【小説】一九八二年、僕はエロ本の出版社に入った。#005
#005 金儲けのために働くなんて
「君に〈覗き部屋〉をご馳走してやろう」と二人でぼったくりの店を迷い込んでしまった島谷さんの下には、結局たったひと月しかいなかった。「五十崎くんの代わりに頑張ってもらわなきゃならないからな」と言ってもらったのだが、翌月には島谷さんが桜庭編集室に人事異動になってしまったからだ。ただ、僕の方は雑誌も同じで座る席も替わらなかった。それまでは四階にいて別の雑誌を作っていた横西さんという人が、新しい編集長としてやってきた。
横西さんは小柄な体躯に伸