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世界の果てまで散歩しよう

雲ひとつない空
これ以上になく気持ちの良い日である

深く息を吸い、たんまり吸った息を吐く
自分のために呼吸をする
余計な心配事をしないためにも

特に目的もなく都心の方へ歩いてく

特に行きたいところもなく
食べたいものも飲みたいものも
会いたい人もなく

でもこんな気持ちの良い日は、お洒落でお茶目な女の子と手を繋いで
世界のすべてを手に入れたような気分で歩いてみたいと思いながら、

それでも簡単には心地の良い居場所など見つからず
それでもひたすら歩く自分に酔ってみたり

特に景色が美しいとも思わない公園で
禁煙と書いてるベンチでタバコを吸う

僕の吐いた白い息をまじまじと見てみると
その煙に巻き込まれて僕もこんな風にふわふわと浮遊したいと心底思う

その白い煙は今までで付き合った1番愛していた彼女と化して
僕に語りかけてくる

「あなたが求めていた未来はこういうことなの?」

僕はその問いには一切何も答えられなかった

公園で遊ぶ同世代の親子をみて
僕はいま30歳だから大学生の就活の時にちゃんと就職するなどして自分を誤魔化して普通の幸せを
目指せばよかったなどと取り留めのないことを考えてしまう

ぼーとうつつを抜かしてると
公園の係員から声かけられた
「禁煙って、書いてるでしょ」

僕は無意識にすみませんと一言
これが今日初めての会話だ

ああ、もう疲れたよ
とふと元カノに語りかける

「ちょっとタバコ吸いすぎじゃない」

とでも叱られたい
誰かが叱ってくれるならなんだかそれに応えたあげたいと思う気持ちになった

それでも歩き続けて

スカート履いてる可愛い女の子が目の前を歩く
風神様が現れてとてつもない風を吹かさないかと心底願う

用もないけどコンビニに入る
特に買いたいものもない

ふと目に入ったビールを手に取る
特に飲みたいわけじゃないけど

もうこの場でプルを引こうか迷ううちにダラダラとレジへ

レジにビールだけ持って行くわけだけど
こんな真っ昼間にビールを飲むのという顔をした店員さんも僕を咎めずに会計をしてくれる

コンビニを後にして
缶のプルを引かずに缶を持ったまましばらく歩く

大通りでもうこれ以上すれ違う人の顔もみたくないと細い路地裏に入り
“プシュ”
この世で1番落ち着く音と思う

飲みながら歩いてたら、少しだけ酔っ払ってきて
何も考えなくてもいいんだと思えた

路地を歩いてたら突然、ロンドンの路地裏なんかに繋がってないかなと
模索しながら、自分の居場所を探しながら

あてもないまま歩いていたら来たことのない街へついた
なんだか家に帰る気分でもなく感じの良い赤提灯の垂れる居酒屋の戸をガラガラ
店員はこれまでの憂鬱がなんだったのかとゆうほど暖かく向かいいれてくれる

「どこらへんで飲むことが多いんですか?」

「僕はどこにでもいますよ」

周りを見渡しても特に共感できないようなおじさんばかりだけど
とりあえず芋の焼酎を気が済まむまで飲むと決めたのだ

僕の気が戻ると否やそれなりに気になる可愛いこもいる
でも彼女は席も遠いし、とてつもない肌黒のギャルといて
なんだかなに一つすら共感できないんだろうなと思って


帰るためにタクシーに乗った
世界の果てまで、お願いします。
かしこまりましたと何の迷いもないように車を進めるタクシーの運転手に
とても怖くなって道の途中で1番知ってる場所で降ろしてもらいそこから家路についた

明日も日雇いのバイトだと小さくつぶやいて
誰にもじゃまされない天空のベッドで眠るのだ
おやすみなさい

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