が悪いわけではありませんが,眠りの質が良くないので,疲れがあまりとれておらず,昼頃には疲労感がありました。

ただ,今日も,昨日と同様昼寝していて,午後2時30分頃~3時10頃まで昼寝できました。おかげで疲労回復が進んだと思います。昼寝で少し調子は上向きました。

今日もブログ書けてよかった!

それではまた明日!→こちら

昨日のブログ→こちら

━━━━━━━━━━

※内容に共感いただけたら,記事のシェアをお願いします。

毎日記事を更新しています。フォローの上,毎日ご覧くださると嬉しいです。

※うつ病への負担を考慮し、「書き始めてから1時間くらいでアップする」という制限時間を設けています。

サポートしてくださると,めちゃくちゃ嬉しいです!いただいたサポートは,書籍購入費などの活動資金に使わせていただきます!