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韓国で登山#04.白沙室渓谷を行く②~文化史跡の白石洞天~

 前回の続きです。

 ソウル市鐘路区ジョンノグ(종로구)付岩洞ブアムドン(부암동)の白沙室渓谷(백사실계곡)は、自然と文化史跡が美しく混在するエリアです。

 前回記事では自然の様子をお伝えしましたが、今回は朝鮮時代の文化史跡の白石洞天(백석동천)を中心にお届けします。


白沙室渓谷(백사실계곡)

渓谷に沿って歩きます。
辺りの樹々は整理され、道も歩きやすいです。
登山というよりはハイキングですね。
突如として現れた巨大岩。
「白石洞天」と刻まれています。
その岩がある場所からから少し下るとーー
史跡が現れました。
樹々に囲まれた山中に静かに佇む史跡は、何とも不思議で清々しい雰囲気を醸し出していました。


ソウル付岩洞白石洞天(서울 부암동 백석동천)

左上:サランチェの全貌
右上:母屋と門屋の全貌
左下:昔の六角亭(1935年7月19日東亜日報)
右下:復元予想図
<現地の案内版より>

 ソウル付岩洞白石洞天(서울 부암동 백석동천)は、北岳山(북악산)の北斜面に位置する朝鮮時代の別荘があった場所です。1800年代に、当時の都の漢陽都城(한양 도성)近くに建てられました。

 別荘の主人に関しては不明な点が多いものの、文化財庁によると歴代主人の1人には朝鮮後期の代表的な書道家・金石学者・考証学者・画家・実学者であるキム・ジョンヒ(金正喜、1786~1856)がいたといわれています(한겨레21より)。

 先ほどの巨大岩にも刻まれた「白石洞天」は、「白岳(北岳山のこと)の美しい山河に取り囲まれた景勝地」という意味です。この他にも、近くには「月巖(月岩)」と刻字された岩もあるそうです。

 現在この場所には池と六角亭の礎石がそのまま残されているほか、後方の高台にはサランチェ(사랑채)と呼ばれる主人の住居棟の石段と礎石を確認できます。

 都市部からひっそりと離れた場所にある白石洞天は、明媚めいびな自然の景色と建物が見事に調和しているだけでなく、古庭園の構成要素をすべて備えた格調高い別荘庭園の様相を有していると評価されています。

 白石洞天は2005年に史跡第462号に指定、その後2008年には名勝第36号に再分類されました。 


◆池(연못)

現在の池の様子です。
水は涸れていますが、以前は池だったことが伺えます。


◆六角亭(육각정)

六角亭の礎石です。
ここから池を眺めながら、穏やかな時間を過ごしていたのでしょうか。


◆サランチェ(사랑채)

サランバン(舍廊房)とも呼ばれるサランチェは、家屋主人(男性)の居室です。
学問や芸術に浸ったり、客人をもてなしたり、囲碁や楽器などの趣味を楽しむ生活空間として使用されました。
サランチェは儒教の思想を大きく反映していて、基本的に女性が入ることはありません。
ヤンバン(両班)などの中上流階級になると、独立した建物にサランチェを作るようになります。
つまり家の規模が大きいほど、男女の生活空間は厳格に区別されました。
ここで火を焚いていたのでしょうか。
礎石しか残っていないサランチェとは異なり、生活感があります。


 この後は、近くにある玄通寺(현통사)という仏教寺院に行きました。

 次回に続きます。


【参考ページ】


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