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韓国語#07. 무섭다と두렵다~夏だし怖い話でも~

 私が中学生の時に亡くなった曾祖母は優しく、利他的で、芯の強い人でした。またそれと同時に、周りからはいつも恐れられている人でした。

 不動明王をお守りする家系出身だったこともあり、曾祖母も滝行をしたり断食修行をしたりしていたそうです。修業を積んだこともあり、色んなものが見えていたということでした。

 また、家にいるときは、早朝の薄暗い時間帯から白い着物に着替え、長い髪を垂らした状態で井戸の水で水浴びをし、その後、仏様をお参りをするのが日課だったそうです。想像してみてください。まさに怪談話の1シーン。恐怖しかありません。

 母も小さい頃は曾祖母の家で暮らしていたのですが、その時にこんな話を聞いたそうです。

昔ばあちゃんは、崖の上にいるタヌキ2、3匹から石を投げられた。

 まさに、このような感じだったそうです。

石投げる狸

<イメージ画像>

 それを聞いて、幼い母はこう言いました。

「えー、タヌキって動物園にいるあのタヌキ? 石とか投げんやろうもん」

 すると、その場にいた親戚のおじさんが、母へそっと耳打ちしました。

「Kちゃん、こん家でそげんかこつば言うとでけんよ。生きていけんばい」

【訳】Kちゃん、(ばあちゃんが長の)この家で(ばあちゃんが体験したことに)そういうことを言うのは良くないよ。生きていけなくなっちゃうよ。

 曾祖母の言うことは、絶対です。


怖いというふたつの単語:무섭다 두렵다

 長くなりましたが、ここからが本題です。夏といえば、怖い話ですよね。韓国語では、 「怖い話」を 무서운 이야기(ムソウン イヤギ)と言います。幽霊に関する話でなくても、恐怖を感じる話に対して使われます。

 日本語では恐怖を表す際に「怖い」と「恐ろしい」という言葉をよく使いますが、韓国語でも 무섭다(ムソプタ)두렵다(トゥリョプタ)という単語をよく使います。しかし、무서운 이야기 とは言っても 두려운 이야기(トゥリョウン イヤギ)とは言いません。

 なぜでしょう。

 Naver 辞書では二つの意味をこのように説明しています。

무섭다(ムソプタ)
1.恐ろしい
2.怖い、おっかない
3.驚くべきだ、すごい、すさまじい
두렵다(トゥリョプタ)
1.怖い、恐ろしい
2.心配だ
3.(外見)威風があって恐れ入る.

 はやり、辞書を見るだけでは分かりません。

 ということで、ここからは韓国語の教師をされている方が書かれたブログを参考に、무섭다 と 두렵다 の違いについてお伝えしたいと思います。


무섭다 두렵다 の違い

1.人やモノなど実体があるものに対しては 무섭다 

무서운 영화
怖い映画

저는 롤러코스터가 무서워요.
私はローラーコースターが怖いです。

 目に見える実態のあるものに対して恐怖を感じたときは 무섭다 を使います。ここで 두렵다 を使っても意味は通じますが、不自然なので「ん?」となってしまいます。

 ちなみに、幽霊が怖いと言いたいときも 무섭다 を使います。幽霊は実体がないじゃないかと思ったとしても、こればっかりは仕方ありません。


2.行為や状況に対しても 무섭다

집에 혼자 있으니까 무섭다.
家に一人でいるので怖いです。

습관이 무섭다.
習慣は恐ろしい

밤길은 무서워요.
夜道は怖いです。

 人やモノだけでなく、行為や状況に対して恐怖を感じても 무섭다 を使います。つまり、무섭다 も 두렵다 もよく聞く単語ではありますが、무섭다 の方が使う機会は多いのです。


3.무섭다 は評価を下すという意味合いを含み、두렵다 は心理状態を表している。

그는 눈빛이 참 무섭다.
彼は目つきが怖いです。
그는 눈빛이 참 두렵다.
彼は目つきが怖いです。

 上記の例文は両方とも正しいです。しかし、この辺りがややこしいのですが、ニュアンスが異なります。

 上の 무섭다 では彼の目つきが怖いという「評価」をしています。つまり「一般的に言って他の人も怖いと感じるだろう目つきをしている」という意味合いを帯びています。

 それとは異なり 두렵다 を用いた文章では、発言者の心理状態をより強く表しています。つまり 두렵다 はより個人的な視点における恐怖を表しているのです。例えば、周りの人が「彼の瞳って優しいよね」と言っているなかで、「(私にとって)彼の瞳はサイコパスめいていて何をするか分からない恐ろしさがある」と言いたいときなどに使えます。

 これと関連し、未来に対する恐怖を表す場合も 두렵다 になります。未来とは、モノや人でもなければ、誰かの行為でも、実際に起きている状況でもありません。その未だ来ていない未来への恐怖とは、「何が起こるか想像がつかない」「悪いことが起きるかもしれない」という不確かな状況に対する個人的な思考によるものです。そのため、무섭다 ではなく、두렵다 を使います。


4.肯定的な意味を持つ対象に使う두렵다 

지금의 이 행복이 두렵습니다.
今のこの幸せが怖いです。

 本来幸せとは恐怖を感じる対象ではありませんが、このような肯定的なものに恐怖を感じる場合は 두렵다 を使います。3の未来に対する恐怖と同じように、個人的な思考により生じる恐怖感を表すため 두렵다 を使うのかも知れませんね。


5.程度が激しいことを表す場合は 무섭다

시험이 가까워서 그런지 요즘 무섭게 공부하더라.
試験が近づいてきたからなのか、最近怖いくらいに勉強するそうよ。

 「怖いくらいに〇〇をする」と言いたいときは 무섭다 を使います。


おまけの怖い:겁이 나다

 もうひとつ、怖いと表現する言葉があります。それは 겁이 나다

겁이 나다(コビ ナダ):怖じ気づく

 怖じ気づいて何かをするのが怖い時に使います。


◆◆◆◆


 このように、人、モノ、行為、状況など目に見えるものに対して恐怖を覚えるときは 무섭다 を使います。また、その人の想像や思考がもととなって生じている恐怖には 두렵다 を使います。

 もちろん、両方の単語を使える場面もありますが、무섭다 を使う方が自然な場面、また두렵다 を使う方が自然な場面というのがあるため、色々な場面を見ながら少しずつ焦らず慣れていくのが大切です。


◆◆◆◆


 最後に、冒頭でお話しした「早朝に白い着物姿で井戸の水を浴びる曾祖母の姿が怖い」と言いたい場合は・・・




 ーー무섭다 を使うと自然です。


 ではでは😊

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