見出し画像

「豪雨の予感」第11話(大雨洪水警報と警戒レベル2の発令)

線状降水帯の豪雨はおさまる気配はない。朝にもかかわらず外は薄暗く、上空では時折稲妻が光っている。雨のしぶきで視界が霞み30mほど先の浄水場でさえかすかにしか見えないほどである。

健斗が出かけてから15分ほど経ったのだろうか、時計は8時半になろうとしている。

“ツーン”
お天気アプリのポップアップ通知が鳴った。

『大阪市城東区で発令されている警報や注意報』
大雨・洪水警報・氾濫注意情報
寝屋川、第二寝屋川で氾濫の可能性があります。今後の情報にご注意ください
警戒レベル2
ハザードマップ等により、災害が想定されている区域や避難先、避難経路を確認してください。

朝出ていた大雨・洪水注意報が大雨・洪水警報に変わった。しかも寝屋川と第二寝屋川に河川氾濫注意情報が発令された。みおの自宅がある鴫野西地区は第二寝屋川のすぐ北側にあるが、500mほど北には寝屋川も流れている。つまり2つの川に挟まれている地域である。どちらの川の堤防も地面から3mほどの高さだが、水嵩が増し一度堤防を超えると、氾濫した水はその挟まれた地域に流れ込むことを意味する。鴫野西地区の避難所の一つである鴫野小学校はみおが住むところから最も近い避難所であるが、高台になっているわけでもないため氾濫した水が流れ込んでくることは十分に考えられる。小学校の通学路にある電柱には『水没時、水深3mになる場合があります』と書かれた警告が貼られているのを思い出していた。

大雨洪水警報と氾濫注意情報が発令されたので、学校は休校になるだろうが健斗は帰って来るだろうか?帰宅する途中での水難の心配もあることから、避難所機能もある学校での待機としたほうが安全であろう。しかしその学校は3m水没する可能性もある。3階建の校舎の2階以上に避難すればいいのだろうが全校生徒はうまく避難できるのだろうか?

避難先や避難経路を確認することを告げる“警戒レベル2”はみおをさらに不安にさせた。避難所である小学校の建屋一階部分と体育館はおそらく水没する危険性は高いだろう。教室のある建屋の2階以上でこの地区の住民を収容できるのだろうか。ましてや現在すでに生徒が登校している状況である。

『どこに避難すればいいん…?』

みおは急に不安になった。阪神淡路大震災で被災した経験から、災害の恐ろしさを感じると次第にあの日の朝の出来事がフラッシュバックし始めていた。

第12話に続く
(このストーリーはフィクションです。一部実在する名称を使用しています)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?