香月 聡

小説を読んで、書いて。文章の映す世界に浸ってます 旅と世界遺産、赤提灯🍺が好き。性格は…

香月 聡

小説を読んで、書いて。文章の映す世界に浸ってます 旅と世界遺産、赤提灯🍺が好き。性格はHSP気質 国内では四国が好きでお遍路さんしてます。

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  • 小説作品まとめ

    掌編小説をまとめました。全て一話完結です。よろしければ読んでください

  • ブルーベールに集う

    小説を一つにまとめました。

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いつか、巡礼の地で(1)

2013年7月  絵梨 徳島県鳴門市 鮮やかな青空に蝉の声が鳴り響いている。噴き出る汗が頬を流れ、駅からさほどかからないはずの道のりが果てしなく思える。深緑の山々と田畑が広がるのどかな県道を歩き続け、ようやく霊山寺と書かれた巨大な看板が見えてきた。ここが一番札所。気が引き締まる思いがした。 金色の童子が浮かぶ放生池を通り、奥の本堂へと進む。何人かの参拝者が集まり、漂う蝋燭の煙の中に、天井を覆う無数の灯籠が見える。献灯の香りは心を鎮め、まとわりつく暑さも引いていくようだった

    • 図書館と家に籠り籠り、どうにか創作大賞応募作品 書くことができました。小説を書くことのたいへんさを改めて感じ、喜びも一入、言葉を繋いでいく楽しさと旅したような気持ちに浸れました。 いつも読んでいただき、ありがとうございます。 https://note.com/lucky_marten269/n/n50cf41c69cb0

      • いつか、巡礼の地で(最終話)

        2013年7月15日   絵梨 直央 巡礼の地で 眼下には山麓の田園地帯と蛇行する豊かな川が鮮やかに広がっている。あまりの高さに足先が竦み出し、山脈の頂に視線を移した。 ロープウェイから降り、古木に囲われた広大な境内は寒さを覚えるほどの霊気が漂っている。石段を上りきると本堂に巡礼者が集まっていた。その後ろに並んで参拝を待った。 境内を出て本堂と反対方面に進んでいった。舎心嶽へと繋がる参道の右手には小形の本尊が並び、舗装された坂道から次第に足場が悪くなっていった。 地面

        • いつか、巡礼の地で(6)

          2013年 6月~7月  直央 長野、そして巡礼の地へ 成し遂げた。ついに―。 特選の通知を受けた瞬間、一点に集結していた神経が解けるように一気に力が抜けていった。数年前、葉月のもとを訪れ、天日展で入選することを夢見てきた。その夢を、ついに叶えたのだ。 向かい合う老画家は、ずれた眼鏡の位置を直した。雨の止んだひんやりとした外気が縁側から居間まで流れ込む。秋の個展を終えたら高松に戻ることを告げると、葉月は寂しげな表情を浮かべた。 「君がいなくなるのは寂しいなぁ。このまま京

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        いつか、巡礼の地で(1)

        • 図書館と家に籠り籠り、どうにか創作大賞応募作品 書くことができました。小説を書くことのたいへんさを改めて感じ、喜びも一入、言葉を繋いでいく楽しさと旅したような気持ちに浸れました。 いつも読んでいただき、ありがとうございます。 https://note.com/lucky_marten269/n/n50cf41c69cb0

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          4本
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          いつか、巡礼の地で(5)

          2013年 6月  絵梨 東京  *性描写があります。 青い光が浮遊し、手のひらに落ちた。水面の上を歩く足元に微かな風が流れ、草花を揺らした。正面には白い森が広がり、真ん中には生命の躍動に脈打つような巨木が根を張っている。森の密やかな呼吸に合わせ、青い光が淡くなり、強くなり、浮遊しながら導いていった。 水辺に辿り着くと巨木の前に、男性の背中が見えた。振り向くその男性の顔ははっきりとは見えない。少しづつ近づくと手を取られ、胸に抱き寄せられた。 強く腕に抱かれ、胸に顔をうず

          いつか、巡礼の地で(5)

          初めてのつぶやき機能です! いつも読んでいただき、ありがとうございます。励みになります😊 創作大賞応募の「いつか、巡礼の地で」を投稿していますので、読んでいただけたら嬉しいです✨ (完結まで、ま、間に合うかわかりませんが、どうにか三連休で...)

          初めてのつぶやき機能です! いつも読んでいただき、ありがとうございます。励みになります😊 創作大賞応募の「いつか、巡礼の地で」を投稿していますので、読んでいただけたら嬉しいです✨ (完結まで、ま、間に合うかわかりませんが、どうにか三連休で...)

          いつか、巡礼の地で(4)

          2009年7月中旬  直央 岡山そして京都へ 部屋の外では雨が降り続いていた。カーテンの隙間から漏れる薄暗い外の色が、電気の消えた闇のなかを僅かに明るくしていた。閉じ込められたように動けない体の中に、雨音の陰鬱な影が広がっていく。 病人のようにベッドに横たわったまま、重たい瞼を持ち上げ、部屋を見渡した。カーテンレールに吊るされたままの洗濯、灰皿に溜まった煙草の吸殻、電池が飛び出た時計に、雪崩れのように落ちた何冊もの画集。 一昨日、感情のままに部屋を荒らした。その反動で眠

          いつか、巡礼の地で(4)

          いつか、巡礼の地で(3)

          2004年4月  絵梨 東京へ 入社式を終え、一ヵ月の研修からはじまり、車両に使用される細かい製品の名前、製造過程、品質検査の流れなどを学び、メモはびっしりと埋まった。 研修が終われば工場勤務となり、先輩に教わりながら大量の業務を必死に覚えようとした。それに全くしてこなかった家事のたいへんさを痛感し、仕事と家事の両立で目まぐるしく日々が過ぎていった。 互いに忙しく、返信が遅くなることもあったが、直央と連絡を取り合っていた。励ましの言葉に救われ、屋島で見た瀬戸内が脳裏に浮

          いつか、巡礼の地で(3)

          いつか、巡礼の地で(2)

          2004年3月  直央 香川県高松市 絵梨が高松に来る。その知らせを受けたのは一週間前だった。 すぐに返事を書いて送った。再び彼女から手紙が来ると、便箋と共に一枚の写真が入っていた。小学生だった頃の記憶で止まっていたはずの彼女は制服を着て、女子三人で肩を寄せ合っている。 素早く便箋を開くと真ん中だよ、とあった。確かに絵梨だ。面影が残る真ん中の女子高校生は小柄で、色白の肌に黒髪を後ろで束ね、控え目に微笑んでいる。 大人びたが、おっとりとした雰囲気はそのままだ。手紙に目を

          いつか、巡礼の地で(2)

          韓国の結婚式に行ってきました

          友達が韓国で結婚式をするということで、 およそ10年ぶりに行ってきました。 日本とは違うスタイルで行われた韓国の結婚式と観光の様子について書きたいと思います。 韓国の結婚式服装について まず一番悩んだのは服装でした。韓国の結婚式は日本のようなドレスは着ません。また新婦が白いドレスを着ているため全身白い服はNGです。 実際に行ってみると男性と女性はこんな感じでした。 男性 スーツの人はほとんどいない。 白いTシャツに黒の半ズボンにスニーカー、サンダルなど。年上の方も普

          韓国の結婚式に行ってきました

          嫌われる勇気、本にはさまれたメッセージ

          こんばんは、今日もお疲れ様です。 本の買取をしてもらい、何か本を買おうと自己啓発コーナーへと行ったときの話です。 今まで小説ばかり読んできたので、自己啓発本を手に取るのは初めて。(恥ずかしながら) 「嫌われる勇気」 ブームになっていながら読んだことがなく、ページを捲っていくと読みやすくて買おうかなと迷う。 決め手になったのは1番後ろのページだった。 年季の入った本の最後を捲ると折り畳まれた紙切れがはさまっている 広げると、そこには達筆な文字で自身の悩みと向き合う内

          嫌われる勇気、本にはさまれたメッセージ

          【掌編小説】夜な夜なこの街でたいてい、すれ違ってる

          (あらすじ)  とある街に住む住人たちのお話です。一話完結で、何人かの日常について書く予定です。 どこかすれ違っている人たちの日常を垣間見れたら、いいのにと思って書てみた。 丸野想(25歳)の場合 深々とソファに腰掛け、煙草に火を点けた。スパイスの香りが充満するシーシャバーの店内を漂う煙を目で追っていると、背後から声がした。 振り向くと裕太がもじもじして立っている。 「想さん、今日の夜って時間ありますか?」 「あるけど、どうした?」 「しっ、渋谷の!クラブに行ってみた

          【掌編小説】夜な夜なこの街でたいてい、すれ違ってる

          【掌編小説】夜の公園で見たもの

          (あらすじ)夜の公園で出くわしたものについて、物語風にしてみました。 寝静まった初夏の夜、車内でウィンカーが響いて聞こえる。 右折して山頂に繋がる道を登り、高くなるに連れて高揚していった。何度かカーブを越えると山道が開け、盆地の夜景が広がる。 夏は猛暑、冬は極寒の四方山々に囲まれたこの土地を好きにはなれないが、目の前に映る夜景は綺麗だと思える。 ゴールデンウイークさなか、公園の駐車場には県外ナンバーが数台停まり、家族連れが寝床をつくる準備をしている。県外から来て車中泊す

          【掌編小説】夜の公園で見たもの

          一息つこうと思います

          こんばんは。お疲れ様です。 連休が明けました。たくさん楽しんだから さぁ、お仕事頑張ろう!と、清々しい気持ちで臨むつもりでしたが、うまくいかず。。。 悶々と浮かびはじめると鈍色の靄が気持ちにまで入り込んで、 痞えて苦しくなる。 楽しいことがあるから頑張らなくてはいけない、そんなふうに思うと 自分の場合は余計にきつくなってしまいます。 以前より時間に余裕ができて、本を読んだり、noteに小説を書いたりと好きなことを大切にできるようになりました。 でも落ち込んでいる状態

          一息つこうと思います

          【掌編小説】白と黒

          (あらすじ)  白い無垢と黒い過去、そんな対比的な二つの話です。 どうしてもつぶらな目をした小鳥を、登場させてしまいます。 足を洗ったら探偵事務所を開業する。そんなことを思うようになった。 闘争で勝ち得て築いた情報網と本質を見抜くことに長けた能力を、「堅気」として活かしたいという思いはどこか暗い淵の中で灯り続け、消すことができなかった。 服従させる腕力、しのぎで多額の資金をつくる能力には自負があった。いずれ幹部候補として名前があがっていた俺のことを、親父も認めていた。

          【掌編小説】白と黒

          【掌編小説】夜な夜なこの街でたいてい、すれ違ってる

          (あらすじ)  とある街に住む住人たちのお話です。一話完結で、何人かの日常について書く予定です。 どこかすれ違っている人たちの日常を垣間見れたら、いいのにと思って書てみた。 鷹野亜耶(23歳)の場合 上京を控えていた頃、何気なく流れていた安い物件を紹介する番組でこの街のことを知った。 阿佐ヶ谷。 田舎者ながら高円寺や中野という地名には聞き覚えがあったが、それらの街のもう少し西にある中央線沿いの、阿佐ヶ谷という街の存在は知らなかった。 配属先となる新宿や渋谷などにも出

          【掌編小説】夜な夜なこの街でたいてい、すれ違ってる