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書籍「なぜ男女の賃金に格差があるのか」からの考察

「なぜ男女の賃金に格差があるのか」の要約

本書の著者であるクラウディア・ゴールディン氏は、ハーバード大学教授で、数十年にわたって女性の労働と男女賃金格差について研究している方です。女性として3人目となるノーベル経済学賞を受賞されました。

本書では、米国における約100年分の大卒女性のデータと、各世代を代表する著名人の人生のストーリーを交えながら、男女格差について調査を行っています。

具体的には、19世紀後半以降に生まれた大卒女性を5つの世代に分け、各世代で仕事と家庭の両立がどの様に変化したのかを分析しています。例えば、著者自身も該当する1944〜57年生まれのグループでは、ピルの普及が大卒女性の初婚年齢を劇的に引き上げ、彼女らをキャリア志向へと変えたという記述は、興味深い内容でした。

後半は邦題が示す通り、男女間の賃金格差を分析しています。よく挙げられる理由として、学歴や職業選択の違い、上司や同僚による差別、女性の交渉力や競争心の低さなどありますが、少なくとも、米国では格差の主な要因ではないと著者は断言しています。

同学歴同職種でも生じる賃金格差の多くはオンコールで職場待機するかどうかで説明がつくそうです。逆に言えば、女性の賃金が男性より低くなるのは、育児のために柔軟な勤務を選ぶためであるというわけです。育児等家庭内での役割分担がキャリア形成より優先されることで、時間をキャリア形成ではなく育児等家庭内での役割を果たすために充てざるを得ないため、その分、賃金が上がらないというのが著者の調査結果になります。

この先はどうなるのか

「日本だけでなく米国でもそうだったのか」と思われる方は多いのではと思いますが、この課題は民主主義国共通だといえます。そして、多くの国において女性が育児等に捻出する時間を考慮した結果、仕事における不確実を避ける傾向が「女性は昇進したがらない」議論にもつながっています。

しかし、直近の調査結果では、そうした議論とは逆の結果が出ています。前回も参照したレポート「Women in the Workplace」(LeanInとマッキンゼーが共同で2023年に発行)では、30歳以下の女性では10人に9人が次のレベルに昇進したいと考えており、4人に3人がシニアリーダーを目指しているという調査結果が出ています。

こうした意欲を後押ししているのが、働く環境の柔軟性です。5人に1人の女性が、柔軟性のおかげで仕事を続けられた、あるいは勤務時間を減らさずに済んだと答えており、ハイブリッドワークやリモートワークで働く女性の多くが、仕事での疲労や家事育児との両立の難しさを感じにくくなったということが分かります。

このような研究結果を考慮すると、リモートワークやハイブリッドワークができること、しやすいことは女性のキャリアの実現において大きな役割を果たす要素であることが分かります。
男女の賃金に格差の縮小されるには様々な努力が必要ですが、柔軟な働き方の浸透は女性の賃金向上おいて大きな貢献となるのではないでしょうか。

Unsplash, Sasha Freemind

参照レポート:Women in the Workplace
https://leanin.org/women-in-the-workplace

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