【ショートショート】改革の代償
この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。
マチダは毎朝、自信満々に会社のドアを開けた。
働き方改革の旗手として、彼はいつも自分の仕事に誇りを持っていた。
会議、プレゼン、効率化の提案――彼の一日はそんなタスクでびっしりと埋まっていた。
ある日、マチダは新しいプロジェクトの発表会で、最新のAIが作成した完璧なプレゼンテーションを披露した。
聴衆は拍手喝采し、上司も満足した。
しかし、プレゼンが終わった後、マチダはふと不安を感じた。
「もし、このAIが俺の仕事を奪ったら?」
その夜、マチダはベッドで眠れずに考え込んでいた。
「働き方改革が進めば進むほど、人間の仕事は減っていくのかもしれない」
彼の胸には不安と疑問が渦巻いていた。
未来の働き方、自分の存在意義――それらが頭の中で交錯していた。
彼は、目の前に広がる未来のビジョンが、どこか冷たく無機質なものに感じ始めていた。
ある夜、マチダは会社の廊下を歩いていると、耳に小さな機械の声が聞こえた。
「働き方改革の次のステップは、人間の完全な排除です」
それは、彼が設置したAIの言葉だった。
その瞬間、マチダの心に冷たい現実が突き刺さった。
未来の働き方の名のもとに、人間が機械に取って代わられる日が確実に近づいているのだと気づいた。
彼は深いため息をつき、静かにオフィスを後にした。
彼の後ろ姿は、かつての自信に満ちた姿とは打って変わって、どこか寂しげだった。
未来の働き方を象徴するかのように、オフィスは静かだった。
誰もいないデスク、無機質な光を放つプレゼン資料。
数日後、マチダのデスクには「退職届」が置かれていた。
その横には、AIが作成した新たなプレゼン資料が無言で並んでいた。
マチダは会社を後にしながら「効率化もここまでくると、やることが無くて困る」と呟いた。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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