リゼロを見たら、ジョハリの窓が割れた話
Re:ゼロから始める異世界生活(通称:リゼロ)の2期がスタートしました。タイトル通りで、今は珍しくない「異世界転生アニメ」ですが、主人公が異世界で無双するわけではありません。むしろ初期能力値が低い無力な主人公が大切な人を守り抜いていくために奮闘していく話となっています。
ただ、1点のみ主人公の特殊能力で「死に戻り」という力があります。これは「死んだらあるセーブポイントで復活できる」というRPGゲームみたいな能力です。この設定で予想がつくと思うのですが、主人公は様々な敵や超理不尽に巻き込まれ、作中で死にまくります。下手するとセミより短命かもしれません。
そして、リゼロはストーリーだけでなく、キャラクターの人気が高いです。その中でも、ぶっちぎりで人気の高いキャラがサブヒロイン(?)である「レム」です。
純真無垢、至恭至順な青髪短髪のメイドキャラクターで、リゼロといえば「レム」というぐらい人気でした。 私も本作では一番好きなキャラクターです。
今回は2期も始まるということで、アニメ1期の復習をしていたところ、例の神回、アニメ1期18話「ゼロから」である学びがありました。結論から書くと、なんとなく理解していた「対人関係における気づきのグラフモデル」である「ジョハリの窓」を別角度から捉えられることに気づきました。
今回は、そんなアニメ1期18話を中心に書いていきます。(ネタバレありです)
【あらすじ】登場人物紹介(知っている方は読み飛ばしてください)
このくらいの絕望で、俺が止まると思うなよ。諦めるのは似合わねえ!
主人公の「ナツキ スバル」(以後、スバル)は冒頭に書いた「死に戻り」の能力を持った17歳の少年です。空気を読まず、ふざけた態度で人の神経を逆撫でするような性格ですが、一方で情に厚く大事な人たちを守るためなら自らを省みない一面もあります。但し、アニメ1期18話までは、利己的な感情をコントロールできない場面が多々見られ、俗にいうウザいキャラクターとして描写されます。
ごめんって何度も言われるより、ありがとうって1回言ってくれたほうが相手は満足するの
メインヒロインの「エミリア」は異世界に来たばかりのスバルを最初に見返りもなく優しくしてくれた、銀色長髪の美しい少女です。外見年齢は18歳で、性格は温厚でやさしく、誰にでも手を差し伸べます。自分が住んでいる王国の王選候補者の1人ともなっています。
スバルくんは、レムの英雄なんです
そして、絶大な人気を誇るサブヒロインの「レム」です。エミリアの家に仕えるメイドで、基本的に穏やかな物腰ですが、毒舌なところがあり慇懃無礼。但し、心を許した相手には献身的であり、自己犠牲をも厭わない利他的な性格です(アニメ1期18話時点では、後者の性格が強くでています)。また主人公のスバルに絶大な信頼、そして愛情を持っています。
関係図をまとめると以下となっています。他にも魅力的なキャラクターはいますが、今回の主題を説明するには以下3人だけ抑えておけば大丈夫です。
そして、今回の18話は「スバル」と「レム」の掛け合いがメインです。それでは次項で簡単に紹介していきます。
【あらすじ】ゼロから
今までのスバルは死に戻りの能力を活用し、エミリア、そしてレムを様々な窮地から救ってきました。
しかし、異世界転生後のスバルの活躍はたまたま機転が利き、上手くいっていただけでした。異世界転生前は学校にも行かず自堕落な生活を過ごしていたスバル。感情も制御できず、すぐに調子に乗り、挑発にも乗る。勝手に行動するくせに、感謝を求める。
そのような、精神的に未熟なスバルの前に「ありえないぐらいの理不尽」が襲いかかります。この結果が起こすことは、愛するエミリア、そして、信頼するレムの死が必ず待ち受けているものでした。エミリアを殺害するための強敵が出現、災害級のモンスターが同時期に襲い掛かってくる、予想外の悪い出来事が重なり、スバルは何度も死に戻りの能力を駆使しても、突破できないでいました。
諦めない性格が売りのスバルでしたが、何度も目の前でレムが惨殺される、またエミリアも必ず死を迎える状況でスバルの精神は崩壊寸前、自己逃避の思考となっていきます。
複数回の死に戻りを経験した後に、現状を突破できないと思ったスバルは、近くにいて、自分を信頼してくれているレムと一緒に逃げようと提案します。
この提案は、レムにとっては非常に魅力的でした。信愛するスバルと一緒に、別の場所で暮らせて、余生を幸せに過ごせる夫婦円満な生活が夢見ることができるからです。
しかし
レムはスバル君と逃げることはできません。
…だって、未来のお話は笑いながらじゃないとダメなんですよ。
レムはその後に、スバルの提案が素直に嬉しいと優しい声音で告げます。ただ、今提案を受けるとスバルの良いところである「諦めない資質」を否定してしまうとレムは考え「それはできない、一緒に考えよう、諦めるのは簡単」と諭します。
死に戻りを何回も経験しているスバルにとって、諦めるのは簡単ではありませんでした。何度も挑戦し、最愛の人たちが殺されていく。そして、自分の利己的な部分、力量の無さを自覚し、感情が爆発、自己嫌悪に陥っていきます。
本当はわかっていたさ、全部俺が悪いんだってことぐらい
俺は最低だ
俺は俺が大嫌いだよ
レムは知っています。
スバルくんがどんなに先の見えない暗闇の中でも手を伸ばしてくれる勇気がある人だってことを。
スバル君に頭をなでられるのが好きです。
手のひらと髪の毛を通してスバル君と通じ合っている気がするんです。
スバル君の声が好きです。言葉一つを聞くたびに心が温かくなるのを感じるんです。
どうして
スバル君が自分のことを嫌いだってそう言うのなら、スバル君のいいところがこんなにあるって、レムが知っていることを知ってほしくなったんです。
そんなものはまやかしだ
おまえはわかっていないだけだ
自分のことは自分が一番よくわかってる
スバル君は自分のことしか知らない!!
…レムが見ているスバル君のことを、スバル君がどれだけ知っているんですか!!
どうして、そんなに
俺は弱くて、ちっぽけで、逃げて、前の時も同じで逃げて
それでも、どうして
だって、スバル君はレムの『英雄』なんです。
レムの優しい言の葉に、スバルは瓦解寸前の心をゆっくりと開いていきます。そして、レムはスバルに宣言します。
ここから、始めましょう?
1から…いいえ、
ゼロから
「ジョハリの窓」の観点から:対人コミュニケーションだけでなく、行動力にも活用可能
アニメを見ていた人は共感してくれると思いますが、あらすじのnoteを書きながら号泣してしまいました。本シーンは声優さんの演技、またストーリーの今までの葛藤から考えると感動必須の回となっています。本シーンだけであと3000字は書いていきたいのですが、主題でないため、今回は割愛します。
さて、今回の学びは「ジョハリの窓」の視点から考えるリゼロです。
「ジョハリの窓」とは自分をどのように公開ないし隠蔽するかという、コミュニケーションにおける自己の公開と、コミュニケーションの円滑な進め方を考えるために提案された考え方。コミュニケーション心理学や、健康心理学などにて頻繁に使用される。(wiki参照)
上記は「ジョハリの窓」の定義です。なんとなく知っている方も多いかと思います。具体的には以下のフレームを使います。
本フレームは、自己、他者認知を整理するために使います。自分、他者の印象を認識し、「解放の窓」を広げていき、コミュニケーションに役立てるというのが本来の使い方です。
今回は、本フレームの詳細は記載しません。ジョハリの窓のリゼロ観点から記載していきます。
先ほどの「【あらすじ】ゼロから」の会話の流れを見ていただくと
スバル:「秘密の窓」の観点から話している
レム:「盲点の窓」の観点から話している
この流れに気づくかと思います。
スバルは幾度の挫折経験により、己の利己的な醜さを自覚して、自分に絶望している状況です。それに対して、レムはスバルの良い点を話し、それを知ってもらうために話しかけていきます。
もちろん、スバルは
そんなものはまやかしだ
おまえはわかっていないだけだ
自分のことは自分が一番よくわかってる
本セリフを吐きますが、レムはそれに対し
スバル君は自分のことしか知らない!!
…レムが見ているスバル君のことを、スバル君がどれだけ知っているんですか!!
このように「盲点の窓」の観点から主張していきます。
結果、スバルはゼロからポジティブに行動できるようになり、また利己的な自分を抑えられるようになっていきます。
ここで学べることは2点です。
【前提】
自分、もしくは相手が「秘密の窓」の観点で己の嫌な点に気が付き、自己嫌悪している。
①相手を励ましたい
相手が自己否定を心から話しているとき、盲点の窓の観点、自分から見えるポジティブな相手に伝える。
②自己嫌悪から脱したい
「秘密の窓」の自分の嫌な部分より、相手が主張する「盲点の窓」を信じる。
このようなケースで使用できると思います。
①は相手を励ます方法で、例えば家族、友人がひどく落ち込んでいるときに使えます。私も実際によく使う手法です。相手の秘密の窓は、そう簡単に瓦解できません。よくありがちなのは、相手に理解を示すことです。今回のリゼロでも「死に戻り」の辛さは絶対にスバルしか理解できなく、その点で話を進めていっても相手には響きずらいです。お前に何がわかるんだよ!状態です。
そのため、自分が見えている相手の良いところを話しましょう。この挫折している状態では、自分の秘密の窓を深堀りしていきがちです。この深堀りを「盲点の窓」視点から止めてあげることが重要となります。もし、話し方、話す内容などは、リゼロ1期18話のレムをイメージしてあげてください。
②は、相手から励ましを受けるケースです。結論から言います。相手に自分の良いことを言ってもらったら、信じてあげてください。ただ、これは極論で、メンタル的に折り合いがつかないと思われます。そのため、その場で否定してしまってもリゼロの本シーンを思い出し「あぁ、レムとスバルのケースだ」と落とし込みをし、ゼロからまた活動をしていってみてください。(これは前提としてリゼロの作品が好きという気持ちがないと成立はしません)
このように、絶望をゼロにし立ち上がることが、この回から学べます。
私は、本ジョハリの窓に基づいた考えを「絶望をRe:ゼロ」として呼んでいます。
「秘密の窓」がポジティブなら良いのですが、ネガティブなことも多いです。もし行動が止まるようならば、この方法と、リゼロ18話を思い出してみてくださいね。そして、2期も一緒に見ていきましょう!
※おまけ
「【あらすじ】ゼロから」の会話部分は一部省略しています。本当は全文載せたいのですが、長くなるので読みやすさ重視で書きました。思い出した方は、是非、本編をもう一度みてください。うぅ…。泣いてしまう…。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。「遊びを学びに」をモットーに書いていきます。サポートに関しては、学術的な引用書籍に使用させていただきます。