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ストーリー「豪雨の予感」

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水害被害ストーリー「豪雨の予感」の連載を始めました。実際の水害被害インタビューを通して分かってきた教訓やエピソードを織り交ぜた物語です。できるだけ実在する名称を使用して、水害被害… もっと読む
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記事一覧

「豪雨の予感」第28話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第28話(水害被害ストーリー)

〜災害用備蓄について〜

携帯用トイレ
携帯トイレは台風をはじめとする風水害では、河川の氾濫や雨水の逆流などで、街が浸水することがあります。
被害にあったマンションも、浸水により地下にある電気設備が水没して配電盤が故障・停電してしまいました。停電によってポンプで水を汲み上げられないためトイレを使うこともできず、エレベーターも止まってしまいました。トイレに行きたいと思っても、部屋のトイレは使えない。

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「豪雨の予感」第27話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第27話(水害被害ストーリー)

〜災害用備蓄について〜

備蓄水
水を飲まないと人は数日で命を落とすと言われています。成人1人あたりに対して1日に必要な水は約3ℓです。水の備蓄は市販されている通常の飲料水でも問題ありませんが消費期限は半年〜2年程度となっています。コストパフォーマンスを考えると5年〜15年ほどの長期的な保管ができる備蓄水がおすすめです。備蓄水は殺菌処理や不純物を限りなく0にするなどの工夫が施されているため、長期保

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「豪雨の予感」第25話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第25話(水害被害ストーリー)

「そっか、よかった。雨止んで電車動くまでは学校おりや、そこの学校が一番安全やから」
「うん、毎朝前髪乱して通うだけのことはあった」
「災害はいつ起きるかわからんからな。うん、大阪の町が海の下やった何千年も前から上町台地は陸地やったんやから、豪雨くらいでは冠水しないはずやで、そこいたら大丈夫」
「うん、それよりもお母さんと健斗が心配やわ」
「うん、これからどれくらいの降るかわからんけど、在宅避難する

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「豪雨の予感」第24話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第24話(水害被害ストーリー)

愛子の自宅は第二寝屋川沿いに立つ3階建である。自宅の南側の部屋からは眼下に第二寝屋川がみえる。増えていく水の量も具に確認することができる。今はそこに架かる上城見橋の橋桁を増水した川の水面が掠めている

みおのスマホに着信が鳴った、愛子からの連絡である。
「お母さん電話!愛ちゃんから」
「ごめん、すぐいくから健斗代わりに電話でてくれる?」
「オッケー。もしもし愛ちゃん?」
「健斗?お母さんと一緒なん

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「豪雨の予感」第23話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第23話(水害被害ストーリー)

「健斗は今ごろ小学校かな…やけど大雨警報出てるし休校??…てことは今家で一人??…いやまてよこれだけの豪雨やから母はリモート勤務なんかも…てことは二人で家におんのかな??父は災害救助で現場バタバタなんやろうな…え、まって!うちって川の横やん、もし川が溢れたら大変なんちゃうん!もしもやで、もしも流されたりしたら、うち帰るところなくなるやん!え、ちょっとどうしよ」

正面を向いて呟いている愛子の独り言

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「豪雨の予感」第22話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第22話(水害被害ストーリー)

愛子は佳奈の話しを聞きながら窓の外から微かに見える内堀を凝視していた。その内堀の手前にあるランニングコースの茶色い地面に、茶色く濁った堀の水が溢れ出ているようにもみえる。

「うちのメガネ使ってみて、はい」
佳奈は愛子のメガネを借りて外を見た。裸眼だけでは見えてなかった豪雨の景色が目の前に現れてきた。
「え、こんななってたん!めっちゃ雨降ってるやん!あ、ほんまや、堀の水溢れそうになってる。もう溢れ

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「豪雨の予感」第21話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第21話(水害被害ストーリー)

時刻は午前11時になろうとしている。愛子がいる大手前高校は15分ほど前から再び線状降水帯による激しい豪雨に覆われていた。お天気アプリの雨雲レーダーによると、現在吹田市あたりから大阪市住吉区あたりまで伸びる南北に長い線状降水帯がえんじ色の細長い帯で表示されている。地図の下にあるスライドバーを横に動かすとそのえんじ色の帯は少しずつ東に進んでいくが、そのえんじ色の帯を追いかけるように絶え間なく同じえんじ

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「豪雨の予感」第20話(自然への畏怖)

「豪雨の予感」第20話(自然への畏怖)

靴下を履き替え、上履きで3階の同じ教室に着いた愛子と佳奈は窓から見える外の景色にたじろいた。

いつもは大阪城天守閣と堀の石垣にクスノキの緑が映えるきれいな景色であるが、今日は“嵐に包まれた暗黒の世界”に天守閣がうっすらと浮かび上がっている。愛子が学校に着いた後さらに雨足は激しくなり時折雷鳴も響いている。

ドドン、バリバリバリバリバリ

「また落ちた!あーもう怖すぎ!さぶいぼが今までいち立ちまく

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「豪雨の予感」第19話(落雷と地響き)

「豪雨の予感」第19話(落雷と地響き)

地上への階段の途中まで人だかりができている。ざっと30-40人が雨が止むのを待っている。雨といっても傘がないと外を歩けないほどの雨である。

京阪電車で通学する途中、京橋から天満橋に向かう車窓からは小雨程度だったのが電車を降りて改札から地下を通る10分くらいの間に空模様は一変していた。愛子は幸いにも父からのアドバイスで傘を持ってきていた。母のみおも大雨を心配して早く帰ってくるようにとも言っていた。

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「豪雨の予感」第18話(災害に強いエリア)

「豪雨の予感」第18話(災害に強いエリア)

その2時間ほど前、高校の最寄駅である京阪電鉄天満橋駅で愛子は豪雨に遭遇する。愛子が通う大手前高校は大阪城天守閣を東に望む上町台地にあることから校舎自体浸水の心配はない。上町台地は大阪市内を南北に走る台地で、大和川より北に向かって幅2~3km、長さ12kmに亘って岬状に突出しており北端には大阪城があり、四天王寺や難波宮、大阪府庁や大阪府警など国の主要機関が多く集まっていることが、このエリアが災害に強

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「豪雨の予感」第17話(想定量を超える豪雨と垂直避難)

「豪雨の予感」第17話(想定量を超える豪雨と垂直避難)

大阪府での短時間(60分)降雨はこれまで最大でも80mm/h程度だったものが、近年100mm/h前後もしくは110mm/hに迫る豪雨が発生するようになっている。ところが大阪府は“短時間降雨65mm/hに対して床上浸水を防ぐ”ことを「当面の目標」としていて、「将来目標」の短時間降雨量でも80mm/hとしている。今回の120mm/hを超える豪雨が今後も数時間続くであろう状況に直面していることで、これか

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「豪雨の予感」第16話(記録的短時間大雨情報)

「豪雨の予感」第16話(記録的短時間大雨情報)

気象予報士の松前はこれまでみたことないような心配と焦りの表情で解説を続けた。

「…さらに気象庁は、大阪府北部及び東部で猛烈な雨が降っているとして“記録的短時間大雨情報”を発表しました。この情報が発表されるのは今年全国で5回目、大阪市では初めてです。午前9時半までの1時間に雨量計の観測で大阪府気象観測所では121ミリ、寝屋川工営所(大阪市城東区)で115ミリ、平野区で107ミリ、吹田市、東大阪市、

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「豪雨の予感」第15話(水没防止カバーでくるまを守る)

「豪雨の予感」第15話(水没防止カバーでくるまを守る)

みおがくるまの水害対策カバーを購入する際にポイントにしたのは次の点だった。

・女性が持ち運べる重さとコンパクト
・装着方法がシンプル、装着にかかる時間は5分以内
・繰り返し使っても底面に穴が開きにくい
・夜や風や雨があっても装着に困らない
・水に浸かっても2日間浸水しない

みおが使っているカバーは10万円ほどするが、高価なくるまをしっかりと守ってくれるのであれば問題はない。またみおが使っている

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「豪雨の予感」第14話(内水氾濫の発生とくるまの水没対策)

「豪雨の予感」第14話(内水氾濫の発生とくるまの水没対策)

警報から1時間半ほど経ったころに健斗が帰ってきた。大雨洪水警報が発令されたため学校は休校である、時刻は10時をまわったころだ、少し豪雨がおさまった隙に急いで走ってきたという。

「ただいま!」
「健斗おかえり、帰り道雨大丈夫やった?」
「朝に比べると少し弱まってるけどまだ結構降ってる。通学路はこれくらい水に浸かってた。」

健斗は自分の脛あたりを指差してみおの顔を見た。みおがそれを認めたと分かると

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