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ストーリー「豪雨の予感」

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水害被害ストーリー「豪雨の予感」の連載を始めました。実際の水害被害インタビューを通して分かってきた教訓やエピソードを織り交ぜた物語です。できるだけ実在する名称を使用して、水害被害…
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#くるまを水害から守る

「豪雨の予感」第28話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第28話(水害被害ストーリー)

〜災害用備蓄について〜

携帯用トイレ
携帯トイレは台風をはじめとする風水害では、河川の氾濫や雨水の逆流などで、街が浸水することがあります。
被害にあったマンションも、浸水により地下にある電気設備が水没して配電盤が故障・停電してしまいました。停電によってポンプで水を汲み上げられないためトイレを使うこともできず、エレベーターも止まってしまいました。トイレに行きたいと思っても、部屋のトイレは使えない。

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「豪雨の予感」第27話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第27話(水害被害ストーリー)

〜災害用備蓄について〜

備蓄水
水を飲まないと人は数日で命を落とすと言われています。成人1人あたりに対して1日に必要な水は約3ℓです。水の備蓄は市販されている通常の飲料水でも問題ありませんが消費期限は半年〜2年程度となっています。コストパフォーマンスを考えると5年〜15年ほどの長期的な保管ができる備蓄水がおすすめです。備蓄水は殺菌処理や不純物を限りなく0にするなどの工夫が施されているため、長期保

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「豪雨の予感」第17話(想定量を超える豪雨と垂直避難)

「豪雨の予感」第17話(想定量を超える豪雨と垂直避難)

大阪府での短時間(60分)降雨はこれまで最大でも80mm/h程度だったものが、近年100mm/h前後もしくは110mm/hに迫る豪雨が発生するようになっている。ところが大阪府は“短時間降雨65mm/hに対して床上浸水を防ぐ”ことを「当面の目標」としていて、「将来目標」の短時間降雨量でも80mm/hとしている。今回の120mm/hを超える豪雨が今後も数時間続くであろう状況に直面していることで、これか

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「豪雨の予感」第16話(記録的短時間大雨情報)

「豪雨の予感」第16話(記録的短時間大雨情報)

気象予報士の松前はこれまでみたことないような心配と焦りの表情で解説を続けた。

「…さらに気象庁は、大阪府北部及び東部で猛烈な雨が降っているとして“記録的短時間大雨情報”を発表しました。この情報が発表されるのは今年全国で5回目、大阪市では初めてです。午前9時半までの1時間に雨量計の観測で大阪府気象観測所では121ミリ、寝屋川工営所(大阪市城東区)で115ミリ、平野区で107ミリ、吹田市、東大阪市、

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「豪雨の予感」第15話(水没防止カバーでくるまを守る)

「豪雨の予感」第15話(水没防止カバーでくるまを守る)

みおがくるまの水害対策カバーを購入する際にポイントにしたのは次の点だった。

・女性が持ち運べる重さとコンパクト
・装着方法がシンプル、装着にかかる時間は5分以内
・繰り返し使っても底面に穴が開きにくい
・夜や風や雨があっても装着に困らない
・水に浸かっても2日間浸水しない

みおが使っているカバーは10万円ほどするが、高価なくるまをしっかりと守ってくれるのであれば問題はない。またみおが使っている

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「豪雨の予感」第14話(内水氾濫の発生とくるまの水没対策)

「豪雨の予感」第14話(内水氾濫の発生とくるまの水没対策)

警報から1時間半ほど経ったころに健斗が帰ってきた。大雨洪水警報が発令されたため学校は休校である、時刻は10時をまわったころだ、少し豪雨がおさまった隙に急いで走ってきたという。

「ただいま!」
「健斗おかえり、帰り道雨大丈夫やった?」
「朝に比べると少し弱まってるけどまだ結構降ってる。通学路はこれくらい水に浸かってた。」

健斗は自分の脛あたりを指差してみおの顔を見た。みおがそれを認めたと分かると

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「豪雨の予感」第13話(備蓄品の確認と避難準備)

「豪雨の予感」第13話(備蓄品の確認と避難準備)

「西岡さん、お疲れさまです。ご心配いただいてありがとうございます。承知しました、安全確保に努めます。避難などの進捗はまた報告します。」

窓の外の豪雨は和らぐ気配がないどころか一層激しくなってきている。西岡以外から着信のないLINEをみながら、みおは家族のことが心配になってきた。

「みんな大丈夫なんかな、、連絡くらいくれたらいいのに」

みおはパソコンの電源をつけたままにして避難の準備をはじめた

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「豪雨の予感」第12話(豪雨稲光と震災被災の記憶)

「豪雨の予感」第12話(豪雨稲光と震災被災の記憶)

豪雨は“バリバリ”と音をたてながら地面に大粒の雨を打ちつけていた。その弾ける雨粒は小さいしぶきになって宙に跳ね返り、あたりの風景を白くしていく。みおが外を眺めている窓ガラスにも容赦なく雨粒が打ちつけ、まるでガラスが割れるのではないかと思うような衝撃音をたてている。真っ白になった景色のなか稲光が光りほぼ同時に雷鳴が轟く。その時間差からするとみおの自宅からそう遠くはないはずだ。みおはその光景に吸い込ま

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「豪雨の予感」第11話(大雨洪水警報と警戒レベル2の発令)

「豪雨の予感」第11話(大雨洪水警報と警戒レベル2の発令)

線状降水帯の豪雨はおさまる気配はない。朝にもかかわらず外は薄暗く、上空では時折稲妻が光っている。雨のしぶきで視界が霞み30mほど先の浄水場でさえかすかにしか見えないほどである。

健斗が出かけてから15分ほど経ったのだろうか、時計は8時半になろうとしている。

“ツーン”
お天気アプリのポップアップ通知が鳴った。

『大阪市城東区で発令されている警報や注意報』
大雨・洪水警報・氾濫注意情報
寝屋川

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「豪雨の予感」第10話(第二寝屋川の支流と寝屋川・大川への流れ)

「豪雨の予感」第10話(第二寝屋川の支流と寝屋川・大川への流れ)

第二寝屋川は大阪府を流れる淀川水系の一級河川で、生駒山系に降った雨は八尾市で恩智川、東大阪市で玉串川と楠根川に注ぎこみ第二寝屋川に合流、大阪市城東区で長瀬川と平野川が合流する。みおの自宅はちょうど平野川と合流するあたりにあり、コンクリートで頑丈に護岸補強された20メートルほどになる両岸と川底をゆっくりと西に向かって流れる。そこから第二寝屋川は大阪環状線の下をくぐり大阪ビジネスパークの南をかすめた後

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「豪雨の予感」第8話(健斗の優しさと須磨での思い出)

「豪雨の予感」第8話(健斗の優しさと須磨での思い出)

健斗が学校に向かう時間になると大粒の雨が降り出してきた。玄関のドアの向こう側で雨が葉っぱに打ち付ける音がバラバラと聞こえてくる。

「悠さんの言ってた通りになってきた」

みおは独り言をいったつもりだったが、声になっていた。健斗が返事をしてくれた。

「そうやな、お母さんは仕事いける?こんなに降ってると会社に着くまでにびしょ濡れになるね」

健斗はいつもみおを気遣ってくれる。弟のたけしもそうだった

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「豪雨の予感」第7話(家族との別れ)

「豪雨の予感」第7話(家族との別れ)

みおの父は仰向けになって動かなくなっていた。頭の上から下半身にかけて倒れてきたタンスが覆い被さっている。父の手だけがタンスの下からでてきている。地震の瞬間に頭をかばうつもりでいたのだろうか、倒れてきたタンスを退けて逃げようとしたのだろうか。筋肉質の腕が力をなくしだらりと垂れ下がっている。

みおの母は手を伸ばしてその手に触れた、父の手には違いないがいつもとは違っていた。血の気がなく冷たくなっていた

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「豪雨の予感」第6話(瓦礫からの救助)

「豪雨の予感」第6話(瓦礫からの救助)

大きく息を吸った、外の冷たい空気が入ってくる

『わたしは外にいるの?天井が落ちてきて屋根がなくなってるから?』

みおは怖くなった、もしかして大変な状況になってるのかもしれない、急いで助けてもらわないと、、本能的に命の危険を感じた。

「ここです!だれか助けてください!」

今度は声が出た、けど返事がない。さっきの人はもうここにはいないの?膝を抱えて丸くなったまま重くて身動きがとれない。

『こ

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「豪雨の予感」第5話(阪神淡路大震災でのみおの被災経験)

「豪雨の予感」第5話(阪神淡路大震災でのみおの被災経験)

みおは阪神淡路大震災の被災者である。被災当時みおは神戸市須磨区で暮らす高校一年で、おばあちゃんと両親、弟と5人でおばあちゃんの実家で暮らしていた。須磨離宮公園から少し下ったところにあるおばあちゃんの家は木造二階建てで戦前から続く築80年以上になる家だった。2階からは須磨の海に伸びていく松並木と、その先には明石海峡をゆっくりと行き来する船をぼんやりと眺めるのが好きだった。時折汽笛が聞こえると「いつか

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