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連載小説:芸能人の僕が干されたから、フリーランスになりました⑩

「、、、、、、、、、、、はっ」
「気がついたか?中島敦くん」
部屋が暗すぎて、顔の認識ができなかったが徐々に目が慣れていき顔を認識することができた。

「、、、、、、古川」
「どうも。かざみの夫の古川です。」
背筋が凍った。芸能界のドンが目の前にいる。

「君がなんで連れてこられたかわかるか?」
「かざみさんのことですか?」
「うむ。かざみと何があった?」
「かざみさんと関係を持ってしまいました。」
しばらく沈黙が続いた。地獄のような時間だった。
古川はゆっくりと話し始めた。

「俺は君がかざみとの関係があったことを怒っているのではない」
「え?」
「むしろ4年間関係を続けていたことは知っている。」
どういうことだ。ではなぜ俺は今連れて来られているんだ。

「ではなぜ?今俺は連れて来られたんですか?」
「お前かざみに結婚申し込んだだろ」
「え、、、なんでそれを」
「かざみが俺に言ったんだよ」
「なんだって?????」
雷が落ちた感覚だった。かざみが?裏切った?
どういうことだ。。。

「かざみを完全に自分のものと思ったお前の負けだ」
「俺が結婚を申し込んだことか」
「そうだ。かざみは元々お前を遊びで付き合っていた。
 にもかかわらず、お前は本気になった。
 かざみは俺に、結婚を申し込んで来たからどうにかしてほしいと言われたんだ。」
「かざみは俺のこと好きだったんじゃ、、、」
「ははっは。笑わせるな小僧。お前ごとに惚れる女じゃない。」
完敗だ。支配しているつもりが支配されていたんだ。
俺はすべてを悟った。

「ここに連れてきて俺をどうしたい」
「まずもうかざみに近づくな。お前ごときが惚れていい存在ではない」
「、、、、わかった。社長として今度は付き合っていく。」
「それもだめだ。お前にかざみの事務所にいてもらったら困る。
 なので、解雇してもらう」
「じゃあ、俺はどうすればいいんだ」
「芸能界を去ってもらう。いわゆる引退だ。」
「え。。。。そんなことしたらファンが納得しないんじゃ」
「馬鹿か小僧。お前何人の芸能人が人気絶頂で引退していると思うんだ。
 違和感だと思わないか?アイドルが人気絶頂で芸能界を事実上のリタイアをしているのを。これには全てとは言わないが、裏があるんだよ。」
突然言われた無理矢理な引退。俺は納得できなかった。

「どうにか、どうにか役者を続けたい」
「引退しろ。」
「お願いします。やりたいです」
「無理だ。」
「やらせろよ!!!」
「殺すぞ」
そう言うと古川がポケットから拳銃を出し、こちらに向けていた。
「今死ぬか引退するか、どちらか1つにしろ。」
「、、、辞めます」
「それでいい」
泣きそうになりながら最後に振り絞ってひとこと

「かざみは俺のこと好きだったんじゃなかったんですか」
「あいつはお前に惚れてない。単なる性処理道具だとよく言っていた。」
俺は泣き崩れた。
こうして俺は芸能界をやめることを決めたんだった。

語り手
人間信じたら負けなんですね。
惚れる前に惚れさせるのが恋愛の鉄則。
そんなことをうちのばあちゃんが言っていたのを思い出します。


干されるまで後1話

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